『奇経八脈攷』その2 陰維脈について

陰維の本質を探る

前回は奇経八脈の総説、つまり概論的な内容でした。陰維脈の性質について学びます。『難経』では維脈とは「身を維絡す」る脈として定義づけています。この表現は陰陽維脈の本質をイメージする上で有力な情報となるでしょう。

※『奇経八脈攷』(『重刊本草綱目』内に収録)京都大学付属図書館より引用させていただきました
※下記の黄色枠部分が『奇経八脈攷』の書き下し文、記事末青枠内に原文を引用しています。

書き下し文・陰維脈

陰維は諸陰の交に起きる、其の脈は足少陰築賓穴に発し、陰維の郄と為す。内踝上五寸の腨肉分中に在り、上りて股内廉を循り、上行して小腹に入り、足太陰厥陰少陰陽明に府舎〔腹結の下三寸に在り、腹中行を去ること四寸半〕に於いて会する。上りて足太陰に大横腹哀〔大横は腹哀の下一寸五分に在り、腹哀は日月下一寸五分に在り、並びに腹中行を去ること四寸半〕に於いて会する。脇肋を循り足厥陰には期門〔直乳下一寸半〕に於いて会す。胸膈に上り咽を挟み、任脈と天突廉泉に於いて会する、上りて頂前に至りて終わる。〔天突は結喉の下四寸半、宛宛中に在り、廉泉は結喉の上二寸に在り、中央是穴〕
凡て一十四穴。

陰維・陽維はルートではない

李時珍のいう陰維脈は以上の通りとなります。『奇経八脈詳解』はそのまま素直に引用されています。
前回の八脈にあるように陰維は「營分を上行」します。対する陽維は衛分を上行します。
この言葉から、陰維や陽維は線(ラインやルート)状ではないことが分かります。

諸陰の交として築賓、府舎、大横、腹哀、期門、天突、 廉泉の凡て十四穴(十四という数字には疑義あり、滑伯仁は十二としている。敢えて十四とする点に李時珍の意図が感じられる)という“点”で示されると、つい人間の脳としては“線”をイメージしてしまいますが、どうもそうではないということが分かります。

また「陽維は衛分、陰維は営分を上行する」といった表現から得られる情報も重要です。

✓ 陽維と陰維が流行する層は同じではないという点。
✓ 衛気、営気ともに陰維陽維を“上行”するという点。

この二点は陰陽維脈を理解する上で、また衛氣營氣観を整理する上でも重要な情報となるでしょう。

鍼道五経会 足立繁久

■原文 陰維脉

陰維起於諸陰之交、其脉発於足少陰築賓穴、為陰維之郄。在内踝上五寸腨肉分中、上循股内廉、上行入小腹、會足太陰厥陰少陰陽明於府舎〔在腹結下三寸、去腹中行四寸半〕上會足太陰於大横腹哀〔大横在腹哀下一寸五分、腹哀在日月下一寸五分、並去腹中行四寸半〕循脇肋會足厥陰於期門〔直乳下一寸半〕上胸膈挟咽、與任脉會於天突廉泉、上至頂前而終。〔天突在結喉下四寸半宛宛中、廉泉在結喉上二寸中央是穴〕
凡一十四穴。

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