『一本堂行余医言』の聞声について

『一本堂行余医言』について

六診の3番目に紹介されているのが聞声(聞診)です。本文にもあるように、声を聞き分けるだけが聞診ではありません。患者さんが発する生理活動の音を聞きとるだけでも、病位を判断するヒントになることもあります。
本章では、聞診について実に詳細に記されています。読む人によっては臨床診断におけるヒントになるかもしれません。

※本文は早稲田大学図書館所蔵の『一本堂行余医言』より引用させていただきました。
※以下に書き下し文、次いで足立のコメントと原文を紹介。
※現代文に訳さないのは経文の本意を損なう可能性があるためです。口語訳は各自の世界観でお願いします。

『一本堂行余医言』 聞声

書き下し文・『一本堂行余医言』聞声

古、以て五音、宮・商・角・徴・羽を聞くことを為す者は、是に非ず也。凡そ聞く也者、病人の声の大小・高低・清濁・徐疾・爽亮嘶嗄・喜怒悲笑・弁利蹇渋を聴聞することを謂う。

又、呼吸の氣息・鼻音・喘鳴・鼾欠・呻吟・噴嚏・欬嗽・噫噦・乾嘔・痰声・腹鳴・譫語・鄭声・狂言・妄語を聴く。其の余、韻響、耳に入るべき者は皆な爾り。
又、病人の臭を鼻嗅するも、亦た“聞(聞診)”の中の一候也。熱臭・膿臭・糞臭・溺臭・瘡臭・腐臭・腋臭・体氣陰臭・帯下臭・屎尿自利臭あり。
又、口氣を嗅で胃熱・結毒家・口舌咽喉の瘡爛を知るべし。
又、痘瘡に一種の臭あり。痢糞に軽重の臭あり。
又、死臭あり。
何ぞ五音を聞くに止まらん哉。

聞診は多岐にわたる診法

音は五音に分類されます。「宮・商・角・徴・羽」が五音です。聞診とは、この五音を聞くのではありません。『素問』『霊枢』の五行説を邪説だと否定し、「自我作古」という香川先生は、次のように聞診を説きます。
実際に耳を傾けるべきは「病人の声の大小・高低・清濁・徐疾・爽亮嘶嗄・喜怒悲笑・弁利蹇渋」であるといいます。

また「譫語・鄭声・狂言・妄語」と同じ系統の所見でも、敢えて分類している点にも注目です。これら所見を分類する意の一つとして「虚実の違い」があります。似たような所見・症候であっても、ちょっとした特徴の違いで実証と虚証とを分ける決定的なヒントになることもあるのです。

またちょっとした違いで病位を判断することもあります。たとえば、咳の音もその一つです。咳の他にも音声・呼吸音の出処を聞くことは診断における有益な情報となることもあるのです。

また「聞くこと」とは音声を聞くだけにあらず。臭いを嗅ぐこともまた「聞く」です。例えば「聞き茶」という言葉がありますが、茶葉の香りを嗅いで茶の質を確かめることを意味します。

また「臭い」の幅も広く、体臭だけでなく、多岐にわたって各種“臭い”を挙げてくれています。中でも「口氣」によって胃熱を診るというのは、わが子の口臭でよく確認したものです。

行余医言序 診候・望診問証 ≪ 聞声 ≫ 切脈按腹視背

鍼道五経会 足立繁久

原文 『一本堂行餘醫言』 聞聲

■原文 『一本堂行餘醫言』聞聲

古以為聞五音宮商角徴羽者、非是也。凡聞也者、謂聴聞病人之聲之大小高低清濁徐疾爽亮嘶嗄喜怒悲笑辨利蹇澁。又聴呼吸氣息鼻音喘鳴鼾欠呻吟噴嚏欬嗽噫噦乾嘔痰聲腹鳴譫語鄭聲狂言妄語、其餘韻響、可入耳者皆爾。又鼻嗅病人之臭、亦聞中之一候也。有熱臭膿臭糞臭溺臭瘡臭腐臭腋臭體氣陰臭帯下臭屎尿自利臭。又嗅口氣可知胃熱結毒家、口舌咽喉瘡爛。又痘瘡有一種臭痢糞有輕重臭、又有死臭。何止聞五音哉。

 

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