『按腹図解』伏人および仰人療術図解

うつ伏せ・あお向け、そして按腹へ

『按腹図解』施術編、本記事では「伏人療術図解」と「仰人療術図解」を紹介します。基本通り「解釈」から「調摩」の順序がきっちりと記されています。伏臥位から仰臥位、そして按腹へと続く治療プロコールのようすが記されている章であります。

※画像は『按腹図解』京都大学付属図書館より引用させていただきました。
※本文は盛文堂 漢方醫書領布會 発行の『按腹圖解』から引用していますので、京都大学付属図書館のものとは若干の違いがあります。

※以下に書き下し文、次いで足立のコメントと原文を紹介。
※現代文に訳さないのは経文の本意を損なう可能性があるためです。口語訳は各自の世界観でお願いします。

『按腹図解』の伏人療術図解

書き下し文・按腹図解 

伏人療術図解

図の如く伏臥せしめ面に括り枕ようのものを当て、面を右へなり共(とも)左なり共(とも)病人の随意にそむかし、医者左側に坐し(※1)、左の手の掌は十四椎の辺に安住せしめ、右の掌にて脊椎二行通り三行通りを大椎辺より十三四椎辺まで六七遍拊循し、さて左右の指頭(ゆびさき)にて百会・後頂・枕骨・風池・風府、後髪際を熟(とく)と解釈し、肩胛骨、肩髎・肩髃・肩井等を解釈し、病人の右の肩髃より臑、臂、肘、腕、内外・表裏、手背、手心、五指頭(ゆびさき)まで細かに解釈し、其の後、肩髃より五の指まで徐(しずか)に調摩し。
さて脊椎は大椎より一椎一椎尾骶骨まで細かに解釈し、又二行通り三行通りの大筋を解釈し腰臀の大肉、大筋、環跳・胞肓・秩辺を推圧し、夫れより承扶・委陽・中瀆・伏兔・風市、膝蓋の四旁を解釈し。
別して委中・承山の凝結(こり)を解釈し腓腸(ひちょう・こむら)を摩解(まかい)し輔骨、胻骨、脚面、内踝、外踝、踵骨の四旁を解釈し、足心を解釈し、湧泉・然谷を推圧し、足趾五指ともによく摩解し。
さて又、右手にて両痞根の穴を推圧し、左の手掌にて環跳辺より足趾まで数遍調摩し、亦左の手にて両痞根の穴を推圧し、右の手掌にて大椎辺より両痞根辺まで徐々(そろそろ)と循撫し、さて両の拇指頭(おやゆびのさき)にて両痞根の穴を良久(ややひさしく)して推圧して、心静かに手を引くべし
扨、仰臥せしめ次の手術を施すべし。

施術者の位置について

細かいツッコミのようで恐縮ですが、冒頭にある「医者(患者の)左側に坐し(※1)」という文に対し、絵図では患者の右側に坐しています。
そして手の動きをみると「左の手掌は十四椎の辺に安住せしめ、右掌にて脊椎二行通り三行通りを……六七遍拊循し」とあり、これは絵図と説明文は合致しています。
ちなみに患者の右側に坐してしまうと、左手と右手を交叉させて施術することになります。実際に試してみましたが、できないことは無いのですが、ちょっと窮屈な形になります。
絵図の通りに位置取りして拊循するのが佳しのようですね。

按摩(解釈・摩解)から調摩への流れ

本文には「解釈」「摩解」の後に「調摩」する手順が記されています。

頭から足の先まで、上から下へ…の流れで施術を行い、最後には「両の拇指頭にて両痞根穴を良久して推圧して、心静かに手を引くべし。」という言葉で伏臥位における施術を収めています。十四椎で始まり、痞根で終わるという流れが印象に残りますね。

原文 診病奇侅 伏人療術圖觧

■原文 按腹図解 伏人療術圖觧

圖の如く伏臥せしめ面に括り枕やうのものを當て面を右へなり共左なり共病人の隨意にそむかし医者左側に坐し左の手の掌は十四推の辺に安住せしめ右の掌にて脊推二行通り三行通りを大推辺より十三四推辺まで六七遍拊循し、さて左右の指頭にて百會後頂枕骨風池風府後髪際を熟と觧釈し肩胛骨肩髎肩髃肩井等を觧釈し、病人の右の肩髃より臑臂肘腕内外表裏手背手心五指頭まで細かに觧釈し、其後肩髃より五の指まで徐に調摩し、さて脊推は大推より一推〃〃尾骶骨まで細かに觧釈し、又二行通り三行通りの大筋を觧釈し腰臀の大肉大筋環跳胞肓秩辺を推壓し、夫より承扶委陽中瀆伏兔風市膝蓋の四旁を觧釈し、別して委中承山の凝結を觧釈し腓腸を摩觧し輔骨胻骨脚靣内踝外踝踵骨の四旁を觧釈し足心を觧釈し湧泉然谷を推壓し足趾五指ともによく摩觧し、さて又右手にて両痞根の穴を推壓し左の手掌にて環跳辺より足趾まで数遍調摩し、亦左の手にて両痞根の穴を推壓し右の手掌にて大推辺より両痞根辺まで徐〃と循撫し、さて両の拇指頭にて両痞根の穴を良久して推壓して心静かに手を引くべし。扨仰臥せしめ次の手術を施すべし。

引き続き仰臥位における施術の説明「仰人療術図解」です。

『按腹図解』の仰人療術図解

書き下し文・按腹図解 

仰人療術図解

図の如く仰臥せしめ、医者病人の面に向い坐し、百会より前頂、前髪際、両太陽、耳門、眉稜、眼旁、両顴骨、鼻梁、人中、口吻、承満、項頭、結喉、両肩胛、臑、臂、肘、腕、手背、手掌、五指爪甲内外共に細かに解釈し。
扨、肩髃より五指頭まで数次調摩し、亦腰骨より外股(そともも)、風市、伏兔等の辺を解釈し、膝蓋四旁、内脛外脛、内外踝、足跟(きびす)、足背、足心、五指、悉く解釈し。
さて腰部より足趾頭(あしのゆびさき)まで数次(いくたび)も撫摩循下して、扨次の按腹術にかかるべし。

ここでも解釈から調摩、撫摩への流れで施術しています。そして頭頂部から手指・足趾の先まで解釈しており、その流れは伏臥位における施術と同様のようです。

後部(背部)から前部、上から下(末端・末梢)へ…という流れを作っておき、その上で按腹へとつなぐようです。

次章は家法按腹十三術図解です。

鍼道五経会 足立繁久

原文 診病奇侅 仰人療術圖觧

■原文 按腹図解 仰人療術圖觧

圖の如く仰臥せしめ医者病人の面に向ひ坐し、百會より前頂前髪際両大陽耳門眉稜眼旁両觀骨鼻梁人中口吻承滿項頭結喉両肩胛臑臂肘腕手背手掌五指爪甲内外共に細かに觧釈し、扨肩髃より五指頭まで数次調摩し、亦腰骨より外股風市伏兔等の辺を觧釈し膝蓋四旁内脛外𦙾内外踝足跟足背足心五指悉觧釈し、さて腰部より足趾頭まで数次撫摩循下して、扨次の按腹術にかゝるべし。

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