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安産のために按腹?
本章では妊婦さんへの按腹に関する情報が記されています。現代では“妊娠期のマイナートラブル”という言葉もあり、妊娠を機に様々な不調が生じることは認知されています。そして妊娠期の過ごし方でお産が変わる…ということも認知されていることだと思います。
それだけに妊娠期の体質とは?妊娠期における各療法について…などを知っておく必要があるのです。
※画像は『按腹図解』京都大学付属図書館より引用させていただきました。
※本文は盛文堂 漢方醫書領布會 発行の『按腹圖解』から引用していますので、京都大学付属図書館のものとは若干の違いがあります。
※以下に書き下し文、次いで足立のコメントと原文を紹介。
※現代文に訳さないのは経文の本意を損なう可能性があるためです。口語訳は各自の世界観でお願いします。
『按腹図解』の孕婦按腹図解
書き下し文・按腹図解
孕婦按腹図解
妊娠四五ヶ月より以後、常に按腹をなして腹中を調理し、腰脚を温養し、児胎の住居(すまい)を整え直しおくべし。かくの如く療治するときは臨月に至り分娩甚太(はなはだ)平安なり。
又、堕胎・流産・小産(しょうさん)・逆産(ぎゃくさん)・横産(おうざん)の患いなく、産前に子癇(しかん)、産后に児枕痛(あとはらいらみ)・胞衣不下(えなおりず)・血暈(ずるずる)・乳汁不出(ちちいでず)等の病なく、母子(おやこ)安泰(やすらか)に、其の生子(うまれご)も強健(すこやか)に生育するものなり。
概論・妊婦への按腹
本文では「姙娠四五ヶ月より以後、常に按腹をなして…」とあり、妊娠中期あたりから、療治を必要とするとあります。妊婦さんへの按腹となると、専門的な技術と知識を要するでしょう。ここでは按腹に関するコメントを控えておきます。
しかし「姙娠四五ヶ月より……腹中を調理し、腰脚を温養し」との文からは、妊娠期における体調が常に治療対象となることを示唆しています。
それもそのはず、“胞中に胎児が存在する”という状態は、すなわち妊娠を機に体内環境が大きく激変してしまった状態でもあります。短期間のうちにおこる急激な体内環境の変化は、当然調整すべきことです。
本書では「腹中を調理」すること、「腰脚を温養」することの二つの治療方針を上げています。「腹中を調える」ことは、胞中を中心とした腹内環境を調えることであり、その手段として按腹を示しています。
そしてもう一つ挙げられているのが「腰脚を温養」すること。腰脚を治療すること、とくに温養することを重要としています。この点は按摩・按腹に限らず、多くの治法にも共通することでしょう。
次の段落「妊婦さんの按腹・その実際」に続きます
原文 按腹図解 孕婦按腹圖觧
■原文 按腹図解 孕婦按腹圖觧
姙娠四五ヶ月より以後常に按腹をなして腹中を調理し腰脚を温養し児胎の住居を整へ直しおくべし。かくの如く療治するときは臨月に至り分娩甚太平安なり。
又堕胎流産小産逆産横産の患なく、産前に子癇、産后に児枕痛胞衣不下血暈乳汁不出等の病なく、母子安泰其生子も強健に生育するものなり。
以下は妊婦さんへの按腹・その実際が記されている段落に入ります。
『按腹図解』の孕婦按腹図解
書き下し文・按腹図解
孕婦按腹図解
図の如く坐せしめ鎭帯(はらおび)をとき、医、前に坐し、右の膝を立て、さて左右の親指頭にて不容・幽門の穴を軽々と推圧(お)し、また左右の手を妊婦の背中へまわし、六七椎より十四五椎まで左右二行三行ともに解釈し、扨前腹へかき出すように数次すべし。かようにするうちに右か左かに偏(かたより)し児胎ころころとして手に応ずるものなり。これを任脉臍下へ臍下へとなであぐべし。扨又、乳下より臍上まで数遍調摩して徐(しずか)に手をとるべし。
概論・妊婦への按腹
本文にある「不容・幽門の穴を軽々と推圧し」と、「六七椎より十四五椎まで左右二行三行ともに解釈し」と、具体的な部位と治術が記されているのがヒントになります。腹背ともに膈を起点としているのも印象的であります。
次の段落は「乳不出に対する按腹」です。
鍼道五経会 足立繁久
原文 按腹図解 孕婦按腹圖觧
■原文 按腹図解 孕婦按腹圖觧
圖の如く坐せしめ鎭帯をとき医前に坐し、右の膝を立さて左右の親指頭にて不容幽門の穴を輕〃と推壓し、また左右の手を姙婦の背中へまはし六七椎より十四五椎まで左右二行三行ともに觧釈し、扨前腹へかき出すやうに数次すべし。かやうにするうちに右か左かに偏し児胎ころ〱として手に應ずるものなり。これを任脉臍下へ〱となであぐべし。扨又乳下より臍上まで数遍調摩して徐に手をとるべし。。