疾駆する脈、疾脈です
脈の陰陽類成 疾
疾脈とは、盛ん也。
数より快きを疾と為す(「快於数為疾」を採用した)。
呼吸の間、脈七至、熱極の脈也。
陽に在れば猶(なお)可なり、陰に在れば逆と為す。
(按ずるに、疾はその至止の躁を言う也、必ずしも七至にあらず。病、津虚氣悍を主り、熱に非らざる也。という説もある。)
疾脈の定義
数脈よりも快きにして疾とあります。快走、快速の脈なのでしょうか。ちょっと快の意味は分からないので置いておきます。
疾脈があらわすのは「熱極の脈」。すなわち熱の極みにあります。
当然、陽位に疾脈があればまだ良いですが、陰位にあれば逆証です。
またこの陰陽は脈位だけに限定されるものではありません。
また、陽は小児、陰は老人と解釈することも可です。疾脈が小児に出ているケースはまだ可治ですが、老人に疾脈がみられると不可治というケースも容易に想定できますね。
陰陽の解釈は広いので、思考が限定されないことが大事です。
疾脈は脈速ではない?
『診家枢要』には「按ずるに、疾とは至止の躁であり、必ずしも七至に非ず」と補足されている版もあります。
この“至止”とは持脈の要訣で紹介されたキーワードですが、疾脈の要点はこの至止の躁であるとし、単なる脈の速さではないと補足されています。
これも一考に値する言葉だと思います。
脈のはやい or おそいにも、単純な速度としての速さと、速度ではないはやさがあります。
分かりやすいのが遅脈と緩脈ですね。
遅脈は脈の速さを主な基準とします。緩脈の基準は脈速ではないのです。
この脈のはやさ・勢い…などなどの微妙な違いを推し測る目安として、去来・上下・至止があるのではないでしょうか。
実際の臨床では『おやっ!?遅脈ではないけども、なんだか脈が遅いな…』と感じる脈に遭遇することがあります。
このような体験をもとに上記の文を読むと、頭の片隅に入れておくべき補足ではないかと思います。
ジブリ絵から想像する疾脈
同じ早いでも印象も違うしストーリーも違う。脈のストーリーとは言うまでもなく病理である。
イラストa、疾走するかぐや姫、疾走感がハンパない。
イラストb、怪魚の上を韋駄天走りするポニョ。
※スタジオジブリの作品静止画より使用させていただきました。
映画『かぐや姫の物語』を観ていないので比較できないが、ポニョとかぐや姫…どっちが速いんだろうか…。
鍼道五経会 足立繁久
以下に原文を付記しておきます。
■原文 脉陰陽類成 疾
疾、盛也。
快於数而疾(快於数為疾)、呼吸之間脉七至、熱極之脉也。在陽猶可、在陰為逆。
(按、疾言其至止之躁也、不必七至、病主津虚氣悍、非熱也。)