第14章 疫愈結存『瘟疫論』より

これまでのあらすじ

前章は「因証数攻」つまり証によって何度も攻下する必要があるという内容でした。実際に2症例を挙げて、再三にわたって芽吹く陽明腑熱に対し大黄を主として攻下するケースを勉強しました。

「下法は数を以て計(かぞ)えるのではない、下すべき証があれば下すのだ」とのこと。攻下を忌避する平時の現代では考えられないほどの攻めっぷりでした。

今回は瘟疫が癒えても…というお話。

(写真・文章ともに四庫醫學叢書『瘟疫論』上海古籍出版社 より引用させていただきました。)

第14章 疫愈結存

疫愈結存
瘟疫下後、脉・證俱(とも)に平にして、腹中に塊有り。
之を按じて則ち痛む。阻む所有りて膨悶するを自覚する。
或いは時に升降の氣、往来利せざること有り。常に蛙聲を作す。
この邪氣已に盡きて、その宿結、尚(なお)未だ除かれざる也。
これ攻むべからず。これを攻めれば徒らに元氣を損ず。
氣虚益せば傳送すること能はず。
終に結を治するに於いて補無し。
須らく飲食漸く進み、胃氣稍復し、津液流通して、自ずから能く潤下するべし也。
嘗て病 愈えて後に、粥を食すること累月、結塊方(まさ)に下りて、堅黒なること石の如きに遇う。

瘟疫に対して下法を施した結果、症状・脈ともに平常に回復した。
しかし、腹診を行うと、腹中に塊があり、圧痛あり、膨満感も自覚する。

この腹中塊の部位がどこなのか?正確な情報は何とも言えないですが、
升降(昇降)の気の動きが阻まれてしまい、蛙声(げっぷのことでしょうか?)をしょっちゅうしている…。
この症から、邪気は既に処理されているが、宿結(元来から有する結ぼれ)はまだ残っている状態である。

注意を要するのは、この塊を陽明腑証と誤診して下してはならないということ。
適さない証に下法を加えると、胃気を損なうことになる。
さらに怖いのは、胃気を虚することで胃・小腸・大腸(胃の一家)の活力が低下し、伝送することができずに排便不利(便秘)となる。これは陽明腑に邪熱を蓄積させることでもあるので、下法の見極めは非常に重要であるということです。

第13章【因証数攻】≪ 第14章【疫愈結存】≫ 第15章【下膈】

鍼道五経会 足立繁久

おすすめ記事

  • Pocket
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントを残す




Menu

HOME

TOP