二十四節気について・その1

医学を理解するために暦を知る

古代中国医学を理解するためには、暦学(天文学)をも知っておく必要があります。天文学といっても、西洋天文学や近代天文学ではありません。当時の天文学(暦学・暦法)を(ある程度は)知っておく必要があると思うのです。

例えば「天人相応」「天人合一」という言葉、ここでいう「天」とは、具体的には天地の運行、つまりは日月星辰の動きが含まれています。もちろん、漠然とした大いなる存在として「天」という表現を用いている場合もあります。
しかし、文脈によっては古代中国の暦法を意味する場合もあります。

例えば『素問』六節蔵象論などに記される「天」もその一例として挙げることができます。
「岐伯曰、五日謂之候、三候謂之氣、六氣謂之時、四時謂之歳、而各従其主治焉。」
この一文にある「氣」とは日数を意味します。「五日を候とし、三候(3×5日)を氣と謂う。」つまり“一氣は15日”を意味するのです。この「一氣」が、実は現代に生きる私たちにも身近な言葉として使われています。それが二十四節気です。

二十四節気は、古代中国に成立した暦法用語で、当時は二十四氣とも呼ばれていました。24×15日=360日で一年となります。(もちろん一年は365日なので、微調整は必要ですが)
ということで、当時の二十四節気を知るべく、以下に基本的なことをまとめてみました。

二十四節気を定める2つの法

二十四節気を定める暦法に、平気法・定気法の2つがあります。前者は古代中国にて用いられた法、後者は清代の暦に実施・採用された法です。なるほど、平気法・定気法の“気”も、15日を意味するのですね。

平気法について

まずは原始的・初期の二十四節気の算出方法です。

古代の人々は、二十四節気を制定するために、“一太陽年を機械的に二十四等分”し、それぞれに名称を付けました。
ここでいう“機械的に二十四等分”するとは、太陽の運行を無視して、一年の長さを24等分する算出法をいいます。この方法を平気法(恒気法・常気法)と呼びます。

古代中国では、前漢代の暦には二十四節気が用いられていたとあります。おそらくはこの時の暦法は平気法なのでしょう。

もう一つの法である定気法が実際の暦に導入されるのは、ずいぶんと後のようです。
中国では清代の時憲暦(1645年~)から、日本では天保暦(1844年)から定気法が採用されたとあります。

しかし、定気法の必要性を唱えた人物は6世紀のころに存在していたようです。
須賀 隆氏の「定気法導入の歴史」によると、隋代の劉焯が定気法の必要性を提案し、皇極暦を編んでいたということです。

・紀元前104 太初暦の採用
・92年頃          後漢の賈逵が月行遅疾を発見
・6世紀後半 北斉の張子信が日行盈縮を発見
・6世紀末  隋の劉焯が皇極暦で定気を導入したが実施されず
・619年   戊寅暦の採用・定朔平気の初め
……
・1645年       時憲暦天聡戊辰元法(暦元1628年)の採用・定朔定気法の初め

  (須賀 隆「定気法導入の歴史」より)

…と、あります。このようにしてみると『素問』『霊枢』『難経』の時代は、平気法をもとにした二十四節気とみてよいと思います。

では、次に定気法について調べてみましょう。

定気法について

この平気法に対し、定気法(実気法)という法があります。定気法とは、“太陽の視黄経を角度で24等分”する方法です。(暦Wiki「二十四節気の定め方」より)

平気法と定気法の比較は、前者は一年という“時間を24等分”したものであるのに対し、後者は太陽の黄経という“角度を24等分”したものと対比できるでしょう。

太陽の視黄経を24等分するとはどういうことでしょう?
【暦Wiki「二十四節気の定め方」】では、「黄道面を真上 (地球の北極があるほう) から見たときの、地球の自転軸の向きと太陽の位置関係」を24等分すると説明してくれています。

平気法の説明にあった「太陽の運行を無視して」というのは、この観点が平気法に備わっていないことを指しているのでしょう。

平気法と定気法の違い

単純に考えれば、一年を24区分する平気法のほうがシンプルで分かりやすく感じるかもしれません。ではその違いはどこにあるのでしょうか?

ここで宇宙からの視点で太陽と地球をみてみましょう。

地球は太陽の周りを周回(公転運動)するとき、正確には正円を描くのではなく楕円運動をしています。そしてその中心点に太陽はなく、(わずかでありますが)太陽の位置は楕円の中心点よりもズレた場所にあります。

そのため「夏と冬の日数は同じにならず、北半球では冬の期間より夏の期間のほうが長くなります。」とあります。(暦Wiki「二十四節気の定め方」より)

公転軌道が楕円になると、次のことが起こります。まず太陽と地球の距離が、一年を通じて一定ではなくなってしまいます。そして、太陽の移動速度が速くなったり遅くなったりする現象が起こります。これを日行盈縮(えいしゅく)といいます。太陽との距離が近いと日行は早くなり、太陽との距離が遠いと日行は遅くなります。

このようにみると、単純に一年を24区分する平気法では誤差が生じることがわかります。その誤差を修正するために定気法が考案されたのです。

ここで一旦まとめておきたいことは以下の点です。

二十四節気は太陽を基準とする

・平気法・定気法いずれの算出法にせよ、太陽をベースに導き出された暦法であることには変わりはありません。

➢ 平気法は、一年という“太陽の周りを地球が一周する(公転運動)”を24等分した法であり、
➢ 定気法は、太陽の視黄経を24等分する法であります。

つまりは二十四節気は、太陽を基準として、一年の動き・変化を観測する法ということがいえます。
この“太陽を基準”とするということに大きな意味があると考えています。

二十四節気の名称

さて、最後に(今さらですが)二十四節気の用語・名称についても整理しておきましょう。

名称よみかた日にち
立春りっしゅん2月4日ごろ
雨水うすい2月19日ごろ
啓蟄けいちつ3月5日ごろ
春分しゅんぶん3月21日ごろ
清明せいめい4月5日ごろ
穀雨こくう4月20日ごろ
立夏りっか5月5日ごろ
小満しょうまん5月21日ごろ
芒種ぼうしゅ6月6日ごろ
夏至げし6月21日ごろ
小暑しょうしょ7月7日ごろ
大暑たいしょ7月23日ごろ
立秋りっしゅう8月8日ごろ
処暑しょしょ8月23日ごろ
白露はくろ9月8日ごろ
秋分しゅうぶん9月23日ごろ
寒露かんろ10月8日ごろ
霜降そうこう10月24日ごろ
立冬りっとう11月7日ごろ
小雪しょうせつ11月22日ごろ
大雪たいせつ12月7日ごろ
冬至とうじ12月21日ごろ
小寒しょうかん1月5日ごろ
大寒だいかん1月21日ごろ

(国立国会図書館「日本の暦」を参考にした)

以上、二十四の節気に一年が区分されています。
各節気の間の日数は、平気法だと15日ごとに区分されています。しかし、定気法だと各節気の間には14~16日の変動があるそうです。

次記事『二十四節気について・その2』に続きます。

鍼道五経会 足立繁久

おすすめ記事

  • Pocket
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントを残す




Menu

HOME

TOP