Contents
虎口三関脈診について
虎口三関脈診とは、乳幼児の示指(食指)の脈紋をみる診法です。脈診とは言いますが、実際には望診になるのではないかと思います。本書「虎口三関脈症図」では、内容としてはシンプルなものですが、虎口三関脈診に関する基本的なことが記されています。
虎口三関脈診とは示指腹の脈紋をみる診法です。なぜ脈紋をみるのかというと、乳幼児の身体は未発達であるため、寸口部の脈(橈骨動脈)を脈診に用いるには、まだ小さすぎます。そのため示指にあらわれる脈紋を診察の指標とするのですね。
示指にある三関を(示指基部から末端に向かって)それぞれ“風関”・“氣関”・“命関”と呼びます。を通る脈紋の“長さ(三関の部位)”、“色”などを診る診法です。詳しくは本文をみてみましょう。
※画像は『(銭氏)小児直訣』京都大学付属図書館より引用させていただきました。
※以下に書き下し文、次いで足立のコメントと原文を紹介。
※現代文に訳さないのは経文の本意を損なう可能性があるためです。口語訳は各自の世界観でお願いします。
『校註銭氏小児直訣』 附 虎口三関脈症図
書き下し文 『校註銭氏小児直訣』 附 虎口三関脈症図
『水鏡訣』に云く、陰陽運合して男女の成形、已に分かる。九竅四肢乃ち生じ、五臓六腑の部位各々逆順を分かちて、明じて難し。若し寸口の浮沈に憑けば、必ず乃ち孩子に於いては横亡す。須らく虎口を明して、三関を弁別し、用薬を消詳にして必ず差誤無し。
未だ三歳に至らずは虎口三関を看る。若し脈、風関に見れば尚お治し易し。氣関に交わるときは則ち治し難し。命関に交わるときは死症と為す。
又、當に其の色を弁ずべし。
獣驚の如きは三関は必ず青なり、水驚のときは三関は必ず赤し、人驚は三関必ず黒。
若し紫色ならば瀉痢を主り、黄色は是れ雷驚なり。
三関の脈が通度せば乃ち極驚の症、必ず死す。
紋有り、或いは青く、或いは紅、線の直なる如きの者は是れ母食が脾を傷る。左右一様なる者は是れ驚積斉発す。
紋に三條あるは肺傷風痰、或いは齁䶎声を主る。青は傷寒及び嗽を主り、紅は泄瀉を主り、黒有るは相い兼ねること下痢を主る。紅多きは白痢、黒多きは赤痢、紫有るは相い兼ねる。
虎口の脈の乱れ、乃ち氣不和也。
蓋し脈紋に五色有ること見れば、其の病の甚しきに由る。色能く変を加えて純黒に至る者は得て治すべからずなり。
附。
乳幼児の診察は虎口三関を診るのか?
「未至三歳看虎口三関」とあるように、三歳未満の患児に対しては、寸口脈ではなく虎口三関脈診を頼りとします。
なぜ虎口三関の脈紋を診るのか?
その理由として、冒頭にも触れたように、寸口脈を診るには、乳幼児の寸口脈は小さすぎるという問題点があります。そのため、寸口部に関係する、示指(虎口三関)の脈紋をみるのです。
では、寸口部と示指とはどのような関係があるのでしょうか。その関係性は経絡流注をみると明らかです。
寸口部は手太陰肺経に属します。示指(虎口三関)は手陽明大腸経に属します。
両経絡の流注をみると、寸口部にある列缺穴から、手陽明大腸経に向かって絡脈が流れていきます。その絡が風関・氣関・命関の三関を通りつつ、各部位に情報を表わすというセオリーだと思われます。
虎口三関脈診は三関と色を診る
本文では、脈紋が風・氣・命のいずれに現れるかによって、易治・難治・死症であるかを鑑別しています。
他にも、「青」「赤」「黒」「紫」「黄」「紅」…などの色を以て鑑別しています。
この三関の部と色の他にも、虎口三関脈診では脈紋の“形”も診断の材料にしています。本文では「如線直者」とあるように、「脈紋が真っ直ぐ線のように走る場合は、母親の飲食が悪いために起こる不調」といったように、母親経由の病理を説いています。
この一文は、脈紋の形状(如線直者)によって診断するという点、また母親の食生活が乳児の健康に影響を与えるという病理、といった興味深い情報が記されています。
ちなみに、脈紋に関する詳しい情報は薛己による小児科医書『保嬰撮要』も参考になります。
面部症 ≪ 目部症 ≪ 五臓所主 ≪≪≪ 面部三指診候図 ≪ 虎口三関脈症図 ≫
鍼道五経会 足立繁久
原文 『校註錢氏小兒直訣』附虎口三關脉症圗
■原文 『校註錢氏小兒直訣』附虎口三關脉症圗
水鏡訣云、陰陽運合男女成形已分九竅四肢乃生五臓六腑部位各分逆順難明、若憑寸口之浮沈、必乃横亡於孩子須明虎口辨別三關消詳用藥必無差誤未至三歳看虎口三關若脉見風關尚易治交氣關則難治、交命關爲死症。又當辨其色如獸驚三關必青、水驚三關必赤、人驚三關必黒。若紫色主瀉痢、黄色是雷驚。三關脉通度乃極驚之症必死。有紋或青或紅。如線直者是母食傷脾左右一様者是驚積齊發紋有三條主肺傷風痰、或齁䶎聲青主傷寒及嗽紅主泄瀉有黒相兼主下痢、紅多白痢黒多赤痢有紫相兼。虎口脉亂乃氣不和也。蓋脉紋見有五色由其病甚色能加變至於純黒者不可得而治矣。附。

TOP