7月のゴケイメシはショウガご飯

7月のゴケイメシはショウガご飯

今回のゴケイメシは“ショウガご飯”と“焼き天ぷら”をいただきました。年々油っこいものがツラくなるお年頃、今回のゴケイメシは「胃腑にやさしく」がテーマなのです。
ですので、“焼き天ぷら”は初の試みですが油少なめで胃にやさしく、そしてショウガたっぷりの“ショウガご飯”もまた胃にやさしい献立です。
そして本記事の食物本草は「生姜(ショウガ)」についての紹介です。


写真:土鍋で炊いたショウガご飯


写真:ショウガご飯に三つ葉投入!


写真:ショウガご飯に焼き天ぷらをドン!

ショウガ(生姜)の食物本草情報

まずはいつもの読みやすい『日養食鑑』(石川元混 著 1819年)から。

『日養食鑑』に記されるショウガ(生姜)の効能

しょうが 又 はじかみ 生姜
辛温、毒なし
胃を開き、痰を去り、嘔吐を止む。又一切の毒を解す

■原文
せうか 又 はぢかミ生薑
辛温、毒なし
胃を開き、痰を去り、嘔吐を止む。又一切の毒を解す。

「はじかみ」とはショウガ(姜)とのこと。

『日養食鑑』には、生姜の基本的な効能が書かれています。
生姜の効能とは「胃を開く」「痰を去る」「嘔吐を止める」の三つ。さらに解毒能を示しています。この毒とは、魚毒や麺毒のことでしょう。ですので、現代でも鯵(アジ)や鯨(クジラ)のお造りに生姜が薬味として付け合わせられます。また冷やしうどん・そうめんにも生姜が薬味として賞味されますね。

次に名古屋玄医の『閲甫食物本草』から、より詳細な情報をみてみましょう。

『閲甫食物本草』に記されるショウガ(生姜)の効能

生姜  はじかみ
氣味、辛微温。毒無し。
『本経』に曰く、久服すれば臭氣を去り、神明に通ず。
『別録』に曰く、五臓に帰し、風邪・寒熱・傷寒・頭痛・鼻塞・欬逆上氣を除く。嘔吐を止め、痰を去り、氣を下す。
甄権が曰う、水氣満を去り、咳嗽時疾を療す。
東垣が曰う、古人の言うには“秋に姜を食さず、人をして氣を瀉せしむる”。蓋し夏月は火旺じて宜しく汗して之を散ずるべし。故に姜を食うこと禁ぜず。辛は氣を走らせ肺を瀉す、故に秋月は則ち之を禁ず。『晦菴語録(おそらく『晦菴先生語録類要』のことか)』にも亦、秋姜が人の天年を夭するの語あり。
孫思邈が曰く、八九月に多く姜を食えば、春に至りて多く眼を患い寿を損じ筋力を減ず。孕婦が之を食えば、児をして盈指せしむる

■原文
生薑  波志加美
氣味辛微温、無毒。本経曰、久服去臭氣通神明。別録曰、帰五藏除風邪寒熱傷寒頭痛鼻塞欬逆上氣、止嘔吐去痰下氣。甄権曰、去水氣満、療咳嗽時疾。東垣曰、古人言秋不食姜、令人瀉氣。盖夏月火旺宜汗散之。故食姜不禁。辛走氣瀉肺、故秋月則禁之。晦菴語録亦有秋姜夭人天年之語。孫思邈曰、八九月多食姜至春多患眼損壽減筋力。孕婦食之、令児盈指

とあります。生姜の氣味は辛微温。この氣味の力で、諸症を改善・打開することがイメージできます。
また「神明に通ず」という効能も印象的です。「五臓に帰する」という効能もさることながら、胃周囲の水氣を去ることで、心下・膈を開くことになり、心・脳へと通ずる助けになります。「神明に通ず」をこのような機序として解釈します。

『公益本草大成』にあるショウガ(生姜)の効能

生姜

【生姜】辛温
○表を発し、風・寒・冷・湿・水氣・痰氣を去り、汗を発し、氣を下し、中を温め、胃を調え、食を下し、胃口を開き、胸膈を利し、嘔吐を止め、悪氣を去り、諸毒を解し、臭氣を除き、腹内長蟲を殺し、血滞を破り氣滞を行らす。鼻塞・頭痛・氣脹・腹疼・欬嗽・胸悶・霍乱・転筋・冷痢・冷瀉を治する。

○生姜の用、五あり。
風寒を発散する、一也。脾胃の元氣を調え中を温め陽を行らし湿を去る、二也。痰を行らし滞を導く、三也。毒を解し悪臭を去る、四也。胸膈を利し胃口を開く、五也。

○方剤中に生姜を用いるの者、三の義あり。
風寒を発散する、一の義也。中を暖め氣血を行らす、二の義也。痰を去り膈を利する、三の義也。
凡そ方中に姜棗を用いる者は辛甘温を以て脾胃の元氣を助け、脾胃の津液を行らせ、栄衛を和すの理に取る。

○孫真人(孫思邈)が曰う、姜を嘔家の聖薬と為す。蓋し辛は以て之を散ず。嘔とは乃ち氣逆して散ぜざる也。此の薬、陽を行らして氣を散ずる也。又曰く、生姜は能く肺に入りて胃口を開く也。
○凡そ早行(あさゆき)山行(やまにゆく)、宜しく(生姜の)一塊を含むべし。霧露清湿の氣および山嵐不正の邪に犯されず。
○中風・中暑・中氣・中毒・中悪・乾霍乱、一切卒暴の病を治するに、姜汁と童便とを服して立ちどころに解散す。(姜は能く痰を開き氣を下す、童便は能く火を降ろす也。)
○姜と茶を同じく煎服して、赤白痢を治する。且つ湿熱および酒食暑氣の毒を解す。(姜は能く陽を助け、茶は能く陰を助く。二物合して悪氣を去り陰陽を和す。○熱痢には皮を留むるの姜を、冷痢には皮を去るの姜を用ゆ。此の方大いに妙なり。

【乾生姜】 嗽を治し中を温め、脹満・霍乱不止・腹痛・冷痢・血閉・虚冷を治する。
○生姜の切片(きりはぎ)て陰乾(かげぼし)する者也。生姜の功と殊なること無し。但、散発開利の勢い、生姜より烈しとす。
○按ずるに薛巳(薛己)が方書に、謂う所の乾姜は多くは真の乾姜に非ず。乾生姜を以て云う。
○李杲が曰う、乾生姜を以て乾姜に代える者は、其の僭せざるを以ての故也と。乾生姜は乾姜の熱より弱し。生姜の温より強き者也。
[使薬]秦椒を使と為す。○半夏厚朴の毒を制す。○芍薬と同じく用いて経を温め寒を散ず。
[毒]瘡家に用うること勿れ。痔病に尤も之を忌む。○多く食えば害あること少なからず。
○八九月に多く姜を食えば、春に至りて眼を患いて命を損い筋力を減ずる。○孕婦、姜を食えば指を盈つ(むつゆび・六指)。○秋時に姜を食うことを禁ず。○多く食えば熱を積みて目病を致す。
[畏悪]黄芩・黄連・天鼠糞を悪む。
[修治]老姜を用ゆ。皮の性は冷也。宜しく皮を去るべし。姜は腐なく、色黄(きばみ)筋少なき者を良とす。腐ちて味苦く、色黒く、筋の多き者は不可也。
(生姜は)元氣の虚を補い、一切の補中の剤に炮して用ゆ。
○或る人の曰く、姜の皮を留めて用いば、達表発散すとは誤まり也。

【姜皮】 辛涼 浮腫・腹脹・痞満を消し、脾胃の鬱熱を和し、翳を去る。
【(生姜の)葉】 辛温 鱠を食して癥を成す者、汁に擣きて飲めば即ち消ゆ。

■原文
○發表去風寒冷濕水氣痰氣、發汗下氣温中調胃下食開胃口、利胸膈、止嘔吐、去悪氣、解諸毒、除臭氣、殺腹内長蟲、破血滯行氣滯。治鼻塞頭痛氣脹腹疼欬嗽胸悶霍亂轉筋冷痢冷瀉。
○生姜の用、五あり。發散風寒、一也。調脾胃元氣温中行陽去濕、二也。行痰導滯、三也。解毒去悪臭、四也。利胸膈開胃口、五也。
○方劑中に用る生姜者、三の義あり。發散風寒、一義也。暖中行氣血、二義也。去痰利膈、三義也。凡方中に姜棗を用る者は辛甘温を以て助脾胃元氣行脾胃津液和榮衛理に取。
○孫眞人曰、姜爲嘔家聖藥、葢辛以散之、嘔乃氣逆、不散也。此藥、行陽而散氣也。又曰、生姜能入肺開胃口也。
○凡早行山行、宜含一塊、不犯霧露淸濕之氣、及山嵐不正之邪。
○中風中暑中氣中毒中悪乾霍亂、一切卒暴の病を治に、姜汁と童便とを服乄立に解散す。(姜能開痰下氣、童便能降火也。)
○姜與茶同煎服、治赤白痢、且解濕熱及酒食暑氣之毒。(姜能助陽、茶能助陰。二物合去悪氣和陰陽。○熱痢留皮姜、冷痢去皮姜を用ゆ。此方大妙。)
乾生姜、治嗽温中、治脹滿霍亂不止、腹痛冷痢血閉虚冷。
○生姜の切片て陰乾者也。生姜の功と無殊。但散發開利の勢、生姜より烈とす。
○按に薛巳が方書に所謂乾姜は多は眞乾姜に非ず。乾生姜を以て云。
○李杲曰、以乾生姜代乾姜者、以其不僭故也と。乾生姜は乾姜の熱より弱し。生姜の温より强者也。
[使藥]秦椒爲使。○制半夏厚朴毒。○同芍藥用温經散寒。
[毒]瘡家勿用。痔病尤忌之。○多食害あるヿ不少。○八九月多食姜至春患眼損命減筋力。○孕婦食姜、盈指。○秋時禁食姜。○多食積熱致目病。
[畏悪]悪黃芩黃連天鼠糞。
[修治]老姜を用。皮性冷也。宜去皮、姜は腐なく、色黃筋少者を良とす。腐て味苦、色黒、筋多者不可也。元氣虚を補、一切補中の劑に炮乄用。○或曰、姜の皮を留て用ば、達表發散すとは誤也。
姜皮 辛涼 消浮腫腹脹痞滿、和脾胃欝熱、去翳。
葉 辛温 食鱠成癥者、擣汁飲即消。

食用の際の生姜の効能と、薬用の際の生姜の効能を分けて書いてくれている点がありがたいです。

食用としての生姜の効能は5つ。
「発散風寒」「調脾胃元氣、温中行陽、去湿」「行痰導滞」「解毒去悪臭」「利胸膈、開胃口」

生薬としての生姜の効能は3つ。
「発散風寒」「暖中、行氣血」「去痰、利膈」
また、よく方剤の中に姜棗(生姜と大棗)を組んで用いられることがあります。その意図は、生姜の辛温、大棗の甘によって、脾胃元氣を助け、脾胃の津液を行らせ、営衛を和することが目的とされています。

また「乾生姜」についても触れてくれています。
乾いた生姜というのも一見したところ矛盾しているようにみいえますが、乾生姜とは、生姜を切片(スライスに)して陰干ししたものです。その効能は「治嗽、温中。脹満・霍乱不止・腹痛・冷痢・血閉・虚冷を治する」のです。その性質は、生姜の功能とは同じでありますが、散発開利の勢いは乾生姜の方が強いとあります。

生姜は食材としての用途も多岐に渡り、かつ生用でも、乾燥させても使えますので、上記のように乾生姜の効能を知っておくのも良いでしょう。

以上でショウガ(生姜)の効能の紹介とさせていただきます。鍼道五経会のあくなき食の探求はまだまだ続きます。

鍼道五経会 足立繁久

 ゴケイメシに興味がわいた人は…

こんな宴と勉強をする私たちの講座に興味ある人は、以下のメールフォームからお申込みください。 ※記入されたメールアドレスにメールが届かないケースが多発しています。 ※大人の配慮として複数の連絡先を記入しておいてください。連絡がつかない場合の責は当会は負いませんので、ご了承くださいませ。 

当日の連絡先・電話番号(必須)

おすすめ記事

  • Pocket
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントを残す




関連記事

シン・スッポン料理と香辛料の本草学的情報(馬芹・胡菜・鬱金・番椒)
キジ鍋で祝う共同論文掲載 附 雉の食物本草情報
5月の講座とゴケイメシ ~ウマ(馬肉)の食物本草能~
2021年度・冬~春のゴケイメシ
11月の医書五経とゴケイメシ 附 ダイコンとタラの本草学情報
2023最後のゴケイメシは、烏骨鶏と人参と鳩
初夏を告げるハモ(鱧)とカツオ(鰹)の食物本草能
6月のゴケイメシ ~クジラの食物本草能~
12月のゴケイメシLunchは年越し蕎麦
2021年度・夏~秋のゴケイメシ
カキ(牡蠣)とエビ(蝦)の食物本草情報
ウサギ料理に挑戦 附 ウサギ肉の本草学情報
東京メンバーと昆虫食を楽しむ
ドジョウの旬は初夏! 食物本草情報
6月のゴケイメシ ~豚肉(豕・豬)の食物本草能~

Menu

HOME

TOP