『按腹図解』導引按腹活套より

導引按腹の活套

『按腹図解』の「導引按腹の活套」の章です。“活套”という言葉には“するりと解ける結び目”という意味もあるようです。按摩・肓摩にはピッタリのテーマですね。ということで「導引按腹の活套」を読んでいきましょう。

※画像は『按腹図解』京都大学付属図書館より引用させていただきました。
※本記事本文は盛文堂 漢方醫書領布會 発行の『按腹圖解』から引用していますので、京都大学付属図書館のものとは若干の違いがあります。

※以下に書き下し文、次いで足立のコメントと原文を紹介。
※現代文に訳さないのは経文の本意を損なう可能性があるためです。口語訳は各自の世界観でお願いします。

『按腹図解』の導引按腹の活套

書き下し文・按腹図解 大阪 法橋 大田晋齊 著

導引按腹活套(かっとう)

凡そ天地の間に生きとし生ける者はみな一大元気の運動、須臾も間断(たえま)なく流行するに資(よ)りてなり。是をかつて此の一元気、纔(わずか)に流滞するときは病み、更に閉塞するときは死す。

特に人は萬物の長として、其の精気神明にし、衆妙の理具を然れども、其の心識(しんしき)最盛(さかん)なるを以て、其の心神を労役することも最太(もっとも)甚し。或いは其の公私の勤労により、或いは世営(よわたり)の時業(わざ)により名利名聞の為に思慮大過、又は飲食労倦、或いは酒色縦慾(じゅうよく)、或いは癇疝積聚、或いは風寒暑湿、或痘疹、或●(やまいだれに黴)癩(ばいらい)、或いは痰飲留飲、或いは打撲損傷など種々の因によりて、一元気是が為に流滞する時は神気不爽(さわやかならず)、臓腑不安(やすらかならず)、腸胃不和(わせず)、血脈渋濇(じうしょく)し、骨属不利(りせず)、筋絡攣急し、肌膚枯燥し、或いは浮腫す。

其の病状、緩急遅速軽重の不同あれども、共に終に横夭(わかじに)の根基(もとひ)となる。然るに此の導引按腹の術を行うときは、専ら一元気の流滞を活滑(めぐら)し、臓腑を安住(やすん)じ、腸胃を調和し、血脈を融通し、骨節を和利し、筋絡を舒暢し、肌膚を潤沢し、飲食を進め、二便を利し、気力を盛にし、記憶を強しく、身体を壮健ならしむ。亦た数年不治の痼疾を速愈せしむ。
其の効験著明なるが如きは自ら修して後、始て識得(しきとく)すべきなり。

諸病の源は一元気の如何にあり

「この一元気、纔(わずか)に流滞するときは病み、更に閉塞するときは死す。」という言葉が、太田氏の医学観の根底思想といえるでしょう。

この点は「一団の元氣」を提唱した広岡蘇仙(『難経鉄鑑』の著者)の生命観に似ていますね。

「一元気是が為に流滞する時は神気不爽、臓腑不安、腸胃不和、血脈渋濇、骨属不利、筋絡攣急、肌膚枯燥、或いは浮腫」する。という病理が示されています。
この病的状態を解除すべく、導引・按摩・按腹によって「一元気の流滞を活滑し、臓腑を安住させ、腸胃を調和し、血脈を融通し、骨節を和利し、筋絡を舒暢させる」ことが肝要となります。その結果として「肌膚を潤沢し、飲食を進め、二便を利し、気力を盛にし、記憶を強しく、身体を壮健ならしむる。」ことに繋がります。また「数年不治の痼疾を速愈せしむ」とあるように、慢性的な疾患・頑固な病(痼疾・宿痾)の治療といういうのは、治療効果も緩慢なことが多いです。その緩慢な効果の発現を少しでも早めることにつなげる…という意も記されています。

鍼道五経会 足立繁久

原文 按腹図解 導引按腹活套

■原文 按腹圖觧 導引按腹活套

凡天地の間に生とし生ける者はみな一大元気の運動須臾も間断なく流行するに資てなり。是をかつて此一元気纔に流滞するときは病み更に閉塞するときは死す。特に人は萬物の長として、其精気神明にし、衆妙の理具を然れども、其心識最盛なるを以て、其心神を勞役することも最太甚し。或其公私の勤労により、或世営の時業により名利名聞の為に思慮大過、又は飲食労倦、或酒色縦慾、或癇疝積聚、或風寒暑湿、或痘疹、或●(やまいだれに黴)癩、或痰飲畱飲、或打撲損傷等種々の因によりて一元気是が為に流滞する時は神気不爽臓腑不安腸胃不和血脉渋濇し骨属不利筋絡攣急し、肌膚枯燥し、或浮腫す其病状緩急遲速軽重の不同あれども共に終に横夭の根基となる。然るに此導引按腹の術を行ふときは専ら一元気の流滞を活滑し臓腑を安住じ腸胃を調和し血脉を融通し骨節を和利し筋絡を舒暢し肌膚を潤澤し飲食を進め二便を利し、気力を盛にし記憶を強し身體を壮健ならしむ。亦數年不治の痼疾を速愈せしむ。其効驗著明なるが如きは自ら修して後始て識得すべきなり。

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