『按腹図解』小児按腹図解より

子どもへの按摩・按腹

『按腹図解』の小児按腹図解の章です。子どもにも按腹を行っていました。このような知識や術は、小児はりにも通ずるものがあるはずです。そのような視点でもって本章の記事をみてみましょう。


※画像は『按腹図解』京都大学付属図書館より引用させていただきました。
※本文は盛文堂 漢方醫書領布會 発行の『按腹圖解』から引用していますので、京都大学付属図書館のものとは若干の違いがあります。

※以下に書き下し文、次いで足立のコメントと原文を紹介。
※現代文に訳さないのは経文の本意を損なう可能性があるためです。口語訳は各自の世界観でお願いします。

『按腹図解』の小児按腹図解

書き下し文・按腹図解 

小児按腹図解

小児は臓腑薄脆(うすく)、肌肉濡弱(やわらか)に、筋骨いまだ堅固(かた)からずして、夜に日に生長するものなれば、細小(すこし)の外邪にも乳食にも触動(しょくどう)し易し。
喩えば数丈の松樹(まつ)も始生(はじめ)嫰葉(ふたば)より二三尺までは太甚(はなはだ)生育(そだち)難く、既に三四尺にもなれば暴(あら)き雨風など少しの外物(がいぶつ)に支えられても、各別の傷(いたみ)とならざるが如し。兎角幼少の間に意(こころ)を注(つけ)て生育の道を尽くすべきことなり。

平生無病たりとも、常に按腹するときは乳食滞らず、二便よく通じ、心氣たしかに成り物に驚動(おどろか)ず、疱瘡麻疹軽く、五疳・癖疾・急慢驚風などの病不発(おこらず)健康に生長するものなり。
若し微(すこ)し恙(やまい)にても有るときは怠慢(おこたり)なく療治すべし。兎角小児は服薬を嫌悪(きらう)ものにて、強いて用うるも僅かにて効を奏し難し。
唯だ手術の速功有に如かず。大概幼児の病は服薬せずとも、按腹にて大方治するものなり。殊に吐乳・瀉利・急驚風・慢驚風・走馬疳・丹毒(はやくさ)のごときは此の手術にあらざれば決して救ひ難し。屡(しばしば)試みて、屡効を見るなり。

概論小児按腹-子どもの体質-

本文に「生長」とあるように、生長とは木火の特性であります。この木火は小児の生理と病理に深く関わっています。
そのことは小児科病症を総覧するとわかると思います。

加えて小児は未熟な存在であり未発達であること、この点も小児体質の基盤となる要素です。本文では「嫰葉」という言葉に譬えられていますね。

未だ成長過程にあるということは、「嫰」なる存在であり、かつ「木と火」の性を強く帯びるという要素をもちます。このような小児体質を踏まえて、小児の診断と治療を行う必要があり、それは小児按腹でも小児はりでも共通していることであります。

次の段落「小児按腹の実際」は以下に続きます

原文 按腹図解 小児按腹圖觧

■原文 按腹図解 小児按腹圖觧

小児は臓腑薄脆肌肉濡弱筋骨いまだ堅固からずして夜に日に生長するものなれば、細小の外邪にも乳食にも觸動し易し。喩ば数丈の松樹も始生嫰葉より二三尺までは太甚生育難く、既に三四尺にもなれば暴き雨風など少しの外物に支られても各別の傷とならざるが如し。兎角幼少の間に意を注て生育の道を尽すべきことなり。平生無病たりとも常に按腹するときは乳食滞らず、二便よく通じ、心氣たしかに成り物に驚動ず、疱瘡痳疹輕く五疳癖疾急慢驚風等の病不彂健康に生長するものなり。若微羔にても有ときは怠慢なく療治すべし。兎角小児は服薬を嫌悪ものにて、強て用るも僅にて効を奏し難し。唯手術の速功有に如ず。大概幼児の病は服薬せずとも按腹にて大方治するものなり。殊に吐乳泻利急驚風慢驚風走馬疳丹毒のごときは此手術にあらざれば決して救ひ難し。屡試て屡効を見るなり。

次に小児按腹の実際に移ります。

『按腹図解』の小児按腹図解

書き下し文・按腹図解 

小児按腹図解

小児の療術は大人と小異(しょうい)なり。図のごとく側臥せしむるか、又は人に横に抱(いだか)しめて、大椎身柱の辺より腰椎まで、又二行三行通りをいかにも徐(しずか)に摩撫し、腰眼環跳を解釈し、臀尻(でんこう)外股(そともも)内股(うちもも)朓腸(こむら)跟骨(きびす)よく摩撫し、両手足の五指頭(ゆびさき)足心(あしのうら)手心(てのひら)までとく調摩し、又転臥せしむるか、抱(いだか)えしめて、又左(前述)の如く療し、また大椎より数次調摩し、両痞根の穴を須臾(しばらく)推圧(お)し、扨、徐(しずか)に手を引くべし。
それより按腹の術に入るべし。

小児按腹の実際 -按腹の前に小児按摩-

本段落は「小児按腹の実際」として整理して話を進めていきます。子どもさんへの小児按腹は、親御さんに抱っこさせた状態で施術します。この点も小児はりと同じですね。

そして手順としては、「大椎・身柱の辺より腰椎まで」と下へ下へと摩撫します。この点は、大人の治術「大椎辺より十三四椎辺まで六七遍拊循し」と同様です。

「両痞根の穴を須臾推壓し」との収め方もまた大人への療術「両の拇指頭にて両痞根の穴を良久して推壓して心静かに手を引くべし。」(伏人療術図解)と同じで、痞根の運用法に興味深いものがあります。

鍼道五経会 足立繁久

原文 按腹図解 小児按腹圖觧

■原文 按腹図解 小児按腹圖觧

小児の療術は大人と小異なり。圖のごとく側臥せしむるか、又は人に横に抱しめて、大椎身柱の辺より腰椎まで、又二行三行通りをいかにも徐に摩撫し、腰眼環跳を觧釈し、臋尻外股内股朓腸跟骨よく摩撫し、兩手足五指頭足心手心までとく調摩し、又轉臥せしむるか抱へしめて、又左の如く療しまた大椎より数次調摩し両痞根の穴を須臾推壓し、扨徐に手を引べしそれより按腹の術に入べし。

次に小児按腹に移ります。

『按腹図解』の小児按腹図解

書き下し文・按腹図解 

小児按腹図解

図の如く仰臥せしめ胸膈を軽く調摩し、さて左右の肩(かた)臑(かいな)肘臂(ひじ)腕(うで)手背(てのこう)手心(てのひら)五指頭まで摩解し、腰より以下、内股(うちもも)外股(そともも)膝臏(ひざはぎ)内脛(うちはぎ)外脛(そとはぎ)内踝外踝(くるぶし)足面(あしのこう)足心(あしのうら)五指頭(ゆびさき)まで残らず摩解調摩し、
扨左手をもって拇指頭を左の章門の穴に承抵(しょうてい)し、食指を中脘にあて無名指を右の衝門に承抵(しょうてい)し、良久して推圧し、また右手の四指を右の腹側(よこはら)にかけ、右の拇指を左の腹側(よこはら)にかけ、大人鈎腸又櫓盪の心持にて療すべし。
小児は其の腹狭小なれば手数は用い難し。大概此の二術にて治するなり。

小児按腹の実際 -小児按腹-

本段落は子どもを仰向けにし、いよいよ按腹が始まります。「章門」「衝門」「横腹」が主な治療部位であり、技法は按腹十三術の「鈎腸」「櫓盪」の心持ちにて行うといいます。

これも小児体質のある一面を合わせた術といえるのかもしれません。

鍼道五経会 足立繁久

原文 按腹図解 小児按腹圖觧

■原文 按腹図解 小児按腹圖觧

圖の如く仰臥せしめ胸膈を輕く調摩し、さて左右の肩臑肘臂腕手背手心五指頭まで摩觧し、腰より以下内股外股膝臏内脛外脛内踝外踝足面足心五指頭まで残らず摩觧調摩し、
扨左手をもつて拇指頭を左の章門の穴に承抵し、食指を中脘にあて無名指を右の衝門に承抵し、良久して推壓し、また右手の四指を右の腹側にかけ、右の拇指を左の腹側にかけ、大人鈎腸又櫓盪の心持にて療すべし。
小児は其腹狹少なれば手数は用難し。大概此二術にて治するなり。

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