サケ(鮭)の食物本草情報

ゴケイメシに鮭(サケ)

11月の講座【生老病死を学ぶ】の打ち上げ・ゴケイメシでは、秋鮭をメインに料理&宴を行いました。今年は鮭の不漁が話題になっています。スーパーで購入したのはアトランティック・サーモン…なので国産の鮭ではありませんが、脂の乗ったキレイな鮭です。

そんな鮭を使って、鮭の炊き込みご飯にして美味しくいただきましたよ。


写真:大ぶりの鮭の切り身をドンッ!!


写真:キノコの一緒に炊き込んで秋味を出しました。


写真:事前に筋子をゲット!!


写真:筋子の醤油漬けも仕込んでおきます。

写真:鮭の炊き込みご飯にイクラを投入!鮭の親子丼です。

とっても美味しくいただきました…。
それでは胃袋だけでなく、知識も満たすとしましょう。ここからは鮭の食物本草情報です。
出典資料は『閲甫食物本草』(名古屋玄医 1669年序)、『公益本草大成』(岡本一抱 著 1698年)、『日養食鑑』(石川元混 著 1819年)、そして『魚鑑』(武井周作 著 1831年)です。

サケ(鮭)の食物本草情報

まずは『閲甫食物本草』(名古屋玄医 1669年序)からの鮭(サケ)情報です。

『閲甫食物本草』に記される鮭(サケ)の効能

順(源順)が『和名集』に曰く、崔禹錫が『食経』に云う、鮭(折青の反、和名佐介(さけ)、今按ずるに俗に鮭の字を用いる、非也。鮭の音は圭、鯸鮔魚の一名也)。其の子、苺に似て(音茂。今按ずるに苺子は即ち覆盆也。『唐韻』に見る)赤く光る。一名“年魚”、春生れて年中に死す。故に之を名づく。
○閲甫が曰く、今の医は鱖魚、或いは鰱魚を以て佐介と為し、而して其の性味を言う。太だ非なり。
順(源順)が説く所を以て之を見るときは、則ち俗に謂う佐介なるを甚だ明らか也。故に其の氣味及び病を試むる所を以て、詳らかに其の能毒を左の如くに記す。
又曰く、林春徳の筆談に云く、朝鮮の進士、石湖に問うて云く、此れ夕盤肴に鮭魚あり、乃ち指して之を示す。云く貴国に之有りや。我国にも亦た之有り。鰱魚と名くとも而して後に朝鮮の許浚が『東医宝鑑』を閲するに、湯液の二に云く、鰱魚、性平、無毒、味亦た甘美。卵は真珠の如く而して微紅色、味は尤も美し。東北江海中に生す。
其の卵が真珠の如しと謂うときは、則ち似たるが如しと雖も、実は然らざる者也。大抵、朝鮮人が来朝の時、物を問う、中らざる者多し矣。未だ之を信ずるに足らず。
氣味、淡温、無毒。
脾を補い、心肝を益し、血を盛んにす。
腸疽・痔漏及び一切の瘡腫の者に之を忌む者は血を盛んにすれば也
虚労の者、微しく食うべし、多食すべからず。(閲甫)

乾鮭(からさけ)

之を生塩(生鮭塩鮭)に比すれば則ち少しく劣れり。諸魚、塩(塩漬け)は生(生魚)より無毒にて、乾(干物)は塩(塩漬け)より勝れり。特(ひと)り乾鮭は消化し難し。烹調を謹まざるときは則ち多くは脾胃を妨げる。
是れを以て脾胃虚して化し難きの人、之を食することを忌む。虚弱の者、能く水に漬すこと五六日、煤黴を洗除し、煮柔にして少く食して可なり。多食すべからず。
痔漏する者、大いに之を忌む。乾鮭及び新酒を食して、已に一年に及ぶときは則ち必ず痔を発す。(閲甫)

■原文
順和名集曰、崔禹錫食経云、鮭(折青反、和名佐介、今按俗用鮭字非也。鮭音圭、鯸鮔魚の一名也)。其子似苺(音茂、今按苺子即覆盆也。見唐韻)赤光。一名年魚、春生年中死。故名之。
○閲甫曰、今醫以鱖魚或鰱魚為佐介、而言其性味、太非。以順㪽説見之、則俗謂佐介甚明矣。故以其氣味及㪽試病詳記其能毒如左。
又曰林春徳筆談云、問朝鮮進士石湖云、此夕盤肴有鮭魚、乃指示之、云貴國有之乎。我國亦有之。名鰱魚而後閲朝鮮許浚東醫寶鑑、湯液二云、鰱魚性平無毒味亦甘美、卵如真珠而微紅色、味尤美。生東北江海中。其謂卵如真珠、則雖如似、實不然者也。大抵朝鮮人来朝時問物、多不中者矣。未足信之。
氣味淡温無毒、補脾益心肝盛血、腸疽痔漏及一切瘡腫者忌之者盛血也。虚勞者微可食不可多食。(閲甫)
乾鮭
比之生塩則少劣、諸魚塩無毒於生、乾勝於塩。特乾鮭難消化。烹調不謹則多妨脾胃、是以脾胃虚難化之人忌食之。虚弱者能漬水五六日洗除煤黴、煮柔少食可矣。不可多食。痔漏者大忌之。食乾鮭及新酒、已及一年則必發痔。(閲甫)

鮭(佐介・サケ)の情報として

本文をみるに「鱖魚、或いは鰱魚を以て佐介(サケ)と為し、而して其の性味を言う。」とあり、「鱖魚」「鰱魚」を鮭(サケ)と同一の魚種としてみていたようです。
しかし、玄医先生は「太非」、それは誤りだ!と指摘しています。

この「鱖魚」は『本草綱目』巻四十四 鱗部三に掲載されています。(鰱魚については未確認です)しかしこの「鱖魚」…『本草綱目』では、別名「水豚」であったり、「鱖生江湖中」との情報があり、鮭と同一とするには難しく(確かに鮭も孵化後しばらくは河川に生息しますが)、玄医先生の言うように「鱖魚はサケではない」と考えるべきでしょう。

他にも『東医宝鑑』(許浚)に記される内容に関してなど諸々記されていますが、ここでは割愛します。

さて、玄医先生が提示する「鮭」の食物本草能は「脾を補い、心肝を益し、血を盛んにす。」とあります。
さらに「腸疽・痔漏及び一切の瘡腫の者に之を忌む者は血を盛んにすれば也。」との注意書きもあります。これは補血能が非常に強いことを示唆しています。「虚労の者、微しく食うべし、多食すべからず。」この戒めも覚えておくべきことでしょう。

『公益本草大成』に記される鮭(サケ)の効能

甘淡小温
脾胃を助け、心肝を益し、血を行らす。
瘡家に用いること勿れ。
(鱖魚、鰱魚を以て、佐介(サケ)と訓すと雖も、非也。
乾鮭は消化し難し、瘡家は食することを禁ず。)

■原文

甘淡小温。助脾胃、益心肝。行血勿用瘡家。(以鱖魚、鰱魚、雖訓佐介、非也。乾鮭難消化、瘡家禁食。)

※鱖魚は別條にあり。

鱖魚(チツ・サケ)
甘平
去腹内悪血、小蟲。益氣力、補虚勞、益脾胃。治瀉血調風。

一抱先生が記す鮭の食物本草能も、上記『閲甫食物本草』と同じですね。

『日養食鑑』に記される鮭(サケ)の効能

さけ 鮭

甘鹹、毒なし。
中を温め、氣を壮んにす。多食すれば火を動し瘡を発す。
○さけしおびき
生肉は病を動す。しおびき(塩引)と作ば氣味大に軽し。
○はららこ 肉と同じ

■原文
甘鹹、毒なし。
中を温め、氣を壯にす。多食すれば火を動し瘡を發す。
○さけしほびき
生肉は病を動す。しほびきと作ば氣味大に輕し。
○はらゝこ 肉と同じ

元混先生もまた、鮭がもつ補益能の強さを記しています。
「中を温め、氣を壮んにす。多食すれば火を動し瘡を発す。」、上記二書(『閲甫食物本草』『公益本草大成』)の「脾・心・肝」を補うという情報に比べて「中焦を温める」と、温補の対象範囲は広く記されています。
しかし補血の能が強い点は「多食すれば火を動し瘡を発す。」とのことも上記二書と同じといえましょう。

また『日養食鑑』では「塩引き鮭」と「はららこ(筋子・いくら)」についても言及されている点が興味深いですね。ちなみに“塩引き鮭”と通常の“塩鮭”は同じものではないそうです。

次に『魚鑑』(武井周作 著 1831年)をみましょう。

『魚鑑』におけるまぐろ情報

さけ

『和名抄』に出づ。『崔氏食経』に鮭。その子、苺に似て赤光あり。一名年魚(ねんぎょ)。春生れてその年に死す。ゆえに名づく。俗に鮭の字を用ゆ。鮭は鯸鮐(こうい)の一名ありて、さけにあらず。按するに生圭(せいけい)似て誤まるなるべし。
奥羽(むつ・でわ)
多く産す。松前・蝦夷尤も美し。東都(えど)の鮮鮭(なまさけ)は利根川をよしとす。就中(なかんづく)布川村尤も美し。今、東奥(ひがしむつ)出るもの、四方(しょこく)に通商(あきなひ)して到らざるところなし。
『神祇式』に所謂(いわゆる)内子鮭(こごもりさけ)は、今仙台より出る所の子籠(こごもり)の塩引(しをひき)なり。その頭骨(かしらほね)を“ひづ”という。即ち脳骨(かしらほね)にして氷の澄徹(すきとお)る如きものなり。
又、鮭背調(さけのみなわた)あり、『和名抄』に“みなわた”と訓す。共に丹後・信濃・越中・越後、これを貢(みつぎ)す。その䱊(こ)を“はららご”といい、胞(ふくろ)を連(つらね)て醃(しをつけ)するを筋子、或は甘子(あまこ)という。

[氣味]甘微温、毒なし。
[主治]中を温め、氣を壮んにす。多く食えば、痰を発す。

■原文
和名抄に出づ。崔氏食経に鮭。その子苺に似て赤光あり。一名年魚。春生てその年に死す。ゆへに名づく。俗に鮭の字を用ゆ。鮭は鯸鮐の一名ありて、さけにあらず。按するに生圭似て誤るなるべし。奥羽多く産す。松前蝦夷尤も美し。
東都の鮮鮭は利根川をよしとす。就中布川村尤も美し。今東奥出るもの、四方に通商して到らざるところなし。
神祇式に㪽謂内子鮭は、今仙臺より出る㪽の子籠の塩引なり。その頭骨をひづといふ。即脳骨にして氷の澄徹る如きものなり。
又鮭背腸あり、和名抄にみなわたと訓す。共に丹後信濃越中越後、これを貢す。その䱊をはらゝごといひ、胞を連て醃するを筋子、或は甘子といふ。

[氣味]甘微温毒なし。
[主治]中を温め、氣を壯んにす。多食へは、痰を発。

『魚鑑』に記載される鮭(サケ)情報は上記三書(『閲甫食物本草』『公益本草大成』『日養食鑑』)と大きな差異はないようです。

鮭がもつ温補の壮氣の力は、秋冬に食するに良い食材といえますね。しかし、外寒によって束表されやすい季節・秋冬に、このような食材を多食することも注意しないといけません。ですので、薬味や食べ合わせに工夫を要するといえるでしょう。

鍼道五経会 足立繁久

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