『小児薬証直訣』について
本記事では『小児薬証直結』に記される急驚の章を紹介します。急驚とは急驚風とのこと。驚風とは痙攣を意味する病症ですが、急驚風は急性に起こる痙攣のこと。小児科では、熱性けいれんもこの急驚風の範疇に入ります。
小児はりを実践する鍼灸師にとって、急驚風についても知っておくべき情報でしょう。それでは本文を読んでいきましょう。

※画像は『類証注釈銭氏小児方訣』京都大学付属図書館より引用させていただきました。
※以下に書き下し文、次いで足立のコメントと原文を紹介。
※現代文に訳さないのは経文の本意を損なう可能性があるためです。口語訳は各自の世界観でお願いします。
『類証注釈銭氏小児方訣』 急驚
書き下し文・『類証注釈銭氏小児方訣』 急驚 第十一
大声を聞くに因り、或いは大いに驚きて搐を発す、発し過れば則ち故の如し。此れ陰無き也。当に下すべし。利驚丸(二十)之を主る。
小児の急驚する者、本(もと)は熱の心に於いて生ずるに因る。身熱、面赤、引飲、口中氣熱、大小便黄赤、劇しきときは則ち搐する也。
蓋し熱甚しきときは則ち風生ず。風は肝に属する。此れ陽盛陰虚也。故に利驚丸(二十)之を主る。以て其の痰熱を除く。巴豆及び温薬を与え、大いに之を下すべからず。搐を恐る。虚熱は消せず也。
小児、熱痰が心胃に客し、非常の声を聞くに因れば、則ち動じて驚搐するなり。若し熱極まれば、声を聞く及び驚するに因らずと雖も、又自ら搐を発す(故の如く、疾は止む也。急驚は心火を為す、熱は陽に属す。故に陰無き也。慢驚は脾虚に因る、陰に属す。故に陽無き也。引飲、口渇、喜飲する也。劇は竭戟反、猶お甚しき也)。
急驚風の特徴について
急驚風の大きな特徴は冒頭文に記されています。
「大声を聞くに因り、或いは大いに驚きて搐を発す、発し過れば則ち故の如し。此れ陰無き也。当に下すべし。」
とくに「発し過れば則ち故の如し」とあるように、驚風の発作が終わると平生に戻るのです。その理由は「無陰」、陰分に大きな病因が無いことにあります。
急驚の処方
そのため治法としても下法を選択することが可となります。本文に記されている利驚丸について以下に引用しましょう。
二十 利驚丸
天竺黄(二銭) 軽粉 青黛(各一銭) 黒牽牛末(半両生)
右(上記)を研匀し、煉蜜に碗豆大の如く丸くす、一歳児は一丸、温めた薄荷水にて下す。食後に服する。
■ 原文 二十 利驚圓
天竺黄(二錢) 輕粉 青黛(各一錢) 黒牽牛末(半兩生)
右研匀、煉蜜丸如碗豆大、一歳一丸、温薄荷水下。食後服。
以上の生薬構成です。とくに下薬としての特徴を持つのが牽牛子です。この牽牛子は『小児薬証直訣』にもよく登場する生薬です。牽牛子はアサガオの種子のこと。その生薬的な薬効としては以下のようになります。
この牽牛子の薬能を以下に引用しておきましょう。『公益本草大成(和語本草綱目)』からの引用です。
牽牛子 辛熱
○大小便を利し、水腫を治し、氣分湿熱を除き、痰飲を逐い、腰背脹重・氣滞・喘満を治し、命門に達す。
○弘景(陶弘景)が曰く、此の薬、始め田野の人に出づ、牛を牽きて薬を謝す故に以て之を名づく。
[利大小便]牽牛は淡滲の者に非ざるときは則ち直に膀胱に入て水を利するに非ず。牽牛は大小腸経に入ると雖も苦寒の者に非るときは則ち直に大便通利の者にも非ず。何ぞ此れが要とする所は両便通利を以てするや。
蓋し牽牛子は肺胃の湿を去る、其の辛熱なるを以てなり。且つ辛は氣をして散行せしむ。故に湿が肺胃の分、上中焦に鬱遏し、氣亦た此れが為に渋滞して行らざる故に氣と津とが俱に下焦に施化すること能わず。是れを以て或は小便利せず、或いは大便通ぜざることを致す。牽牛子の辛熱を用いて、其の湿を去り、其の氣を行(や)るときは則ち津施氣化して下焦潤通するに従いて小便自利し大便自通す。
或いは厚味を食すこと大過して、津液皆な痰と成りて上に塞がり、氣は上に滞りて降りず。故に下焦不潤して大便秘結する者あり。此れ陰虚血燥に非ず。津液が下に行らざる故のみ。此の時、若し潤陰の剤を用いるときは則ち氣痰をして加(ますます)滞らしめて彌(いよいよ)結す。惟だ牽牛を用いて去湿行氣すれば則ち氣痰化し、津液は小大腸に潤いて大便通利す。
世人、多く牽牛を以て直に利水の剤とし、或いは此れが利水の功のみを知りて、大便通利の義を知らず。故に東垣曰く、牽牛は神農の薬に非ざる也。名医続注に云う、味苦寒、能く湿氣を除き、小便を利し、下注脚氣を治す。此の説、氣味主治俱に悞りなり。何ぞ也?
凡そ牽牛を用いるに少なきときは則ち大便を動かす。(牽牛の用量)多きときは則ち泄下して水の如し。乃ち瀉氣の薬、其の味辛辣。久しく嚼めば猛烈雄壮。所謂、苦寒は安んぞ在らん哉。夫れ湿なる者は水の別称、有形の者也。若し肺先ず湿を受け、湿氣が施化すること得ず、大小便不通を致すときは、則ち宜しく之を用うべしと。実に此れが氣味主治、古、未だ明らかならず。東垣始めて之を発せり。
[治水腫]水と湿、名を異にして其の類は同じ。湿鬱するときは則ち水生(な)り、水鬱するときは則ち湿と生(な)る。『内経』を案ずるに、諸々の水腫の本は腎に在り、其の末は肺に在り、と。肺は金に属し氣を主る。金と氣俱に水の母に非ずや。故に下焦の邪水溢れて肺に舎り、肺、其の湿を受けて氣行らず。湿氣、上焦に壅がるときは則ち水道不通、則ち溢れ湧いて水腫病成りて深し。故に牽牛を用いて肺湿を去り、其の氣滞を行らすときは則ち高源の水流れて膀胱の溺(いばり)従いて通ず。湿去り氣行り小便通ずるときは則ち何の水腫が愈ざる者あることあらん。然れども肺氣の虚実を定めて、氣虚の者には尤も用いるに宜からず。此れが辛熱、元氣を散ずるが故也。或いは湿熱氣分に無くして、惟だ血分湿熱に因りて腫脹する者は牽牛子の治する所に非ず。是れ以て仲景、七種湿熱小便不利を治す。牽牛を用いざる者も亦た其の湿熱皆な血分に在りて、氣分にあらざるが故なり。
[除氣分湿熱]湿熱、血分に在る者は、先ず下焦に受く。苦寒苦温を以て之を治す。牽牛の辛熱を用いるときは則ち反て其の元氣を傷る。湿熱、氣分に在る者は先ず上焦に受く。牽牛の辛熱之を主る。
李杲が曰く、牽牛止(ただ)能く氣中の湿熱を泄し、血中の湿を除くこと能わず。湿は下より之を受く。下焦は血を主る。血中の湿、苦寒の味に宜し、反て辛熱を以て之を泄せば、人の元氣を傷る。
[逐痰飲]湿を去り氣を利するが故也。
[治腰背脹重]此の症、両因あり。湿熱、下焦血分に在りて然る者は牽牛を用ゆるに宜からず。湿熱氣分に在りて然る者は宜しく之を用ゆべし。蓋し湿熱血分に在る者は腰より小腹股陰膝に及びて脹重す。湿熱氣分に在る者は腰背より髀陽に及んで脹重す。
[氣滞]上焦肺分の氣滞を行して能く小便を通ず。
[喘満]或いは湿熱肺に塞がり、或いは肺氣胸中に滞りて喘満する者、或いは水氣肺に鬱して喘満する者、之を用う。
[達命門]此れ李時珍が発明に出づ。牽牛の辛熱、上は手の太陰肺経氣分に入り、下は右腎命門の氣分に達して、下焦氣分の湿熱壅遏を去りて二便を通ず。酒色過度して湿熱の邪、精道に在りて会陰脹痛し、二便通ぜざる者これを用う。時珍が曰く、牽牛は能く右腎命門に達して精隧に走ること、人の知らざる所と。故に東垣、下焦の陽虚を治する天真丹に、鹽水炒黒の牽牛を用ゆ。
或る人問う、吾子は前に所謂牽牛は直に下焦二便の薬に非ずと。然るに右腎命門に達すとは、下焦に行く者に非ずや?
曰く、左腎は下焦の血分とす。右腎は下焦の氣分とす。牽牛は氣分の剤にして、血分の薬ならず。故に下焦に行くと雖も右腎命門の氣分に達す。精道の湿熱を去ると雖も亦た右腎を温行せしむるの餘力なり。
[總槩]牽牛は肺経氣分に行きて湿熱を去る、小便を利し、大便を通じ、氣を行きて、水腫秘結を療するの要薬なり。病血分に在る者は用ること勿れ。
[使薬]青木香、乾姜を得て良し。大黄と同じく用るときは則ち血分に入りて、能く大便を通す。肉桂と同じく用いるときは則ち右腎命門に達す。
[毒]牽牛は辛熱雄烈、氣を泄すこと、尤甚し。故に妄りに用ること勿れ。元氣耗損し易きを以なり。○姙婦は服すること勿れ、胎を落とし易し。○久服すれば則ち人の元氣を傷る。○病の血分に在る者、大便不結の者、無湿の者俱に用ること勿れ。○大小便通泄する者、脾虚の腫脹、肺氣不足の喘満には用ること禁ず。○病の虚実を詳らかにせずして妄りに牽牛を用いて一時の快を取ること勿れ。
丹渓曰く、若し病形と証、俱に実して脹満せず大便秘せざる者に非ずば、軽く用るべからず。駆遂して虚を致す。
張文懿云く、牽牛は耽り嗜むべからず。人の元氣を脱すと。慎まずんばあるべからず。軽く妄りに用ること勿れ。
[畏悪]孕婦に忌む。○牽牛を用いば其の黒皮を去る。皮は能く氣を滞らす。誤り用ること勿れ。
[附方]…(略)…
[愚案]牽牛子に黒白の二種あり。丹渓曰く、黒は木に属す、白は金に属すと。愚、案ずるに黒白の性同じくして異ならず。氣味性功、黒色の者を以て勝(まさる)とすべし。蓋し物の外陽なる者は内陰。内陰なる者は外陽。自然の理なり。牽牛の華は陰にして其の子は陽たり。故に華は日を得て萎(しぼ)み、子は南方の陽化を得て辛熱なり。故に子も亦た外の皮色は或いは黒或いは白、陰にして氣味性功は陽たり。黒皮の者は白皮の者よりも陰の裹むこと盛んなり。表の陰盛んなるときは則ち裏の陽も亦た盛んなり。是れ以て黒牽牛子は其の功、白き者に勝(まさる)と云う而已。
[修治]牽牛子、黒者を黒丑と名づけて、白者を白丑と名づく。俱に薬に入り用ゆ。水に入て浮む者を去り、日に干し、紙を隔てて炒り香(こうばし)くして頭末を用ゆ。頭末とは粗々と碾(ひ)きて第一番篩を用ゆ。此れを頭末と名づく。一番篩の外は細粉皮麩にして用うべからず。若し一番篩の中にも皮と粉の混(まじり)あらば択び捨てよ。○或いは酒に拌(かきま)ぜ蒸すことあり。○或いは半生半熟を用うことあり。○本草家の諸説を考るに、牽牛子は皆な碾(おろし)て頭末を取り用うのみ。遂に剉み用るの説あることなし。然るに今の人多くは剉みて用う。頭末の製を致す者なし。誤まりと云うべし。
■ 原文
牽牛子 辛熱
○利大小便、治水腫除氣分濕熱、逐痰飲、治腰背脹重氣滯喘滿、達命門。
○弘景曰、此藥始出田野人牽牛謝藥。故以名之。
[利大小便]牽牛は淡滲の者に非則直に膀胱に入て非利水。牽牛は雖入大小腸經苦寒の者に非則直に大便通利の者にも非ず。然に何ぞ此が要とする所は兩便通利を以するや。葢牽牛子は肺胃の濕を去其辛熱なるを以なり。且辛は氣を乄散行せしむ。故に濕肺胃分、上中焦に欝遏し氣亦此が爲に澁滯乄不行故に氣與津俱に下焦に施化すること不能。是以或は小便不利、或大便不通ことを致す。牽牛子の辛熱を用て、其濕を去、其氣を行則津施氣化乄下焦潤通するに從て小便自利し大便自通す。或は厚味を食こと大過乄、津液皆痰と成て上に塞り、氣上に滞て不降故に下焦不潤乄大便秘結する者あり。此陰虚血燥に非ず。津液不行下故のみ。此時若潤陰の劑を用則氣痰を乄加滯しめて彌結す。惟牽牛を用て去濕行氣則氣痰化し、津液小大腸に潤て大便通利す。
世人多く牽牛を以て直に利水の劑とし、或此が利水の功のみを知て、大便通利の義を不知。故に東垣曰、牽牛非神農藥也。名醫續注云、味苦寒能除濕氣利小便治下注脚氣。此説氣味主治俱悞矣。何也。凡用牽牛少則動大便、多泄下如水。乃瀉氣之藥其味辛辣。久嚼猛烈雄壯。所謂苦寒安在哉。夫濕者、水之別稱、有形者也。若肺先受濕濕氣不得施化致大小便不通、則宜用之と。實に此が氣味主治、古未明東垣始發之。
[治水腫]水與濕異名其類同。濕欝則水、生水欝則濕と生。内經を案に諸の水腫の本は在腎、其末は在肺と。肺は属金主氣、金與氣俱に水の母に非や。故に下焦の邪水溢て肺に舎り、肺其濕を受て氣不行。濕氣上焦に壅則水道不通則溢湧て水腫病成て深し。故に牽牛を用て肺濕を去、其氣滯を行則高源の水流て膀胱の溺從て通ず。濕去氣行小便通則何の水腫か不愈者あることあらん。然ども肺氣の虚實を定て、氣虚の者には尤不宜用。此が辛熱、元氣を散ずるが故也。或は濕熱氣分に無乄、惟血分濕熱に因て腫脹する者は牽牛子の非所治。是以仲景治七種濕熱小便不利不用牽牛者も亦其濕熱皆血分に在て、氣分にあらざるが故なり。
[除氣分濕熱]濕熱在血分者は先下焦に受、苦寒苦温を以て治之。牽牛の辛熱を用則反て其元氣を傷る。濕熱氣分に在者は先上焦に受、牽牛の辛熱主之。李杲曰、牽牛止能泄氣中之濕熱、不能除血中之濕。濕從下受之。下焦主血、血中之濕、宜苦寒之味、反以辛熱泄之、傷人元氣。
[逐痰飲]去濕利氣故也。
[治腰背脹重]此症兩因あり。濕熱下焦血分に在て然者は牽牛不宜用、濕熱氣分に在て然者宜用之。葢濕熱血分に在者は腰より小腹股陰膝に及て脹重す。濕熱氣分に在者は腰背より髀陽に及で脹重す。
[氣滯]上焦肺分の氣滯を行乄能小便を通ず。
[喘滿]或は濕熱肺に塞り、或は肺氣胸中に滯て喘滿する者、或は水氣肺に鬱乄喘滿する者用之。
[達命門]此李時珍が發明に出。牽牛の辛熱、上は手の太陰肺經氣分に入、下は右腎命門の氣分に達乄、下焦氣分の濕熱壅遏を去て二便を通ず。酒色過度乄濕熱の邪、精道に在て會陰脹痛し、二便不通者用之。時珍曰、牽牛能達右腎命門走精隧、人所不知と。故東垣、下焦の陽虚を治する天眞丹に、鹽水炒黒の牽牛を用ゆ。
或問、吾子前に所謂牽牛は直に下焦二便の藥に非ずと。然るに右腎命門に達すとは、下焦に行者に非や。
曰、左腎は下焦の血分とす。右腎は下焦の氣分とす。牽牛は氣分の劑に乄、血分の藥ならず。故に下焦に行と雖も右腎命門の氣分に達す。精道の濕熱を去と雖𪜈亦右腎を温行せしむるの餘力なり。
[總槩]牽牛は肺經氣分に行て濕熱を去、小便を利し、大便を通じ、氣を行て、水腫秘結を療するの要藥なり。病血分に在者は勿用。
[使藥]青木香、乾姜を得て良。大黄と同用則血分に入て、能大便を通す。肉桂と同用則右腎命門に達す。
[毒]牽牛は辛熱雄烈泄氣、尤甚し。故に妄に用こと勿れ。元氣耗損し易を以なり。○姙婦は勿服胎を落易し。○久服則人の元氣を傷る。○病在血分者○大便不結者○無濕者俱に勿用。○大小便通泄者○脾虚の腫脹○肺氣不足の喘滿等には禁用。○病の虚實を不詳乄妄に牽牛を用て一時の快を取こと勿れ。丹渓曰、若非病形與證俱實不脹滿不大便秘者、不可輕用、驅遂致虚。張文懿云、牽牛不可耽嗜、脱人元氣と。不可不愼、輕く妄に用こと勿れ。
[畏惡]孕婦に忌。○牽牛を用ば其黑皮を去。皮は能氣を滯らす。誤用こと勿れ。
[附方]…(略)…
[愚案]牽牛子に黑白の二種あり。丹渓曰、黑屬木、白者屬金と。愚案に黑白の性同乄不異。氣味性功、黑色の者を以て勝とすべし。葢物の外陽なる者は内陰。内陰なる者は外陽。自然の理なり。牽牛の華は陰に乄其子は陽たり。故に華は得日萎、子は南方の陽化を得て辛熱なり。故に子も亦外の皮色は或黑或白、陰にして氣味性功は陽たり。黑皮の者は白皮の者よりも陰の褁こと盛なり。表の陰盛則裏の陽も亦盛なり。是以て黑牽牛子は其功白者に勝と云而已。
[修治]牽牛子、黑者を黑丑と名て、白者を白丑と名く。俱に藥に入用ゆ。水に入て浮者を去、日に干、紙を隔て炒香く乄頭末を用ゆ。頭末とは粗々と碾て第一番篩を用ゆ。此を頭末と名。一番篩の外は細粉皮麩に乄不可用。若一番篩の中にも皮與粉混あらば擇捨よ。○或は酒に拌蒸ことあり。○或は半生半熟を用ことあり。○本艸家の諸説を考るに、牽牛子は皆碾て頭末を取用のみ。遂に剉用の説あることなし。然に今人多は剉て用。頭末の製を致す者なし。誤と云べし。
『公益本草大成』巻之六より
長文の引用となりましたが、牽牛子の全体像がみえてくると思います。とくに「牽牛子は肺経氣分に行きて湿熱を去り、小便を利し、大便を通じ、氣を行して……の要薬なり。」という要点は、利驚丸の方意を理解するのに必要な情報です。
また時代は異なりますが、李時珍の言葉にある「命門に達す」という薬能もまた重要な情報だといえるでしょう。
ここにある牽牛子の薬能と、導赤散に使用される木通の薬能と比較することも、非常に勉強になると思います。
急驚の病理
さて急驚風の病理についても触れておきましょう。本文には次のようにあります。
「熱の心に於いて生ずるに因る。」
「小児、熱痰が心胃に客し、非常の声を聞くに因れば、則ち動じて驚搐するなり。」
とあり、病位は「心」「心胃」、病邪は「熱」「熱痰」そして治法が「下法」との情報が揃えば、急驚風の理解がすすむというものです。
肝有風熱 ≪ 五臓相勝軽重 ≪ 変蒸 ≪ 発搐 ≪ 急驚 ≫ 慢驚 ≫≫≫ 小児薬方
鍼道五経会 足立繁久
原文 『類證注釋錢氏小兒方訣』急驚
■原文 『類證注釋錢氏小兒方訣』急驚 第十一
因聞大聲、或大驚而發搐、發過則如故、此無陰也。當下、利驚丸二十主之。小兒急驚者、本因熱生於心、身熱面赤引飲、口中氣熱、大小便黄赤、劇則搐也。蓋熱甚則風生、風属肝。此陽盛陰虚也。故利驚丸二十主之。以除其痰熱。不可與巴豆及温藥大下之。恐搐。虚熱不消也。小兒熱痰客於心胃。因聞聲非常、則動而驚搐矣。若熱極、雖不因聞聲及驚、又自發搐(如故、疾止也。急驚為心火、熱属陽、故無陰也。慢驚因脾虚、属陰、故無陽也。引飲口渇喜飲也。劇、竭戟反、猶甚也)。
TOP