浮沈分表裏歌『幼幼集成』より

『幼幼集成』に記される脈紋の浮沈について

本記事では『幼幼集成』の浮沈分表裏歌の節を紹介します。病位を見定めることは鍼灸においても、湯液(漢方薬)においても、その重要性は同じです。
とくに本節では、急性熱病を例に挙げて、表裏鑑別の重要性を説いています。熱病の治療において、病位を診誤まることは誤治だけでなく、さらに病態を悪化させることになります。

そのため小児診法において、病位を見定めるための情報を得ようを、先達の医家は大いに工夫を重ねたのですね。そんな歴史を感じる内容であります。

※画像は『鼎鍥幼幼集成』国書データベースより引用させていただきました。
※以下に書き下し文、次いで足立のコメントと原文を紹介。
※現代文に訳さないのは経文の本意を損なう可能性があるためです。口語訳は各自の世界観でお願いします。

『幼幼集成』 浮沈分表裏歌

書き下し文 『幼幼集成』 浮沈分表裏歌

指紋(脈紋)、何故に乍然として浮び、邪は皮膚に在りて未だ愁うるに足らず、腠理の通ぜざるを表証と名づく、急ぎ疎解し之を汗する投(投薬)を行う。

此の紋(脈紋)は太淵の脈(寸口脈)と相い通ず。凡そ外邪有るときは、太淵脈は浮、此の紋も亦(また)浮。
蓋し邪が皮毛腠理の間に在る、故に指紋も亦(また)外に顕露す。之を表証と謂う。速やかに宜しく疎散すべし
。
其の皮毛を啓き、其の腠理を開き、邪をして随微汗に随いて解せしむ。一匕にて功を成す、何を嫌いて投ぜざらん哉。

忽爾として関紋、漸漸に沈むは、已に裏に入り病は方(まさ)に深きことを知る。
風薬を將(もちい)て軽々に相い試すこと莫れ。須らく陽明裏証に向かいて尋ぬべし。

指紋(脈紋)沈に見れば、邪は裏に入ることを知る。但だ浅深の別あり。
若し往来寒熱すれば、指紋は半ば沈なり。尚(なお)陽明胃経に在り、治するに宜しく解肌すべし。
若し外証壮熱不已なれば、指紋極めて沈なり。
已に陽明胃腑に入れば、速やかに宜しく攻下すべし。
庸妄、其の身熱を見て、猶(なお)風薬を以て之を治するが如きは、蓋し病が内に在りて其の外を治す、其の治に非ざる也。
ただ病邪服せざるのみならず、適(まさ)に以て燥其の陰血を燥かすに足り、愈(いよいよ)其の困を増すのみ。

虎口三関脈紋によって病位を見極める

陳氏は虎口三関脈診について相当の研究をしてきたのでしょう。非常に力強い言葉で、寸口脈に比肩する診法として、その理を述べています。

「此紋与太淵脈相通凡有外邪、太淵脈浮、此紋亦浮、蓋邪在皮毛腠理之間、故指紋亦顕露於外、謂之表証。」
太淵脈、すなわち寸口脈と同じ情報が、虎口三関の脈紋に現れる。なぜなら虎口三関脈紋と寸口脈は相い通じているからだ…という理論を展開しています。
そのため、脈紋の浮沈によって、病位の表裏を鑑別することも可能である…と力説しています。

本章で説かれるのは、急性熱病における表証・裏証の違いです。小児に限らず、急性熱病の表裏の違いは、その治法(治療方針)が大きく異なります。
こと小児においては、治療法・投与する方剤が変われば、一気に悪化してしまい、急速に危証に転ずる可能性が極めて大です。それ故に同じ熱症でも、脈の浮沈によって、病位(表証・裏証)を見極める必要があるのです。

鍼道五経会 足立繁久

指紋晰義 ≪ 指紋切要 ≪ 三関部位歌 ≪ 浮沈分表裏歌 ≫ 紅紫弁寒熱歌 ≫ 淡滞定虚実歌 ≫ 紋形王病歌 ≫ 小児脈法
… ≫≫ 面部形色賦 ≫ 弁色分註 ……

原文 『幼幼集成』浮沈分表裏歌

■原文 『幼幼集成』浮沉分表裏歌

指紋何故乍然浮、邪在皮膚未足愁、腠理不通名表證、急行疎解汗之投
(此紋與太淵脈相通凡有外邪、太淵脈浮、此紋亦浮、葢邪在皮毛腠理之間、故指紋亦顕露於外、謂之表證、速宜疎散、啓其皮毛、開其腠理、使邪随微汗而解、一匕成功、何嫌而不投哉。)

忽爾關紋漸漸沉、已知入裏病方深、莫將風藥輕相試、須向陽明裏證尋
(指紋見沉、知邪入裏但有淺深之別、若徃来寒熱、指紋半沉、尚在陽明胃經、治宜解肌、若外證壯熱不已、指紋極沉、已入陽明胃府、速宜攻下、庸妄見其身熱、猶以風藥治之、葢病在内治其外、非其治也、不特病邪不服、適足以燥其陰血、愈増其困耳。)

○紅紫辨寒熱歌
身安定見紅黄色、紅艶多從寒裏得、淡紅隱隱本虚寒、莫待深紅化爲熱。
(神氣泰寧‥‥)。

 

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