霊枢 壽夭剛柔第六の書き下し文と原文と

壽夭剛柔篇に書かれている氣のこと

『黄帝内経つまみ食いシリーズ』はまた『霊枢』に戻ってきた。
今回の壽夭剛柔篇第六では、具体的に営に対する刺法、衛に対する刺法、寒痺の経に留まる刺法…と3種の刺法が記載されている。
氣について理解を深めるヒントがみられる篇である。

『霊枢講義』京都大学付属図書館より引用させていただきました。
※以下に書き下し文、次いで足立のコメントと原文を紹介。
※現代文に訳さないのは経文の本意を損なう可能性があるためです。口語訳は各自の世界観でお願いします。

『霊枢』壽夭剛柔第六

黄帝、少師に問うて曰く、余聞く、人の生たるや、剛有り柔有り、弱有り強有り、短有り長有り、陰有り陽有り。
願くば聞かんその方を。
少師答えて曰く、陰中に陰有り、陽中に陽有り、審かに陰陽を知りて、これを刺すに方有り。
病の始まる所を得て、これを刺すに理有り。
謹みて病端と、時の相應とを度し、内にて五藏六府に合し、外にては筋骨皮膚に合す。この故に内に陰陽有り、外にも亦陰陽有り。
内に在る者は、五藏を陰と為し、六府を陽と為す。
外に在る者、筋骨を陰と為し、皮膚を陽と為す。
故に曰く、病、陰の陰に在る者、陰の榮輸を刺す。
病、陽の陽に在る者は、陽の合に刺す。
病、陽の陰に在る者は、陰の経に刺す。
病、陰の陽に在る者は、絡脈を刺す。
・・・・・(中略)・・・・・黄帝曰く、余聞く、刺に三変あるとは何を三変と謂うか?①
伯高答えて曰く、營を刺する者有り、衛を刺する者有り、寒痹の経に留まるを刺する者あり。黄帝曰く、三変を刺するは奈何?
伯高答えて曰く、営に刺す者は、血を出す。
衛を刺す者は、氣を出す。
寒痺に刺す者は、内に熱す。

黄帝曰く、營、衛、寒痺の病を為すこと奈何?
伯高答えて曰く、營の病を生ずる也、寒熱、少氣して、血上下に行く。
衛の病の生ずる也、氣痛むこと時に来たり時に去る、怫愾賁響して、風寒が腸胃の中に客する。
寒痺の病の為す也、留りて去らず、時に痛みて皮不仁。

黄帝曰く、寒痺を刺して内に熱すること奈何?
伯高答えて曰く、布衣を刺する者、火を以ってこれを焠す。
大人を刺する者、薬を以ってこれを熨する。

黄帝曰く、薬熨なるは奈何?
伯高曰く、淳酒二十斤、蜀椒一升、乾姜一斤、桂枝一斤を用い、
凡そ四種、みな㕮咀して、酒中に漬け、綿絮一斤、細白布四丈を用い、并に酒中に内れ、
酒を馬矢の熅中に置く、蓋に封して塗りて泄らしむる勿れ。
五日五夜に、布綿絮より出して、曝してこれを乾す。乾して復た漬ける。
以ってその汁を盡す、漬る毎に必ずその日に晬す。
乃ち出して乾かし、乾して并に滓と綿絮を用い、複布を複巾と為し、長さ六七尺、六七巾と為せば、則ちこれを用う。
生桑炭にて巾を炙り、以って寒痹の刺す所の處を熨す。
熱をして入れて病所に至らしめる、寒せば復た巾を炙りて以ってこれを熨す、三十遍して止める。
汗出れば巾を以って身を拭い、亦三十遍にして止める、起きて歩く内に中に風を見ること無し。
刺す毎に必ず熨する、この如くにて病已る。
これ所謂熱を内れる也。

衛気・営気に対する鍼法

鍼刺に三つの変あり

鍼法・刺法に三つの方法があるという。
一つは衛氣に対する刺法。二つめは営氣に対する刺法、三つめが寒痹に対する刺法である。

衛氣に対する刺法は「気を出す」とあるように、無形の気に対するアプローチである。
営氣に対する刺法は「血を出す」とあり、有形の血に対するアプローチを示している。
この点は、いささか他の論篇における営氣の性質と異にするようであるが、馬蒔は「営気は血に化する(営衛生会篇)」や「調経論」の刺法を根拠としている。
確かに調経論では気(衛氣)と血とを対比しているようにみえる。
詳しくは『素問 調経論篇第六十二の書き下し文』の③氣は衛に、血は営に…を参照されたし。

もう一つ、寒痹に対する刺法は経に居座る寒邪に対する治法を詳解している。
ちなみに寒痺の刺法については、次篇(官鍼篇)に痺氣痛去らざるは毫鍼を以て取るとあり、營衛と毫鍼治療について書かれている。官鍼篇を参照されたし。

本篇の後半は熨法について詳しく書かれている。

熨法とは見慣れない言葉であろうが、日常的に使っている治療法ともいえる。

ここでは布衣(平民)には焠刺する。
焠刺とは次篇の官鍼篇にも説明があるが、火鍼・燔鍼である。
そして大人(やんごとなき人)には薬熨法を行うとある。

なるほど、皮膚軟弱な高貴なお方には、火鍼・燔鍼は不適あるという。
現代日本人にもそのまま使えそうな熨法である。
薬熨法の生薬配合は本文を参考にされたし。

根結篇第五 ≪ 壽夭剛柔篇第六 ≫ 官鍼篇第七

黄帝問於少師曰、余聞人之生也、有剛有柔、有弱有強、有短有長、有陰有陽、願聞其方。
少師答曰、陰中有陽、陽中有陰、審知陰陽、刺之有方。
得病所始、刺之有理。謹度病端、與時相應、内合於五藏六府、外合於筋骨皮膚。
是故内有陰陽、外亦有陰陽。
在内者、五藏為陰、六府為陽。
在外者、筋骨為陰、皮膚為陽。
故曰、病在陰之陰者、刺陰之榮輸。
病在陽之陽者、刺陽之合。
病在陽之陰者、刺陰之経。
病在陰之陽者、刺絡脈。
・・・・・(中略)・・・・・黄帝曰、余聞刺有三變、何謂三變?
伯高答曰、有刺營者、有刺衛者、有刺寒痹之留経者。黄帝曰、刺三變者奈何?
伯高答曰、刺營者、出血。刺衛者、出氣。刺寒痺者、内熱。黄帝曰、營衛寒痺之為病奈何?
伯高答曰、營之生病也、寒熱少氣、血上下行。
衛之生病也、氣痛時来時去、怫愾賁響、風寒客於腸胃之中。
寒痺之為病也、留而不去、時痛而皮不仁。

黄帝曰、刺寒痺内熱奈何?
伯高答曰、刺布衣者、以火焠之。刺大人者、以薬熨之。

黄帝曰、薬熨奈何?
伯高曰、用淳酒二十斤、蜀椒一升、乾姜一斤、桂枝一斤、凡四種、皆㕮咀、漬酒中、用綿絮一斤、細白布四丈、并内酒中、置酒馬矢熅中、蓋封塗勿使泄。
五日五夜出布綿絮、曝乾之。乾復漬、以盡其汁、毎漬必晬其日。
乃出乾、乾并用滓與綿絮、複布為複巾、長六七尺、為六七巾、則用之。
生桑炭炙巾、以熨寒痹所刺之處。
令熱入至於病所、寒復炙巾以熨之、三十遍而止。
汗出以巾拭身、亦三十遍而止、起歩内中、無見風。
毎刺必熨、如此病已矣。
此所謂内熱也。

鍼道五経会 足立繁久

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