四方をもとに…-難経七十五難-

四時の七十四難と七十五難との違い

難経七十四難では、四時の刺法と病位について説かれていました。四時を五行に暗号化して論を展開している、と記事にさせていただきました。
さて今回の七十五難も前回と同様に五行で論じていますので、やはり暗号を翻訳解読する必要があると思います。特に七十五難の五行解読は大きなヒントが本文中に書かれています。


※『難経本義』京都大学付属図書館より引用させていただきました。
※以下に書き下し文、次いで足立のコメントと原文を紹介。

書き下し文 ・難経七十五難

七十五難に曰く、
経に言う、東方実し西方虚するは、南方を瀉し北方を補う。
何の謂い也?然り。
金木水火土、當に更々相い平らぐ、東方は木、西方は金也。
木実せんと欲せば、金當に之を平らぐ。
火実せんと欲せば、水當に之を平らぐ。
土実せんと欲せば、木當に之を平らぐ。
金実せんと欲せば、火當に之を平らぐ。
水実せんと欲せば、土當に之を平らぐ。

東方は肝也、則ち知らんぬ肝の実することを。
西方は肺也、則ち知らんぬ肺の虚することを。

南方の火を瀉し、北方の水を補するとは、
南方は火、火なる者は木の子也。北方は水、水なる者は木の母也。
水は火に勝つ。
子は能く母をして実さしめ、母は能く子をして虚さしめる。
故に火を瀉し水を補う。
金をして木を平らぐことを得ざらしめんと欲すれば也。
経に曰う、其の虚を治すること能わざれば、何ぞ其の餘を問わん、とは此れの謂い也。

七十五難の文は冒頭から四方(東西南北)から始まっています。
ということは、七十五難は四方をベースに読み解くべし、との指令でもあります。
同じ五行暗号文にしても、七十四難は四時、七十五難は四方をもとに翻訳するべきなのです。

後半部は五行の相剋関係・相生関係をもとに論述されており、四方(♢の形)ではなく五角形(ペンタグラム)の観点も混在している点が要注意です。
簡潔にまとめると、五行の相剋では制御できない大過不及を五行相生相剋とは別の戦略で平にせよと説いていると解釈します。
「其の虚を治すること能わざれば、何ぞ其の餘を問わん(不能治其虚、何問其餘)」の言葉も、虚によって病態に対して補ベースの治療戦略をいくつか備えておくべし、との教えにも読み取れます。

余談ながら…さらに大きな視点で七十四難と七十五難の両難を比較すると、四時と四方すなわち天地ふたつの観点から五行を説く難だと言えるでしょう。

治法に関しては、四時は無形の要素であるのに対して、四方は有形の要素です。
故に無形の四時に関してはその解釈や表現のバリエーションは多端になると思われます。その一つは井栄兪経合ということになります。対する四方は有形のものであり、四方を人体に配するとなるとかなり限定されてしまうことと思われます。

※七十五難は六十九難に並んで人気のある(?)難であると思われ、解読法も様々だと思いますが、本記事の内容は参考までに…ということで。

 

鍼道五経会 足立繁久

■原文 難経七十五難

七十五難曰、経言、東方實西方虚、瀉南方補北方。何謂也?
然。
金木水火土、當更相平、東方木、西方金也。
木欲實、金當平之。火欲實、水當平之。土欲實、木當平之。金欲實、火當平之。水欲實、土當平之。
東方肝也、則知肝實。西方肺也、則知肺虚。瀉南方火、補北方水。
南方火、火者木之子也。北方水、水者木之母也。
水勝火。
子能令母實、母能令子虚。故瀉火補水。欲令金不得平木也。
経曰、不能治其虚、何問其餘、此之謂也。
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コメント

  • 入会希望の件で、申し込みに欄からメールさせて頂きました。
    よろしくお願いいたします。

    by 渡邉 2021年10月11日 1:52 PM

    • 渡邉先生ですね、昨日(10/10)の朝にメール返信しましたので、どうぞご確認ください。
      昨日の講座【医書五経を読む】は終了しましたので、第4日曜日の講座【生老病死を学ぶ】をご検討ください。
      今後ともよろしくお願いいたします。

      by harinomichi 2021年10月11日 6:05 PM

    • 渡邉先生、メールしたつもりが私(足立)のミスで返信できていませんでした…。誠に申し訳ありません。
      すでに回答済みのコメントをみて混乱させてしまったことだと思います。
      この場を借りてお詫びいたします。申し訳ありません。
      このように少し抜けたところがありますが(汗)、渡邉先生のやる気が削がれることなく勉強会でお会いできることを祈ります。

      足立

      by harinomichi 2021年10月12日 6:50 AM

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