『脈経』の平脈視人大小長短男女逆順法を紹介

これまでのあらすじ

第一章は脈象24種、第二章は平旦から天地と人を繋ぐ脈、第三章は陰陽に区分することで脈を三界する内容、そして第四章は脈を中心とした生理学の話でした。
今回、第五章の平脈視人大小長短男女逆順法は平脈に関するお話。ひと口に平脈といっても、その人の条件や素体によって平脈は異なるものですというお話。


※『脉経』京都大学付属図書館より画像引用させていただきました
※下記の黄色枠部分が『脈経』の書き下し文、記事末青枠内に原文を引用しています。

書き下し文・平脈は人の大小 長短 男女の逆順を視るの法 第五

凡そ脈を診るに、當に其の人の大小、長短及び性氣の緩急を視るべし。
脈の遅数・大小・長短、皆な其の人の形性の如きの者は則ち吉なり。これに反する者は則ち逆と為す也。
脈の三部は大都(おおよそ)等しからんと欲す。
(ただ)小人、細人、婦人の如きの脈は小軟なり。
小児四五歳の脈は呼吸八至(一息八至)、細数なる者は吉。

『千金翼方』に云う、人大にして脈細、人細にして脈大、人楽にして脈実、人苦にして脈は虚、性急にして脈緩、性緩にして脈は躁、人壮にして脈は細、人羸にして脈の大なるは、これ皆な逆と為す。逆なれば則ち治し難し。
此れに反するは順と為す。順なるは則ち治し易し。
凡そ婦人の脈は常に丈夫に於いて濡弱ならんと欲す。小児四五歳の者は、脈は自ずと駚疾なり、呼吸八至(一息八至)也。男は左大を順と為し、女は右大なるを順と為す。肥人の脈は沈、痩人の脈は浮なり。

脈にはその人の性質があらわれる

性格や思考によって脈の傾向は異なるものです。
このことは当会の脈診講座でも紹介することですが、一定条件を満たすことでその人の性分が脈に現れます。このような脈の特性を把握しておくことで、臨床では詐病を見つけるひとつの手立てにもなります。

また小児の脈は基本的に数脈傾向にあることはよく知られています。駚疾という表現は小児の性質をよく表していると思います。ただ子どもは陽体だから数脈と丸暗記するのではなく、小児の生理を理解した上で小児の脈を診ることが大切です。

他にも個人差・年齢差・性差・体格差・性格の差…などによる脈の傾向が詳細に記されています。またその逆パターンも分かりやすく指南してくれています。
基本的な情報にみえますが、意外と臨床では日常的に用いる脈診知識でもあります。

鍼道五経会 足立繁久

弁尺寸陰陽栄衛度数 第四 ≪ 平脉視人大小長短男女逆順法 第五 ≫ 持脉軽重法 第六

■原文・平脉視人大小長短男女逆順法 第五

凡診脉、當視其人大小長短及性氣緩急。脉遅数大小長短、皆如其人形性者、則吉。反之者、則為逆也。脉三部大都欲等、只如小人、細人、婦人、脉小軟。小兒四五歳、脉呼吸八至、細数者吉。

千金翼云、人大而脉細、人細而脉大、人楽而脉實、人苦而脉虚、性急而脉緩、性緩而脉躁、人壮而脉細、人羸而脉大、此皆為逆。逆則難治。反此為順。順則易治。凡婦人脉常欲濡弱於丈夫。小兒四五歳者、脉自駚疾、呼吸八至也。男左大為順、女右大為順。肥人脉沈、痩人脉浮。

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