第31章 下後反痞『瘟疫論』より

これまでのあらすじ

前回の「下後間服緩剤」では下法により駆邪した後もなお膜原に残る余邪をどのように対処するか?という内容でした。
治療戦略がよく理解できる章だと思います。

今回の章では新しい病位、新しい病症について学びます。

(写真・文章ともに四庫醫學叢書『瘟疫論』上海古籍出版社 より引用させていただきました。)

第31章 下後反痞

下後反痞
疫邪、心胸に留れば、人をして痞満せしめる。これを下して痞、應(まさ)に去るべし。
今、反って痞する者、虚也。その人、或いは他病先虧に因りて、或いは新産の後、氣血両虚するに因り、或いは禀賦嬌祛を下すに因りて益々虚し、その健運を失し、邪気留止するを以って、故に痞満せしむ。
今、愈(ますます)下して痞愈(ますます)甚し。
若し更に行氣破氣の剤を用いば轉(いよいよ)壊證と成る。
参附養榮湯に宜し。参附養榮湯・・・當歸(一銭)、白芍(一銭)、生地(三銭)、人参(一銭)、附子(炮七分)、乾薑(炒一銭)
常を照らして煎じ服す。
果たして前証の如くは、一服して痞、當に失するが如くなるべし。
倘(もし)下證有りて、下後脈實し、痞未だ除かれざる者は再びこれを下せ。
これに虚實の分有り。
一つは下證有りて、下後痞即減する者を實と為す。
一つが表、微熱すと雖も、脉甚だ数ならず。口渇せず、下後 痞反って甚き者を虚と為す。
若し、潮熱、口渇、脉数にして痞する者に、これを投ずれば禍 踵を旋さず。

痞とは心下痞、痞症のこと。傷寒論では心下痞に対して瀉心湯類の処方が提示されています。

本文中にも「疫邪が心胸に留まれば」とあるように、今回の病位は経でもなく腑でもなく膜原でもありません。
心胸に疫邪が留まると心下に痞鞕が生じます。

「これを下して痞、応(まさ)に去るべし」とあります。
ちなみに瀉心湯類の中で、大黄が使われているものは、大黄黄連瀉心湯や附子瀉心湯、三黄瀉心湯などがあります。

下して心下痞が解除されない場合は虚証であるしています。
その理由として、以下の3条件を提示しています。

①他の病症により正氣を消耗した
②出産のため大いに氣血を消耗した
③先天の氣が脆弱であった
・・・と、程度が重い虚の条件を挙げています。

このような場合は下しても良いことありません。また行氣破氣の治法を行えば、痞症もますますひどくなり変証に至ることになります。
宿として虚をもつ場合には参附養栄湯を処方せよとあります。
その方意は、構成生薬は推して知るべしです。

また下すべき証に下法をかけて、なお脈に虚証はみられず、痞症も残っている場合は、再度下して痞症を取り除くべしとあります。
但し、ここに虚実の別があります。

下した後に心下痞が強くなるケースを虚証であるとしています。分かりやすい目安ですね。
しかし、下してなお痞症が強くなるのはなぜなのか?その病理を理解することは必須です。

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鍼道五経会 足立繁久

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