鍼道五経会の流儀「診鍼一致」「診鍼一貫」

鍼道五経会の流派

当会の鍼灸はどんな流派にあたるのか?ということについて言及しておこう。

当会の鍼灸はいわゆる伝統鍼灸・東洋医学系に類する鍼灸である。
明清代までの中国医学、江戸期までの日本の医学を主に学び、鍼灸治療に活かすことを当会勉強のテーマとしている。
伝統医学を学ぶことで多様な病理観・治療観を博く学ぶのである。

鍼道五経会の技術

診法としては望聞問切いわゆる四診を用いるが、特に切診の中に属する脈診を用い学んでいる。脈診には陰陽多様な世界観が含まれるからだ。

鍼の技術では毫鍼・鍉鍼などを用い、刺鍼技術としては管鍼法も撚鍼法も用いる。九鍼すべてを用いることはないが、どんな鍼法も否定はしない。

写真上:管鍼法による刺鍼(切皮の瞬間)
写真下:撚鍼法による刺鍼
 

当会が大事にしているのは「どの鍼・どの技術を用いるか?」ではなく「その技術の背景にはどのような理論があるのか?」である。
どの技術にもそれを裏付ける理があるものだ。それを術理という。術理のない技術はあくまでも表層的なものであり、技術を自在に使いこなすには術理の会得が必須である。
当会が推奨する術理が【診鍼一致・診鍼一貫】である。この考えについては『医道の日本』2020年6月号にて紹介させていただいた。

「診鍼一致」「診鍼一貫」について改めて当記事にて紹介させていただこう。

診鍼一致・診鍼一貫とは?

診法にも鍼法にも陰陽がある。陰の診法・陽の診法、陰の鍼法・陽の鍼法といったところだ。

陰陽とは“有形と無形”の対比・分類のことである。四診にも陰陽があり、望聞問切は同じものを診ているわけではないのだ。
最も分かりやすい診法対比に望診と腹診がある。望診(いわゆる氣色診)は無形の診法であり、腹診は有形の診法であるという対比は分かりやすいだろう。

異なる層を対象とする各診法から得られる情報が一致しないのは当然である。この各診法における差分をいかに処理し分析するかが診断なのである。
これら診法の意義を知り、各診法から得られる差分を理解し診断することを当会では学ぶ。

そして鍼法にも陰陽(有形と無形)の違いがある。

 
写真:押手で把持する鍼。鍼管の有無で氣の動きは異なる

『鍼とは何に対して効かせるものなのか?』言い換えると『自分は何に対して鍼を効かせようとしているのか?』
この鍼の対象が分かっていないとせっかくの鍼術も宝の持ち腐れとなる。つまりは鍼術における術理である。
上記の「当会ではどんな鍼法も否定しない」の意味はここにある。
鍼法や技術はどこで学んでもよい、また好む鍼法・各々の職場環境に応じた鍼法を用いればよいのだ。

当会で伝え、重視することは“鍼法の意味”すなわち術理である。
衛氣に対する鍼、営氣に対する鍼、水を介する鍼、血に対する鍼…とそれぞれ異なる鍼法がある。それを弁えて鍼治療を組み立てるのが臨床における鍼灸師の仕事なのだ。

これを分かりやすく表現した結果「衛気タイプの鍼灸師」「営気タイプの鍼灸師」「水タイプの鍼灸師」「血タイプの鍼灸師」といった分類を用いることとなった。

そして診法や鍼法に陰陽・氣血水の分類があるように、病態にも陰陽・氣血水の別がある。さらにいうと患者自身にも同様の個性タイプ別がある。これらの分類や違いを察することで、より奥深い鍼灸の世界に分け入り遊ぶことができるのである。

脈診を入り口とした深く広い世界

脈診の中にも陰陽がある。陰の脈診・陽の脈診があるのだ。
脈診は他の診法に比して、多様な脈診の世界がある。脈診を学ぶということは多様な身体観・生命観を学ぶということなのだ。

当会が脈診に力を入れる理由はここにある。ただ診法を学ぶだけではない。
多様な脈診を通じ、生命観の多様性を学ぶことを当会では重要視している。

 

鍼道五経会 足立繁久

 

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