傷寒瘡疹同異『小児薬証直訣』より

傷寒瘡疹同異について

本章は「傷寒と瘡疹の異同」について論じています。瘡疹とは、その名を一見すると皮膚疾患の一部として読まれるかもしれませんが、この時代の小児科医書では「瘡疹」とは痘瘡を意味することが多いです。そして本章タイトルにあるように「傷寒瘡疹同異(傷寒と瘡疹の異同を論ずる)」ですから、「瘡疹」が単なる皮膚疾患ではないことは明白です。ここは「瘡疹=痘瘡」として読み進めるべきでしょう。


※画像は『類証注釈銭氏小児方訣』京都大学付属図書館より引用させていただきました。

※以下に書き下し文、次いで足立のコメントと原文を紹介。
※現代文に訳さないのは経文の本意を損なう可能性があるためです。口語訳は各自の世界観でお願いします。

『類証注釈銭氏小児方訣』 傷寒瘡疹同異

書き下し文・『類証注釈銭氏小児方訣』 傷寒瘡疹同異 第十六

傷寒、男は体重く面黄、女は面赤く、喘急し寒を憎む。口中氣熱、呵欠頓悶、項急する也。
瘡疹するときは則ち顋は赤く燥す、多く噴嚔し、悸動、昏徤、四肢冷える。
傷寒は当に之を発し散ずべし。

疹(瘡疹)を治するには温平を行う。大熱ある者は、宜しく毒を解すべし。余は瘡疹の條に見る。

小児の傷寒について

本章ではとくに「傷寒」病について、その特徴が論じられています。

意外に思うのが、本書『小児薬証直訣』において「傷寒」について説かれていうのは、この章のみ。どちらかというと、前章までの「傷風」「風温」に重きを置いて解説されています。これもまた大人とは違う小児特有の体質ゆえの病態といえるでしょう。

また、男女差で特記される症状別も興味深いです。「男児は体重く面黄」「女児は面赤く、喘急し寒を憎む」との違いが記されていますが、そのセオリーはわかりません。

瘡疹(痘瘡)について

続く条文には、瘡疹(痘瘡)に関する情報が記されています。
「瘡疹のときは顋赤く燥き、多く噴嚏し、悸動、昏徤、四肢冷える」とあります。
痘瘡であるため、感染症であることは間違いありません。その初期症状は、傷寒と酷似しています。但し、病性としては熱勢が強く、その見極めが一大事となります。また、瘡疹の熱性の強さは「面赤(傷寒)」と「顋赤燥(瘡疹)」の違いからも察せられると思います。

傷寒の治法・瘡疹の治法

傷寒の治法は発散すべし、とあり、傷風と同様の治法なのでしょうか…。この点に関しては詳しくは記されていません。本書の情報だけでは、傷風の治法を頼りに推察するしかなさそうです。(他書の情報を頼るのも一つの手でしょうね。)
そして、瘡疹(痘瘡)の治法としては「治疹(瘡疹)行温平、有大熱者宜解毒、余見瘡疹條。」とあります。詳しくは瘡疹候をみるとしましょう。

急驚慢驚 ≪ 五癇 ≪ 傷風風温潮熱相似 ≪ 傷寒瘡疹同異 ≫ 瘡疹候 ≫ 吐瀉 ≫ 腎祛失音

鍼道五経会 足立繁久

原文 『類證注釋錢氏小兒方訣』傷寒瘡疹同異

■原文 『類證注釋錢氏小兒方訣』傷寒瘡疹同異 第十六

傷寒瘡疹同異第十六
傷寒、男體重面黄、女面赤、喘急憎寒、口中氣熱、呵欠頓悶、項急也。瘡疹則顋赤燥、多噴啑、悸動昏徤、四肢冷、傷寒當發散之。治疹行温平、有大熱者、冝解毒、餘見瘡疹條。

 

 

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