脈診の三要素

鍼道五経会の足立です。

今回は個人的な脈診に関する見解を書きます。普段、私は脈診をこのように使っています…ということで

脈を診る際の三要素

脈診には3つの要素があると考えています。

一つ目は脈位
二つ目に脈力
三つ目が脈状です。

病の居場所をみつける脈位

脈位とはわかりやすく言うと「浮中沈」です。

浮中沈の脈位を診ることは、病位を把握することを意味します。病位を把握することは重要です。なぜなら病位により治療方針が明確になるからです。

病位とは病邪の居場所です。

居場所が分かれば「どのような手段で病邪を追い出すか?」という治療戦略を立てることができます。そのため病位を知ることは治療において必要不可欠な情報なのです。

余談ながら、この点の治療戦略の立て方は傷寒論をベースとした漢方医学が得意とするところであり、五行の相生相剋の平衡をベースとした鍼灸は不得手とするところだと個人的には考えています。

例えば、脈の浮沈で何が分かるか?というと「病位が表なのか?裏なのか?」が分かります。この時点で治療方針が大きく異なるのです。もちろん鍼灸治療にとっても重要な情報です。

また、脈の配当も(病の居場所という点で)脈位に含みます。特に気口九道脈診では脈の浮沈だけでなく“脈の内中外×寸関尺”をも診ることで、各経脈の配当を形成しています。この脈の内中外を脈の形、脈形と呼んでいます。

気口九道脈診では脈形から各経脈の異常を読み取ります。この点においては脈形も脈位に含んでもよいのではないかと考えています。

より細かく治療部位を選定する脈形

脈形も病の位置、治療すべき部位を選ぶことができる重要な情報です。

たとえば気口九道脈診では治療すべき経脈が判定できるため、病の居場所としては脈位に近い情報だと言えます。

脈位の浮沈と違う点は、表裏に比べ経脈になりますのでより細かい情報になります。

脈形を診ている脈診法は気口九道脈診や宇津木昆台の脈法があります。

正気の不足をみる脈力

脈力でみるのは正気の程度です。

脈力が十分であれば、正気が旺盛(実)であり瀉法を主とした治療を組み立てることができます。
しかし、脈力が弱く、正気の不足(虚)が強いと瀉法は不適です。補法を主とした治療を組み立てる必要があります。いわゆる先補後瀉と呼ばれる治療の構成ですね。

まとめると脈力では「補か瀉か」または「先補後瀉」か「先瀉後補」か…などなど、大まかな治療方針が決定されるのです。

脈状で分かるのは病の性質と勢い

脈状で診ているのは病質と病勢です。

病質とは病邪の性質。病勢とは病邪の勢いや正気の盛衰です。

写真:『難経古註集成』東洋医学研究会 発行より引用させていただきました。

病邪の性質には気血水の分類や五行の分類などがありますが、これらの分類が脈状と対応しているのはここで言うまでもないことです。そして、病勢が脈の虚実と対応している…これもまたここで詳しく述べる必要はありませんね。

他にも病の方向性などを知ることも病勢に含まれるでしょう。

以上が脈の三要素として挙げられると考えています。

脈の三要素と病の三要素

なぜ脈位、脈形、脈状に整理する必要があるのか?

それは病の三要素に対応している点があるからです。
病の三要素が先ほどにも書きましたように病位、病質、病勢です。
病邪の居場所・病邪の性質・病邪の勢い・病の方向性、これらを把握しないと治療方針を立てることはできません。

ここで脈診を使う上で気を付けないといけないことは「脈診即治療」です。

「脈が分かれば治療ができる」という言葉がありますが、安易にこの言葉を鵜呑みにしてはいけないと思っています。
脈診は診断ではありません。診察の一技術に過ぎないのです。これは四診合参という言葉からも分かることです。

脈診という診察で得た情報を分析することが診断です。情報を分析するには、まず雑多な情報を整理分類する必要があります。

それが脈診においては脈位、脈形、脈状であり、病の分析においては病位、病質、病勢なのです。

また、このように分類すると脈診を理解し習得することも早くなると思うのです。

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