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9月のゴケイメシは松茸と百合
9月の講座【医書五経を読む】の講座後の宴では、松茸ごはんと百合(ゆり根)をいただきました。
松茸はおつとめ品(ナント!¥350)でしたが、たくさんの松茸を入手できました。
写真:中国産マツタケ、お値段ナント350円!
写真:メスティンでマツタケ料理を試みるも…味が濃い(濃すぎる?)ため、保存してマツタケご飯にしましょう…と。
写真:マツタケご飯を土鍋で炊き上げました!
写真:マツタケしかない!マツタケご飯・おかわり自由です。
講座メンバーの体調が思わしくなく、動悸・不眠・心氣不安がみられたので、ユリ根を献立にチョイスしました。
写真:ユリ根(百合)、ユリ根の塊り(右)と鱗茎を一つ一つバラした状態(左)
写真:ユリ根(百合)ホイル焼き・バター醤油風味の出来上がり!
マツタケたっぷりの松茸ご飯は、もうマツタケしかない状態。4合半ほどのお米で炊いたので、おかわり自由!と言っても良いほどの量でした。
マツタケ(松茸)の食物本草情報
まずはシンプルで読みやすい『日養食鑑』(石川元混 著 1819年)からのマツタケ情報です。
『日養食鑑』に記されるマツタケ(松茸・松蕈)の効能
まつだけ 松蕈
甘平、毒なし。
小便濁りて禁(こらえ)ざるを治す。
■原文
松蕈
甘平、毒なし。
小便濁て禁ざるを治す。。
とあります。「小便濁、禁(こらえ)ざる」…尿路感染症・結石・性病???などが頭に浮かびますね。マツタケの効能にそのような薬能があるとは?
とはいえ、氣味の甘平であることから考えると、清熱能はなく、となると炎症に効くとも思えないですね。
抗菌作用に近いようなものが感染症によいのか?はたまた結晶化してしまった結石になんらかの作用があって、なんか良いのか…想像の域を出ませんね。
次に名古屋玄医の『閲甫食物本草』をみてみましょう。
『閲甫食物本草』に記されるマツタケ(松茸・松蕈)の効能
氣味甘平、無毒。
陳仁王が『菌譜』に曰く、溲濁不禁(溲濁りて禁ざる)を治する、之を食して効あり。又曰く、凡そ物(松蕈)は松より出づるは、(これを)愛すべからざる者は無し。
五月松蕈(さまつたけ) 閲甫が曰く、雖陳仁王は『菌譜』に、松蕈は松陰に生じ采(採)るに時無しと曰うと雖も、其れが生ずるは秋に尤も多し、則ち五月(に採れる松茸)も亦た“時ならず”と謂うべし。不時(時ならず)は食うべからず。之を食えば、病む者間(まま)有り。我、之(このような事例)を見ること多し。
○『入門』に曰く、地漿水は諸々の菌毒を解する。
○『五雑俎』に曰く、寿靖壬子(の歳)四月、金陵に井皮竹という者あり、其の家の竹林の中に一きわ大なる菌を得。烹(煮)て之を数口食して、皆な毒死す。又、張椿という者あり、瓜の種を業と為す。圃中に一瓜、極大なる者を留む。以て自ら奉ず。方(まさ)に両片を食して即ち死する。其の氣を聞ぐ者も亦た病む。乃ち知らんぬ。常と異なるの物、軽食するべからず。
■原文
氣味甘平無毒。
陳仁王、菌譜曰、治溲濁不禁、食之有効。又曰、凡物松出、無不可愛者。
五月松蕈 閲甫曰、雖陳仁王、菌譜曰、松蕈生松陰、采無時、其生秋尤多、則五月亦可謂不時、不時不可食、食之、病者間有。我見之多。○入門曰、地漿水解諸菌毒。○五雑俎曰、壽靖壬子四月金陵有井皮竹者於其家竹林中得一大菌。烹食之數口、皆毒死。又有張椿種瓜為業、圃中留一瓜極大者以自奉。方食兩片即死。其氣聞者亦病。乃知異常之物、不可輕食。
とあります。
「溲濁不禁」を挙げ、「食之有効」と、その効能はお墨付きのようです。その機序や(尿濁の)証の鑑別は不明なままですが…。
「凡物松出、無不可愛者。」とあり、今も昔もマツタケは人気があったようですね。
また興味深い情報があります。五月松茸(サマツタケ)です。調べてみると「早松茸(サマツタケ)」と呼ばれる松茸が現在も流通しているようですね。5月の時期でも、特定の気象条件(気温・湿度・風など)が整うとマツタケが生えてくるそうです。
とはいえ、名古屋玄医はいくつかの事例を挙げ、「常とは異なるものを軽々しく食うべからず」と。慎重な姿勢をとっています。まぁ、茸だけにそのような提言をするのも医家の姿勢として当然かもしれません。とはいえ挙げられた事例は「常と異なるもの」とはいえ、大きさ・サイズが異常なのであって、時期外れの事例がないのが、チョット五月松茸(サマツタケ)には該当するのか?というと微妙な判断ですけどね。
『公益本草大成』にあるマツタケ(松茸・松蕈)の効能
甘平。益氣治風破血。松蕈は治便濁不禁。
○蕈類多。惟以松蕈宜食。陳仁王曰、松蕈生松陰、凡物松出、無不可愛者。菌蕈有毒者、多勿𡚶食。
■原文
香蕈
甘平。益氣治風破血。松蕈は治便濁不禁。
○蕈類多。惟以松蕈宜食。陳仁王曰、松蕈生松陰、凡物松出、無不可愛者。菌蕈有毒者、多勿𡚶食。
上記の引用は『公益本草大成(和語本草綱目)』からのものです。
「香蕈」の効能(益氣治風破血。)の付記として松蕈(松茸)の効能が記されています。は「便濁不禁を治する」というのは、これら三書共通の薬能のようですね。
マツタケのシーズン中に「尿濁・排尿痛」に見舞われた方は一度お試しあれ!
次にユリ根の食物本草能です。ユリ根といえば、茶わん蒸しを思い浮かべる人が多いでしょう。クックパッドなどのレシピサイトをみると、ユリ根の蒸し料理もしくは炒め料理が多かったですね。(あとは炊き込みご飯も)。
軽く炒めるとシャキシャキ食感、さらに加熱したり、蒸すことなどでホクホクとした食感に変わるようです。今回のゴケイメシではホイル焼きを試みました。
『日養食鑑』における百合(びゃくごう)情報
「胸肺を寛(ゆる)くし、肝鬱を開き、中を補」う機序は、鎮咳に有効に働きそうです。また「胸肺を寛く」することで、安神寧心にも良い影響を与えると思われますね。
『公益本草大成』に記されるユリの根(百合)の効能
甘平
傷寒の百合病を治し、心腹を利し、嗽を止め、二便を通じ、心胆を安んじ、氣逆を下す。
白花の者(百合)は薬に用う。
■原文
甘平
治傷寒百合病、利心腹、止嗽、通二便、安心胆、下氣逆。
白花者用藥。
「心腹を利し」「心胆を安んじ」「氣逆を下す」は、心神を安定させる方向に効いてくれますね。とくに心胆を安んずる効は、心胆・経糸の関係を平にする薬能を連想します。
鍼道五経会 足立繁久
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