うどん(饂飩)の食物本草情報

2025年1月のゴケイメシはうどん!

1月の講座【医書五経を読む】の講座後・ゴケイメシは“鍋焼きうどん”をいただきました。「温かいうどんを食べたい!」とのリクエストで、シンプルにネギ・しいたけ・鶏肉(関西ではカシワ)・卵だけのお鍋。寒さが増した日曜日、身も心も温まりました。

鍋焼きうどんの写真 写真:温かい鍋焼きうどん

鍋焼きうどんと半熟たまご
写真:絶妙な火加減の半熟タマゴも…。

さて「うどん」について食物本草書を調べてみたところ、うどんの原料として、小麦粉・索麺(そうめん)の項目も見つかりました。本記事では併せて載せています。

うどん(小麦粉)の食物本草情報

まずは『日養食鑑』(石川元混 著 1819年)からのうどん情報です。

『日養食鑑』に記されるうどん(湯餅)の効能

うどん 湯餅

うどん 湯餅 甘温、毒なし。 中を温め、冷泻を止む。多食すれば氣を塞ぎ熱を生ず。 ▲西瓜と差合。
○ひやむぎ 毒なし。多食すれば腹痛下利を発す。病人は忌むべし。
○ほしうどん 毒なし
○ひもかわ 毒なし うどんと同じ
○つみいれ 毒なし 多食すれば熱を生じ疝を起す。小児病人に宜しからず。
○麦麫(めんるい)の毒に中りたるには大根の絞汁を用うべし。

■原文
うどんのこ  麥麫 甘温、毒なし。 不足を補ひ、五臓を助く。 ▲西瓜と差合。
うどん 湯餅 甘温、毒なし。 中を温め、冷泻を止む。多食すれバ氣を塞ぎ熱を生ず。 ▲西瓜と差合。 ○ひやむぎ 毒なし。多食すれバ腹痛下利を發す。病人は忌べし。 ○ほしうどん 毒なし ○ひもかわ 毒なし 、うどんと同じ ○つみいれ 毒なし 多食すれバ熱を生じ疝を起す。小兒病人に冝からず。 ○麥麫(めんるい)の毒に中りたるには大根の絞汁を用べし。。

『日養食鑑』では、うどんを「湯餅 」と表現している点が『なるほど…』と思われます。またその効能に「 中を温め、冷瀉を止める」と補中能を示しながらも、「(うどんを)多食すれば氣を塞」ぐ…とのデメリットが指摘されている点も『なるほど~』です。

次に『閲甫食物本草』(名古屋玄医 寛文9年(1669年)自序)から、うどん情報をみましょう。ちなみに閲甫とは、名古屋玄医の字(あざな)です。

『閲甫食物本草』における情報

小麦麪 附索麺  古牟木乃古(こむぎのこ)

 氣味甘温、微毒あり。
『別録』に云、熱を消し煩を止むること能わず。
時珍が曰う、北麫は性温、之を食して渇せず。南麫は性熱、之を食して煩渇す。西邊麫の性は涼、皆な地氣の然しむる也。 漢椒を吞み
蘿蔔(大根)を食いて、皆な能く其の毒を解す。蘿蔔の条を見よ。(蘿蔔・大根の条についてはコチラ
医方の中に往々にして飛羅麫を用いて其の石末の無くして性平易なるを取る爾(のみ)。陳麦麫を水煮して之を食すること毒無し。以て糟は脹を発する者なり。能く病を発し瘡を発す。惟だ蒸餅と作(な)し薬に和すは、其の消し易きに取る也。
按ずるに、李延飛が『延寿書』に云く、北は霜雪多し、故に麫は毒無し。南方は雪少なき故に麫に毒有り。
顧元慶が『簷曝偶談』に云く、江南の麦の花は夜に発(ひら)く故に病を発する、江北の麦花は昼に発(ひら)く
故に人に宜し。
陳藏器が云く、虚を補う。久食すれば人の膚体を実し、腸胃を厚くし、氣力を強くす。
日華に曰く、氣を養い不足を補い、五臓を助く。

索麺
閲甫が曰う、索麺は麫を以て少しく油を加え之を製す。然るに則ち麫と性の異なること無し。人をして多食せしめて未だ其(索麺)の人を害することを見ず。其の之を食して腹痛・泄瀉などの症を者を病む者、暑月に暑さは避け、水を以て漬して多食する故に病む耳(のみ)。假令(たとえば)飯を食するも索麺の法の如くして多食するときは則ち中を見ること此れより甚だしからん。是の理を知らずして、咎を麺に帰す。惑えることの甚しいかな。
醤・未(未醤・味噌)を以て能く煮て温めて之を食するときは、則ち病人と雖も妨げ無し。制法に因りて油有るに、病みて薬を服すること有れども、人これを禁ずる者は、何ぞ油の薬力を妨げんや?油の薬を妨げざるの事、胡麻の条に詳しき也。

■原文
小麥麫 附索麫  古牟木乃古 氣味甘温有微毒 別録云、不能消熱止煩。時珍曰、北麫性温食之不渇。南麫性熱食之煩渇。西邊麫性涼、皆地氣使然也。 呑漢椒食蘿蔔、皆能觧其毒、見蘿蔔条。醫方中往ゝ用飛羅麫取其無石末而性平易爾。陳麥麫水煮食之無毒、以糟發脹者。能發病發瘡。惟作蒸餅和藥、取其易消也。 按李延飛、延壽書云、北多霜雪、故麫無毒。南方雪少故麫有毒。 顧元慶簷曝偶談云、江南麥花夜發故發病、江北麥花晝發故宜人。 陳藏器云、補虚、久食實人膚體、厚腸胃、强氣力。 日華曰、養氣補不足、助五藏。

索麫 閲甫曰、索麫以麫加少油製之。然則與麫性無異。令人多食未見其害人。其食之病腹痛泄瀉等症者暑月避暑、以水漬多食故病耳。假令食飯如索麫之法多食則見中甚於此。不知是理、而歸咎於麫。惑之甚矣。以醤未(未醤・味噌)能煮温而食之、則雖病人無妨。因制法有油有病服藥人禁之者、何油之妨藥力乎。油之不妨藥之事、詳胡麻条。

『閲甫食物本草』の内容をみると、名古屋玄医先生は、麺好きの人だったのでしょうか…?と、思ってしまいますね。

桂枝湯(条文12)に記されている将息の内容はどうなったのでしょう…。

麺・油は病人に咎無し?

名古屋玄医先生は、麺だけでなく油も服薬に妨げ無しとしています。その理由はゴマ油の条で詳しく説明しているとのこと。ということで『閲甫食物本草』記載のゴマ油(胡麻油)情報をみてみましょう。

『閲甫食物本草』における情報

胡麻油  古末乃阿不良(ごまのあぶら)

氣味甘大寒、毒無し。
原が曰く、生の者(生ゴマ)性寒にして疾を治す。炒る者(炒りゴマ)性熱にして病を発す。蒸す者、性温にして人を補う。
孟詵が曰く、虚労を治し、腸胃を滑かにし、風氣を行らし、血脉を通じ、頭上浮風を去り、肌肉を潤す。
食後に生にて一合を噉う、身を終えて輟(や)むこと勿れ。又、乳母に与え之を服せしむ(れば)、孩子は永く病を生ぜず。
客熱(には)飲汁と作(な)して之を服すべし。生にて嚼(か)み、小児の頭上諸瘡に伝(し)きて良し。
閲甫按ずるに、今の医は病人に逢いて薬を与うときには、則ち必ず病人をして胡麻の油を食すること勿れとせしむ。未だ何の謂うことを知らず。
或る人の曰く、油氣は胸膈に滞泥し、薬氣を妨ぐと。然るに方中に胡麻栝蔞等あり。人に告げて曰く、油氣を犯すこと勿れと。呼嗟、俗習の惑える也、久しき矣。

■原文
胡麻油  古末乃阿不良 氣味甘大寒無毒 原曰生者性寒而治疾。炒者性熱而發病。蒸者性温而補人。 孟詵曰、治虚勞滑腸胃行風氣通血脉去頭上浮風潤肌肉。食後生噉一合、終身勿輟。又與乳母服之、孩子永不生病。客熱可作飲汁服之、生嚼傳小兒頭上諸瘡良。 閲甫按、今醫逢病人與藥、則必使病人勿食胡麻油、未知何謂。 或曰、油氣滞泥胸膈、妨藥氣。然方中有胡麻栝蔞等。告人曰、勿犯油氣。呼嗟、俗習之惑也、久矣。

『閲甫食物本草』では、「油気が胸膈に滞泥する」という意見に対し、「方剤中に胡麻栝樓あり(含まれる)」そのため、胡麻油は薬方方意を妨げるものではない…という意見を載せています。

『方中に胡麻を含む処方って、そんなにたくさんありましたっけ?』と、思わなくもないですが…。胡麻の効能は非常に良いので、それも併せて知っておく必はありますね。

 

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