『奇経八脈攷』その14 帯脈について

帯脈について

李時珍による『奇経八脈攷』では奇経について実に詳しく説いていただき、奇経について不勉強な私にとっては至福の時間でありました。しかしその至福のときもそろそろ終わりを迎えようとしています。
RPGに譬えるなら“ラスボスと最後の闘い”の前に覚えるほのかな寂寥感…というところでしょうか。
ま、そんなことは置いておいて、本文を読んでいきましょう。


※『奇経八脈攷』(『重刊本草綱目』内に収録)京都大学付属図書館より引用させていただきました
※下記の黄色枠部分が『奇経八脈攷』の書き下し文、記事末青枠内に原文を引用しています。

書き下し文・帯脈について

帯脈とは季脇、足厥陰の章門穴に起き、足少陽と同じく帯脈穴に循る〔章門は足厥陰少陽の会。季肋の骨端に在り。肘尖の尽きる処この穴。○帯脈穴は足少陽経に属し、季肋の下一寸八分、陥中に在り。〕。身を圍(囲)むこと一周、束帯の如く然り。又、足少陽と五枢〔帯脈下二寸〕維道〔章門下五寸三分〕に於いて会する。凡て八穴。

『霊枢経』に曰く、足少陰の正、膕中に至り、別れて太陽に走りて合す、上りて腎に至る、十四椎に当り、出て帯脈に属す。

楊氏が曰く、帯脈は諸脈を総束して、妄りに行かざらしむる。人が束帯して前に垂れるが如き故に名づく。
婦人の悪露は帯脈に随いて下る、故に之を帯下と謂う。

帯脈の経穴

帯脈に属する経穴は八穴とされています。章門穴から起こるとありますが、つまりは左右の両章門から始まるということです。足少陽胆経と並走するように帯脈穴に下行します。さらに五枢、維道に会します。章門、帯脈、五枢、維道、左右合わせて八穴です。

しかし李時珍が指摘するように『霊枢』経別篇には足少陰と十四椎すなわち命門にて帯脈に合流します。『霊枢』では「(足少陰が)帯脈に属する」という表現を採っていることから、“会する”よりもより深い関係ではないかとも想像できます。

帯脈流注を考えると、他にも天枢や肓兪、神闕などの重要経穴との交会はないのか?とも考えますが、腹部経穴との関連については不思議なほど触れられていません。

しかし十四椎(命門)において帯脈と足少陰の関係が記されている以上、督脈や少陰大絡、ひいては衝脈との関係も念頭に置いておくべきです。
足厥陰肝経、足少陽胆経、そして足少陰腎経別、そして督脈、衝脈と帯脈との複雑な構造をイメージしておくことで臨床での応用力が身につくのです。

婦人病と帯脈

婦人の悪露は帯脈に随い下るとあります。これは面白い表現だと思います。
帯下という病名は帯脈に由来する、とも言われるのもなるほど…と思える表現です。帯下の詳しい病理は次章の「帯脈為病」に記されています。
そこで詳しく帯下を含め、帯脈の病について詳しく学びましょう。

督脈為病 ≪ 帯脈 ≫ 帯脈為病 

鍼道五経会 足立繁久

■原文・帯脉

帯脈者、起於季脇足厥陰之章門穴、同足少陽循帯脈穴〔章門、足厥陰少陽之會。在季肋骨端、肘尖盡處、是穴。○帯脈穴屬足少陽経、在季肋下一寸八分、陥中。〕、圍身一周、如束帯然。又、與足少陽會於五枢〔帯脈下二寸〕維道〔章門下五寸三分〕。凡八穴。

『霊枢経』曰、足少陰之正、至膕中、別走太陽而合、上至腎、當十四椎、出属帯脈。

楊氏曰、帯脈總束諸脈、使不妄行、如人束帯而前垂、故名。
婦人悪露、随帯脈而下、故謂之帯下。

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