第38章 神虚譫語【瘟疫論】より

これまでのあらすじ

前章は虚煩似狂。
狂症に酷似した虚証というステージがあります。
これを知らずに狂症と判断してしまうと、大下して誤診・誤治をという警鐘ともいえる内容でした。

今回も神気が虚することで生じる精神症状のお話です。

(写真・文章ともに四庫醫學叢書『瘟疫論』上海古籍出版社 より引用させていただきました。)

第38章 神虚譫語

神虚譫語

應(まさ)に下すべきに稽遅し、血竭き氣耗し、内熱、煩渇、譫語、諸下證を具えて数々これを下す。
渇・熱並びに減じ、下證悉く去る。
五六日の後、譫語止まざる者は、以って實と為すとすべからず。
これ邪氣去りて元神未だ復せず。
清燥養榮湯加神砂(辰砂)一銭に宜し。

鄭聲、譫語、態度に二つ無し。
但、虚實の分有り、名色を另立するに應ぜず。

今回も下すべきタイミングを失し、十分に氣血陰陽が傷ついてから下法を施した…という設定です。
ジワジワと弱らせてから承気湯でダメージを与えるという、誤診誤治の中でも最もやってはいけないパターンです。

ここまで気血精を傷害してしまうと、そう簡単に回復できません。
数日間は精神が回復せず、譫語や鄭声が続きます。

譫語とはうわごと。ひどいと妄言暴言などを大声で発します。
前回でも紹介しましたが、譫語は承気湯証の典型的な症状のひとつです。そのため虚実の弁別が必要となるのです。

通常、うわごとの症状を虚実に分ける際、鄭声を虚証、譫語を実証と分類します。
しかしこの神虚の段階まで来てしまったら、

清燥養栄湯の処方は〔知母、天花粉、当帰、白芍薬、地黄、陳皮、甘草〕(詳しくは第28章【解後宜養陰忌投参朮】を参照のこと)
これに辰砂を加えた処方を、神虚譫語に対して薦めています。

第37章【虚煩似狂】≪ 第38章【神虚譫語】≫ 第39章【奪氣不語】

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