陰火の発生機序を理解するために

陰火を理解するために

補中益気湯を理解するために陰火の発生機序を知る必要があります。

陰火とは李東垣が提唱した病理観であり、後代の医家に大きな影響を与えています。
陰火を理解するために、まずは李東垣その人の言葉に素直に耳を傾ける必要があります。

『内外傷辨惑論』飲食労倦論には陰火の発生機序が詳細に記されています。引用文を以下に附記します。

『内外傷辨惑論』飲食労倦論

「…苟も飲食節を失い、寒温の適ざるときは則ち脾胃乃ち傷れる、喜怒憂恐、労役過度すれば、元氣を損耗す。
既に脾胃虚衰にして、元氣不足す、而して心火独ち盛んなり。
心火とは、陰火なり。下焦に於いて起こり、その系は心に繋かる、心は令を主とせず、相火がこれに代わる、
相火は下焦包絡の火、元氣の賊なり。
火と元氣とは両立すること能わず、一つ勝てば則ち一つ負く。
脾胃の氣虚するときは則ち腎(腎肝と書かれている版もある)に於いて下流す。
陰火以ってその土位に乗ずることを得。
故に脾胃の証始めこれを得るときは、氣高して喘、身熱して煩、その脈は洪大にして頭痛む。
或いは渇して止まず、皮膚は風寒に任ぜず、而して寒熱を生ず。
蓋し陰火上衝するときは則ち氣高して喘す、身煩熱し、頭痛と為し、渇と為し、而して脈は洪大なり。
脾胃の氣は下流して、使穀氣をして升浮すること得ざらしむ。
これ生長の令を行られず、則ち陽以ってその栄衛を護ることを無くして、風寒に任ぜず、乃ち寒熱を生ず、脾胃の氣不足の致す所也。…」

陰火は脾胃虚損から始まる

脾胃の傷れを起点として、七情不和、労役過度(虚労)といった深いレベルでの虚損が加わります。

労倦といえば、セオリーであれば肝腎(※)の虚や陰分の虚をイメージしやすいのですが、李東垣は違うセオリーを提示しています。

「脾胃・中焦の損傷」から、「心火がメラメラ燃え始めた…」と、そんな病理観を言っています。

ここからさらに「陰下が土位に乗じる」「陰火上衝」といった各段階を経るのですが、陰火とはこれら一連の流れを指しています。

また「陰火が土位に乗じる」せいで陽明証にも似た熱証が現れるとしています。
虚を発端として、このような実熱証のような病態を形成するというのは、現代日本人の我々にはちょっと想像しにくいのではないかなと思います。
しかし、李東垣の挙げた病症は厳然として陽実証であり、脈証もまた洪大脈であります。この点の情報と陰火発生の機序とをうまく整合性を持たせて考察し、陰火を理解する必要があります。

※この資料は東京講座【経絡の正奇双修】にてテキストとして用います。

鍼道五経会 足立繁久


写真:『内外傷辨惑論』飲食労倦論

■原文『内外傷辨惑論』飲食勞倦論

「苟飲食失節、寒温不適、則脾胃乃傷、喜怒憂恐、勞役過度、而損耗元氣。既脾胃虚衰、元氣不足、而心火獨盛。
心火者、陰火也。起於下焦、其系繋於心、心不主令、相火代之、相火下焦包絡之火、元氣之賊也。
火與元氣不能両立、一勝則一負。
脾胃氣虚、則下流於腎、陰火得以乗其土位。
故脾胃之證、始得之則、氣高而喘、身熱而煩、其脉洪而大、而頭痛。
或渇不止、皮膚不任風寒、而生寒熱。
蓋陰火上衝、則氣高而喘、身煩熱、為頭痛、為渇、而脉洪大。
脾胃之氣下流、使穀氣不得升浮。
是生長之令不行、則無陽以護其榮衛、不任風寒、乃生寒熱、皆脾胃之氣不足所致也。

 

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