『小児薬証直訣』について
「目は口ほどに物を言う」という諺があります。目には多くの情報があらわれることを指す言葉です。これは望診にも通用するものです。伝統医学にも目を中心とした望診法が伝えられています。前回の顔面部の望診に対し、今回は目部における望診を紹介しましょう。
※画像は『(銭氏)小児直訣』京都大学付属図書館より引用させていただきました。
※以下に書き下し文、次いで足立のコメントと原文を紹介。
※現代文に訳さないのは経文の本意を損なう可能性があるためです。口語訳は各自の世界観でお願いします。
『校註銭氏小児直訣』 目部症
書き下し文 『校註銭氏小児直訣』 目部症
目の内の色赤き者は、心実熱、導赤散。淡紅の者は心虚熱、生犀散。
青の者は肝実熱、瀉青丸。淡青の者は肝虚熱、地黄丸。
黄の者は脾実熱、瀉黄散。微黄の者は脾虚熱、益黄散。
白而して混の者は肺実熱、瀉白散。
目に睛光の無き者は腎虚也、地黄丸、之を主る。
薛按ずるに、目は五臓の精華、各々に主る所有り。
白睛は肺に属す、黒睛は肝に属す、上下眼胞は脾に属す、紅脈は心に属す、瞳人は腎に属する。此れ五臓の正色也。
然るに、白睛は本(もと)は肺に属す、而して紅色の見(あらわ)れるは、此れ心尅肺の賊邪也。
青色の見われるは、此れ肝乗侮の微邪也。
黒色の見われるは、此れ腎乗肺の実邪也。
黄色の見われるは、此れ脾乗肺の虚邪也。
余りは此れに倣え。
銭乙が伝えた目部望診
銭氏小児直訣の本文では古の諺にある「目内色赤者心實熱…」とあるように、「目の内」を望診部位としています。
「目の内」とは、内眥と黒目の間にある白い部分(白睛)の色を診ています。
一般的にも、白睛の部分に血脈が強く現れたり(充血)、黄色が強く現れたり(例えば黄疸)することは知られています。
しかし、白睛のベースが白だからこそ、氣色を見やすい部位でもあるのです。
子どもたちの目をみていても、この白睛の部分に様々な情報が現われていることは実際によくみられます。
薛己が伝える目部望診
薛氏の註文には、目内(白睛)ではなく、五輪の診法を記しています。
五輪とは、肉輪・血輪・氣輪・風輪・水輪です。
肉輪とは、上下眼瞼部にあたり、本文では「上下眼胞」と記載されています。
血輪とは、内眥外眥の血脈であり、本文では「紅脈」と記載。
氣輪とは、白目の部分で、本文では「白睛」と記載。
黒輪とは、黒目の部分で、本文では「黒睛」と記載。
水輪とは、瞳孔の部になり、本文では「瞳人」と記載。
それぞれの部位で、五臓を診る診法になります。
本文では「白睛」を例に挙げていますが、やはり白色がベースにあると、五色の変を捉えやすいです。
「肉輪」や「黒輪」「水輪」となると、五色以外の情報で判断することになります。
序文 ≪ 小児脈法 ≪ 面部症 ≪ 目部症 ≫ 五臓所主 ≫
鍼道五経会 足立繁久
原文 『校註錢氏小兒直訣』目部症
■原文 『校註錢氏小兒直訣』目部症
目内色赤者心實熱、導赤散。淡紅者心虚熱、生犀散。青者肝實熱、瀉青丸。淡青者肝虚熱、地黄丸。黄者脾實熱、瀉黄散。微黃者脾虚熱益黄散。白而混者肺實熱、瀉白散。目無睛光者腎虚也、地黄丸主之。
薛按、目者五臓之精華、各有所主。白睛屬肺、黑睛屬肝、上下眼胞屬脾、紅脉屬心、瞳人屬腎。此五臓之正色也。然白睛本屬肺而見紅色此心尅肺之賊邪也、見青色此肝乗侮之微邪也、見黑色此腎乗肺之實邪也、見黃色此脾乗肺之虚邪也。餘倣此。

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