スッポンの効能を改めて確認す

8月の講座「生老病死を学ぶ」の終了後、
生薬探偵こと濱口昭宏先生のご指導のもと、スッポンを捌いて食するという機会を得ました。

暑気払いを兼ねた『スッポンをいただく会』


先ずは首を伸ばさせてスッポンの首をつかみます(下の写真へ)

この後の解体作業は写真カットです。

そこで講座『生老病死を学ぶ』では、スッポンの生薬的な効能を調べました。

本草学的にみると…

スッポン(鼈)
(黒色文は原文、下の青色小文字は書き下し文です)

『神農本草経』中薬
鼈甲、味鹹、平。主治、心腹癥瘕、堅積、寒熱。去痞疾息肉、陰触痔悪肉。
生池沢。

鼈甲の主治は、心腹癥瘕、堅積、寒熱を主治し、痞疾、息肉、陰触、痔、悪肉を去る。
池沢に生息する。

『本草別録』
鼈甲、無毒。主治温瘧、血瘕、腰痛、小児肋下堅。
肉、味甘。治傷中、益気、補不足。生丹陽、取無時。

鼈甲は無毒。温瘧、血瘕、腰痛、小児肋下堅を主治する。
鼈の肉は味甘、中焦の傷を治し、氣を益し、不足を補う。
丹陽を生じ、採るに時無し。

『本草綱目』
釋名:鼈、…淮南子曰、鼈無耳而守神、神守之名以此。
淮南子に曰く、鼈には耳無くして神を守る。神守の名此れを以てす。

鼈甲

[修治]別録曰、鼈甲生丹陽池澤、采無時。
頌曰、今処処有之、以岳州沅江所出甲有九肋者爲胜。入藥以醋炙黄用。
弘景曰、采得、生取甲、剔去肉者、爲好。凡有連厭及干岩者、便真。若肋骨出者、是煮熟、不可用。
敩曰、凡使、要緑色、九肋、多裙、重七両者爲上。用六一泥(神泥)固瓶子底、待干、安甲于中、以物支起。若治癥塊定心薬、用頭醋入瓶内、大火煎、尽三升、乃去裙、肋骨、炙干入用。或治勞去熱薬、不用醋、用童子小便煎、尽一斗二升、去裙留骨。石臼搗粉、以鶏䏶皮裹之。取東流水三斗盆盛、閣于盆上、一宿取用、力有万倍也。
時珍曰、按衛生宝鑑云、凡鼈甲、以煅灶灰一斗、酒五升、浸一夜、煮令爛如膠漆用、更佳。
桑柴灰亦妙。
[氣味]: 鹹、平、無毒
[主治]:(※「本経」「別録」は既出のため略す。)
宿食、癥块痃癖、冷瘕労痩、除骨熱、骨節間労熱、結実壅塞、下氣、婦人漏下五色、下瘀血。「甄権」
去血氣、破癥結悪血、堕胎、消瘡腫腸癰、並扑損瘀血。「日華」
補陰補氣「震亨」
除老瘧瘧母、陰毒腹痛、労復食復、斑痘煩喘、小児驚癇、婦人経脈不通、難産、産後陰脱。丈夫陰瘡石淋、斂潰癰。「時珍」

鼈甲(スッポンの甲羅)
修治は略す
気味は鹹、平、無毒

鼈甲は、宿食・癥块・痃癖・冷瘕・労痩を主治する。骨熱・骨節間労熱・結実・壅塞を除き、氣を下し、婦人漏下五色、瘀血を下す。「甄権」
血氣を去り、癥結・悪血を破り、胎を堕ろし、瘡腫・腸癰、並びに扑損・瘀血を消す。「日華」
陰を補い氣を補う「震亨」
老瘧・瘧母、陰毒・腹痛、労復・食復、斑痘・煩喘、小児の驚癇、婦人の経脈不通、難産、産後陰脱を除く。丈夫(男性)は陰瘡石淋、潰癰を斂する。「時珍」

発明:時珍曰、鼈甲乃厥陰肝経血分之薬、肝主血也。試常思之、亀、鼈之属、功各有所主。鼈色青入肝、故所主者、瘧労寒熱、痃瘕驚癇、経水癰腫陰瘡。皆厥陰血分之病也。
…以下、玳瑁、秦亀、水亀との別を記すため略す。

発明:李時珍が曰く、鼈甲はすなわち厥陰肝経血分の薬、肝は血を主る也。試みに常に之を思うに、亀、鼈の属は、功に各々主る所有り。
鼈の色は青であり肝に入る。故に主る所の者は、瘧労寒熱、痃瘕驚癇、経水癰腫陰瘡など皆 厥陰血分の病なり。

氣味:甘、平、無毒
主治:(※「本経」「別録」は既出のため略す。)
熱氣湿痹、腹中激熱、五味煮食、当微泄。「藏器」
婦人漏下五色、羸痩、宜常食之「孟詵」
婦人帯下、血瘕腰痛「日華」
去血熱、補虚、久食、性冷。「蘇頌」
補陰「震亨」
作臛食、治久痢、長髭須。作丸服、治虚労痃癖脚気「時珍」

鼈肉(スッポンのお肉)の氣味:甘、平、無毒
鼈肉の主治は、熱氣湿痹、腹中激熱、五味煮食、当微泄。「藏器」
婦人の漏下五色、羸痩には、宜しく常にこれを食すべし「孟詵」
婦人の帯下、血瘕腰痛「日華」
血熱を去り、虚を補う。久しく食して性冷。「蘇頌」
陰を補う「震亨」
臛(あつもの=スープ)に作して食し、久痢を治し、髭須を長ず。丸薬を作し服用して、虚労・痃癖・脚気を治する「時珍」

『千金翼方』巻第四 本草下
鼈甲 味鹹、平、無毒。
主心腹癥瘕、堅積、寒熱、去痞息肉、陰蝕、痔、悪肉。
療温瘧、血瘕、腰痛、小児肋下堅。
肉、味甘。主傷中、益気、補不足。生丹陽池沢、取無時。

『千金翼方』の記載は『神農本草経』『名医別録』と同じスタンスのようです。

以上のようにみると、破瘀通塞、駆瘀血の効能、そして補陰補気の効能が強調されているようです。

スッポンの二大効能

巷(ちまた)で言われるスッポンの効能美肌効果精力増強、この二大効能と言えるでしょう。

しかし以上の本草書からは上記の美肌に精力…あまりピンとこないですね。

『神農本草経』の「悪肉を去る」ことで“美肌”に結びつくのでしょうか。
または駆瘀血の結果として“美肌”なのか…いずれにせよ強引な感じが否めませんね。

単にコラーゲン豊富ゆえの美肌効果を喧伝されていると考えられそうです。
とはいえ、コラーゲン豊富よりも、駆瘀血効果の方が重宝すると思うのは私だけでしょうか。

そして次なる効能、精力増強

あたかも「スッポン効果でEDも治る!」のような宣伝をよく目にするのですが、上記本草書からみてどうでしょう。

補氣補陰の効は散見されます。
さらに久食して性冷ですので、助陽壮陽の働きとは少し趣きが異なるようです。

唯一それっぽい?と思えるのが『名医別録』にあるスッポンの肉の「生丹陽」という記述。
私は丹陽を生じると読みましたが(丹陽に生息するの意ではないと思われますし)

このように丹陽として解釈すると、強壮効果にも通じると考えられますがどうでしょう…
実際に食して確認するしかありませんね。

スッポン実食の結果はいかに?

ちなみにスッポン鍋の効果として、補気作用があるのは我が家で確認済です。

ちょうどスッポン鍋を作っていた時、娘が夏場の剣道部の稽古・試合でヘトヘトになって帰ってきたのですが、
その時の症状が、疲労、脱力、倦怠、食欲不振…と立派な虚労状態でした。

当初は「水分以外なにも要らない、食べれない」とそんな状態だった娘、
試しにスッポン・スープをひと口いただくと

「ん?これ美味しいね」と、スープも肉も雑炊も完食。
いつもの顔色に戻り、声に力がみなぎって、虚労状態から回復したことがありました。

そして、当会メンバーの実食した結果は・・・?


料理をしながらいただくお酒は格別

スッポン鍋と日本酒と・・・

ここまでお酒も摂取してしまうと、
スッポンそのものの補氣作用なのか・・・
お酒の温陽作用なのか・・・判別不可能ですね(笑)

今後の調査目標にするとします。

ということで!
スッポンを捕獲して捌いていただく方法を伝授していただいた濱口先生には感謝感謝です。

 

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