風温と潮熱が相似することについて
本記事では「風温潮熱相似」の章では、小児の種々の熱型について紹介されています。タイトルでは「風温」と「潮熱」と区別しているようにみえますが、実際には「潮熱」「壮熱」「風熱」「温熱」の四型に分類しています。子どもは発熱しやすく、且つ高熱化しやすい体質をもちます。小児はりを実践する鍼灸師にとって、この熱病パターンを知っておくのも必須の知識といえるでしょう。

※画像は『類証注釈銭氏小児方訣』京都大学付属図書館より引用させていただきました。
※以下に書き下し文、次いで足立のコメントと原文を紹介。
※現代文に訳さないのは経文の本意を損なう可能性があるためです。口語訳は各自の世界観でお願いします。
『類証注釈銭氏小児方訣』 風温潮熱相似
書き下し文・『類証注釈銭氏小児方訣』 風温潮熱相似 第十五 (信古按ずるに、潮熱の下、一本には「壮熱」の二字あり)
潮熱(胃熱也)は、時を間(へだ)てて発熱し、時が過ぎて即ち退く。日来たり、時に依りて熱を発す。此れ将に驚を発しせむる也(地骨皮散(九十八)、之が主る)。
壮熱(心熱也)は、一向(ひたすら)に熱して已まず。甚しきときは則ち驚癇を発する也(導赤散(八)之を主る)。
風熱(肝熱也)は、身熱而して口中氣熱、風証あり(人参生犀散(九十九)之を主る)
温熱(脾熱也)は、但だ温而して熱せざる也(瀉黄散(十)之を主る)。
小児の発熱について
陽体といわれる小児体質では、発熱は頻繁におこる病といえます。前章の「傷風」でも熱症状はみられますし、「傷寒」も同様、さらには「変蒸」においても”ある意味生理的な発熱”が生じます。
また熱症状を繰り返したり、慢性化させることで、脾胃を傷り、さらには慢驚風にまで至るという病理ストーリーもあります。
それだけに、小児の熱症状を鑑別・治療するということは、非常に緻密な理論と精密な鑑別眼を要するといえるです。
本章においては、「潮熱」「壮熱」「風熱」「温熱」の四つの熱型に分類しています。それぞれ「潮熱=胃熱」「壮熱=心熱」「風熱=肝熱」「温熱=脾熱」と特徴的な症状、臓腑に当てはめて分類されています。
胃熱と脾熱とはどのような違いがあるのか?
胃熱に対する処方は地骨皮散が示され、脾熱に対しては瀉黄散(瀉脾散)が指示されています。
瀉黄散の構成生薬と、地骨皮散の構成生薬をそれぞれ比較することで、胃熱と脾熱の違いもみえてくるのではないか、とも思います。
以下に地骨皮散の処方を引用しておきます。同様に、風熱(肝熱)を理解するためにも、人参生犀散も付記しておきます。
九十八 地骨皮散 虚熱潮作するを治す、及び傷寒壮熱余熱を治す。
知母 柴胡 甘草(炙) 人参 地骨皮 赤茯苓 半夏(各等分)
右(上記)を末と為し、毎服二銭。姜五片、水一琖、八分に煎じる、食後に温服す。児によって量りて加減す。
九十九 人参生犀散 小児の時氣、寒塞、咳嗽、痰逆、涎、喘滿、心忪驚悸、臓腑或いは秘し或いは瀉するを解する。胃を調え食を進む。又、一切の風熱、(又は)尋常に涼薬を服して即ち瀉し而して食の減る者を主る。
前胡(芦を去、八銭) 杏仁(皮尖を去る、日に乾して末と為す) 桔梗(各五銭) 人参(三銭) 甘草(炙、二銭)
右(上記)を将に四味をして末と為し、後に杏仁末を入れ匀とする、毎服二銭。水一盞を同じく煎じて食後に温服する。
■ 原文
九十八 地骨皮散 治虚潮作、及傷寒壯熱餘熱。
知母 柴胡 甘草(炙) 人參 地骨皮 赤茯苓 半夏(各等分)
右為末、毎服二錢。姜五片、水一琖、煎八分、食後温服。量兒加減。
九十九 人參生犀散 解小兒時氣、寒塞咳嗽、痰逆涎喘滿、心忪驚悸、藏府或秘或瀉、調胃進食、又主一切風熱、服尋常涼藥、即瀉而減食者。
前胡(去芦八錢) 杏仁(去皮尖、日乾為末) 桔梗(各五錢) 人參(三錢) 甘草(炙二錢)
右將四味為末、後入杏仁末匀、毎服二錢、水一盞同煎温服食後。
急驚 ≪ 慢驚 ≪ 五癇 ≪ 傷風 ≪ 風温潮熱相似 ≫ 傷寒瘡疹同異
鍼道五経会 足立繁久
原文 『類證注釋錢氏小兒方訣』風温潮熱相似
■原文 『類證注釋錢氏小兒方訣』風温潮熱相似 第十五
風温潮熱相似第十五(信古按潮熱下一本有壯熱二字)
潮熱者(胃熱也)、時間發熱、過時即退、来日依時發熱、此將發驚也(地骨皮散主之九十八)。
壯熱者(心熱也)、一向熱而不已。甚則發驚癇也(導赤散主之八)。
風熱者(肝熱也)、身熱而口中氣熱、有風證(人參生犀散主之九十九)
温熱者(脾熱也)、但温而不熱也(瀉黄散主之十)。
TOP