『中医臨床』9月号(182号)に論考「二十八宿からみた『霊枢』五十営篇の誤謬とその真意」を寄稿しました。
五十営の解説に二十八宿が登場する
前々稿『衛気の周行・営気の循環』で、営氣循環の法則-五十営-について論述しました。五十営という仕組みは、「脈度」「氣行」「刻数」の3つの条件を以て、営氣循環を見事に法則化したものです。
毎日・日夜・時々刻々と、営氣は人体を流れているのです。この営氣循環に支障が生じたとき、それが“病”であり、たゆまぬ営氣循環が停止したとき、それが“死”です。
「脈度」「氣行」「刻数」で構築される五十営という仕組みは、一見すると完璧のようにみえます。しかし五十営篇をみると、上記3条件だけでなく、実は「二十八宿」も記されています。
しかも、「五十営とは何ぞや?」という黄帝の問いに対し、岐伯先生がまっ先に答えたのが「二十八宿」なのです。
一見すると「二十八宿」と「二十八脉」とを対応させたようにみえますが、そのような解釈は岐伯先生に失礼というもの。その解釈には、実に数的な思考を要するのです。
五十営篇には誤謬がある!?
数的な五十営篇の解釈を試みると、五十営篇には誤謬が在ることがわかります。この誤謬について言及している歴代医家たちに、楊上善・楼英・馬玄台・張景岳・張隠庵がいます(筆者調べ)。
彼らは五十営篇の誤謬を証し、正しい解を導き出そうと各自の論説を残してくれています。本論考では僭越ながら、各医家の説を紹介しながら、各説の正誤、そして五十営篇の誤謬について解き明かしていきます。
楊上善の達観
楊上善が記した『太素』には五十営篇・本文に3つの修正点を記しています。
私見ですが、上記の医家たちの指摘と比べると、楊上善の着眼点は非常に優れています。「五十営」とは営氣循環の仕組みです。それを踏まえた上で、冷静に数値を修正し、呼吸時間にまで計算に入れているであろう楊上善の説は、他説と比べて白眉であると唸らされます。
両篇にちりばめられる営衛相随の布石
前稿でも「営衛相随」の理について触れましたが、本稿にとり上げた五十営篇においても、やはり「営衛相随」の理が数的に暗示されています。
これまで「営衛相随」の理を説く文を見つけられないかったのですが、文章により理ではなく、まさか数理的に「営衛相随」について示されているとは夢にも思いませんでした。
この感動は、『霊枢』五十営篇と衛氣行篇を読み解くことで得たものですね。
今回の論考で『営衛の法則』に関する論考三部作の区切りとなります。興味のある方は『中医臨床』(182号)をお買い求めください。
鍼道五経会 足立繁久
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