ナマコ(海鼠)の食物本草能

ゴケイメシでなまこ(海鼠)

1月の講座【生老病死を学ぶ】の打ち上げ・ゴケイメシでは、なまこを使った献立「ナマコの炊き込みご飯」をいただきました。海鼠は、海の人参(海参)としての効能がある、という情報を以前に読んだことがあるので、ナマコが市場に出回ってるうちに食してみたかったのです。そして、せっかく食べるならいつもとは違うレシピで…ということで、ナマコの炊き込みご飯に挑戦しました。

英語では海のキュウリ(sea ​​cucumber)、薬膳では海の人参、果たしてその真実は如何に?
記事後半にナマコの食物本草情報を紹介しています。

ナマコの炊き込みご飯のレシピ

ナマコ炊き込みご飯のレシピはネットでもみられますが、一応、MEMOを残しておきます。

ナマコの炊き込みご飯のレシピ

■ 材料

・お米(3合)
・ナマコ (約150g 一匹)
・出汁昆布 (大一枚)
・日本酒(だばだば)
・白出汁(ふた回し)
・醤油(ひと回し)

1,お米を研ぎます

2,出汁昆布を投入、日本酒をまぁまぁ多めにダバダバーと入れます。白出汁はふた回し、醤油はひと回しいれます。
素材のナマコの味が弱そうなので、味付けを強めにしました。

3,水を足して、普通に土鍋で炊く要領で炊きます。

4,日本酒、白出汁、醤油を多かったのか、すこしお焦げができやすいかもです。

5,おこげの香りがしてきたので、そこから混ぜて蒸らして、最後に葱を散らして完成です。



写真:具はナマコのみのシンプルな炊き込みご飯

写真:打ち上げというより、これはもう晩ご飯(笑)

さて、気になる「ナマコの炊き込みご飯」の感想は…
『思っていた以上に旨い!』
『シンプルな味だけど美味!』
『出汁強め、日本酒をダバダバ入れたせいもあってか、少しの甘味と旨味、海鼠のコリコリが優しくなっていて食べやすい!』でした。

土鍋炊き込みご飯ランキング(ゴケイメシ調べ)でも上位に入る満足度でした。
ちなみにランキング 1位は「セコガニの炊き込みご飯(セコ飯)」
続く2位は「牡蠣の炊き込みご飯」、そして3位は「トウモロコシの炊き込みご飯」です。これ以外にも「むかご入り栗ごはん」「鮭の炊き込みご飯」「ショウガご飯」なども土鍋で炊きましたが、どれも美味!ただ1位~3位の品は、何年たってもその味を思い出せるほど美味しさでした。

さて、胃袋が満たされた後は、知識欲を満足させましょう。ここからはナマコ(海鼠)の食物本草情報です。
出典資料は『閲甫食物本草』(名古屋玄医 1669年序)、『公益本草大成』(岡本一抱 著 1698年)、『日養食鑑』(石川元混 著 1819年)、そして『魚鑑』(武井周作 著 1831年)です。

ナマコ(海鼠・海参・沙𩻝・沙噀)の食物本草情報

まずは『閲甫食物本草』(名古屋玄医 1669年序)からの鮭(サケ)情報です。

『閲甫食物本草』に記されるなまこ(海鼠・いりこ・このわた)の効能

海鼠(なまこ)

『和名集』に曰く、崔禹錫が『食経』に云う、海鼠は蛭に似る而して大なる者也、和名、“古(こ)”。『本朝式』に“熬”の字を加え、“伊里古(いりこ)”と云う。此れを以て之を見れば、則ち海鼠なること明けし。俗に所謂(いわゆる)“奈万古”なり。
然れども或いは海参を以て“奈万古”と為す者、之有り。其の由る所を考えるに、野間三竹、朝鮮国の医師信甫というものに会して筆談に曰く(※1)、静(※2)に平魚・那麻古の二物を出して指して之を示して曰く、此の二物は上国に在る者。其の名は如何?本草に於いて何の魚なるや?答えて曰く吾が邦、二十余年前に許浚という者あり、『東医宝鑑』二十五巻を作す。其の中、本草三巻あり。虫魚の部に之有り、海参と名づく。即ち日本の産する所の那麻故(なまこ)也。平魚というは吾邦の常に掉尾と称す。未だ其の詳なることを知らず。
間(このころ)嘗つて『東医宝鑑』を閱歴するに、海参無し。抑々脱簡か。又将(はたまた)信甫が静(静軒)を欺くか。
謝肇淛が『五雜俎(五雑組)』物の部に曰く、海参は遼東海浜に之有り。一名は海男子。其の状、男子の勢(へのこ)の如く然り。淡菜(イガイ・貽貝)の対なり。
其の性、温補、人参に敵(匹敵)するに足れり。故に海参と曰う。肇淛が言う所の若(ごと)くは、則ち淡菜は介類(貝類)也。然るときは則ち海参も亦た介類なり。且つ又、奈万古(なまこ)其の性は寒决して、温補に非ざる者也。
氣味鹹寒、毒無し。痰を聚め、胃を傷る。多食すべからず。(閲甫)

熬海鼠(いりこ)
氣味鹹平、毒無し。
諸病に之を忌まず。能く煮熟して之を用う(閲甫)
按ずるに東井(※3)の曰く、虫を殺し、氣を下し、湿痰を去る。久病の人は多食すべからず(とある)。海鼠の性は微寒、何を以てか湿痰を去らんや。虫を殺するも亦た未だ其の証を見ず、信ずるに足らざるなり。凡そ今の医、串鰒(くしあわび)熬海鼠(いりこ)等を用いて、飪烹して謹まず未だ熟せざる者を、産後・脾血弱の者に之を用いれば則ち必ず腹痛み泄瀉し遂に救わざるに至る。而して此の物、産後に必ず之を忌みて与えず。嗚呼、此の物に何の毒有らん!未だ熟せずして堅きに因りて化し難し。是れ以て腹痛を発す。若し苟しくも能く熟し柔にして之を与えれば、何の害あらんや。此れ等の類、酷だ多し。学者、夫れ之を思え。
海鼠腸(このわた)
氣味鹹微寒、毒無し。痰を聚む。脾胃虚寒の者は食うべからず。(閲甫)

※1;『野間三竹年譜稿』(伊藤善隆)には、「寛永十三年(1636年)十一月十七日 来朝した朝鮮通信使の学士権侙、医師由判事士立信甫と筆談、律詩を唱和する。」とある。
※2;「静」とは野間三竹の別号「静軒」のことか。
※3;「東井」おそらくは曲直瀬玄朔のこと。

■原文
和名集曰、崔禹錫食経云、海鼠似蛭而大者也、和名古本朝式加熬字云伊里古以此見之、則海鼠明。俗㪽謂奈万古矣。然或以海參為奈万古者有之。考其㪽由野間三竹會朝鮮國醫師信甫筆談曰、静出平魚那麻古二物指示之、曰此二物、在上國者其名如何於本艸何魚乎。答曰吾邦二十餘年前有許浚者作東醫寳鑑二十五巻、其中有本艸三巻、虫魚部有之、名海參。即日本㪽産那麻故也。平魚者吾邦常称掉尾。未知其詳間嘗閱歴東醫寳鑑無海參。抑脱簡耶。又將信甫欺静耶。謝肇淛五雜俎物部曰、海參遼東海濵有之。一名海男子其狀如男子勢、然淡菜之對也。其性温補𠯁敵人參。故曰海參。若肇淛㪽言則淡菜介類也。然則海參亦介類矣。且又奈万古其性寒决、非温補者也。氣味鹹寒無毒聚痰傷胃不可多食。(閲甫)

熬海鼠(いりこ)
氣味鹹平無毒。諸病不忌之。䏻煮熟用之(閲甫)
按東井曰殺虫下氣去濕痰、久病人不可多食。海鼠性微寒、何以去濕痰耶。殺虫亦未見其證不𠯁信焉。凡今醫用串鰒熬海鼠等、飪烹不謹未熟者、産後脾血弱者用之、則必腹痛泄瀉遂至不救、而此物産後必忌之不與焉。呼、此物有何毒乎。因未熟而堅、難化。是以發腹痛。若苟䏻熟柔與之、何害哉。此等類、酷多。學者夫思之哉矣。
海鼠腸
氣味鹹微寒無毒。聚痰、脾胃虚寒者不可食。(閲甫)

なるほど、これまでは『ナマコ(海鼠)は別名「海参」とも呼ばれ、その所以は人参に薬能が近いから…』と記憶していましたが、そうではないようです。玄医先生は、人参の性は温補、しかしナマコの性は鹹寒。性質がまったく異なるではないか!と主張しています。

海鼠の効能として「痰を聚め、胃を傷る。多食すべからず。」と、無毒ではあるものの、良い所の見当たらない食材といえます。この食物本草能(薬膳的効果)は、海鼠だけでなく、いりこ・このわたも同様に記されています。

「ナマコ=海参」説…けっこう期待していたのですが…。では次に岡本一抱の『公益本草大成(和語本草綱目)』からナマコ情報をみてみましょう。

『公益本草大成』に記されるナマコ(沙𩻝・海参・このわた)の効能

沙𩻝(さそん・なまこ)鹹寒
熱を涼まし、酔を解す。痰を生じ、胃を冷やす。病家、小児は食することを禁ず。
海参(いりこ) 鹹平
氣を下し、胃を利す。煮熟して軟なる者は病家にも亦た少しく用う。多食すれば此れも亦た痰を聚める。
腸(このわた) 鹹寒
痰を生じ、胃を冷やす。妄りに食すること勿れ。

■原文
沙𩻝 鹹寒
涼熱解醉生痰冷胃。病家小兒禁食。
海参(いりこ) 鹹平
下氣利胃煮熟軟者病家亦少用。多食此亦聚痰。
腸(このわた) 鹹寒
生痰冷胃、勿妄食。

名古屋先生にナマコ情報に比べると、一抱先生が記すナマコの食物本草能は、まだ少し良い所がありますね。寒性をもつため、熱を涼まします。そのため酒酔いを覚ます効能もあるようです。酒の肴にピッタリですね。しかし、寒性をもつため「生痰・冷胃」の副作用が懸念されます。それゆえに病家・小児には禁食とあるわけです。

珍味と称される“このわた”も同様に「生痰冷胃」の性質が記されています。“このわた”をアテに日本酒は、どちらもチビリチビリ…とやるのが健康的なのです。

次に『日養食鑑』をみてみましょう。

『日養食鑑』に記されるナマコ(沙)の効能

なまこ 沙噀

鹹寒、毒なし。
血を涼し、髪を黒くし、上焦の積熱を去り、下焦の邪火を消す。
又、頭上の白禿、及び凍瘡(しもやけ)を治す。多食すれば下利を発す。
○河豚の毒を解す。

■原文
鹹寒、毒なし。
血を涼し髪を黑し、上焦の積熱を去り、下焦の邪火を消す。又頭上の白禿及凍瘡を治す。多食すれば下利を發す。
○河豚の毒を觧す。

元混先生もナマコの寒性を推しています。しかし、上記二書に比べると、ナマコの良い所が書き足されているようにみえます。

まず清熱の効能として「血を涼まし、上焦積熱を去り、下焦邪火を消す」が挙げられています。
また「髪を黒く」するのは補腎を性質を示唆しているのでしょうか。他にも「多食すれば下利を発す」これは「冷胃」の性質であったり、消化に悪かったりする性質を含めているのでしょう。

次に『魚鑑』(武井周作 著 1831年)をみましょう。

『魚鑑』におけるナマコ情報

なまこ

『食経』に海鼠の字を“こ”と訓ず。生海鼠、漢名「沙噀(しゃそん)」。『雨航雑録』にみゆ。処々に産す。相武に尤も多し。
黒色のもの味い美し。黄色なるは劣れり。その蒸し乾かすを熬海鼠(いりこ)という。漢名「海参」。その効、人参にひとしきゆえ名づく。
又、海男子(うみおとこ)状(かたち)男勢(へのこ)のごときゆえ名づく。海夫人(うみおんな)の対なりという。(※中華食材では海男子をナマコ、海夫人をばい貝という)
『延喜主計式』に、隠岐・筑前・肥前・能登貢(みつぎ)す。今、奥州金花山の瀕りに出るを“きんこ”とて、世にこれを賞す。凡そ串に貫ぬくものは“くしこ”、藤に貫ぬくものは“からこ”という。
氣味、鹹平毒なし。稲稈(わら)塩油を畏る、
主治、胸膈(むねのうち)を開き、小水を利し、ふぐの毒を伏(け)す。いりこ、くしこ、からこ、きんこは元氣を補い、五臓六府を滋し、三焦の熱を去り、又、あひると共に煮食えば労損諸疾を療し、髪を烏し、骨を固くす。
色赤きをあかなまこという。凍瘡(しもやけ)に摺り付けてよし。
○このわた、『延喜主計式』に能登貢(みつぎ)す。今、諸国出すといえとも、参州柵の島を上とす。尾州これに次ぎ、武州杦田ははなはだおとれり。

■原文
食経に海鼡の字をこと訓ず。生海鼡漢名沙噀、雨航雜録にみゆ。處〃に産す。相武に尤多し。
黒色のもの味ひ美し。黄色なるは劣れり。その蒸し乾すを熬海鼡といふ。漢名海参、その効人参にひとしきゆへ名づく。又海男子状男勢のこときゆへ名く。海夫人の對なりといふ。延喜主計式に、隠岐筑前肥前能登貢す。今奥州金花山の瀕りに出るを、きんことて、世にこれを賞す。凡串に貫ものはくしこ、藤に貫ものはからこといふ。
氣味、鹹平毒なし。稲稈塩油を畏る、
主治、胸膈を開き、小水を利し、ふぐの毒を伏す。いりこ、くしこ、からこ、きんこは元氣を補ひ、五臓六府を滋し、三焦の熱を去り、又あひると共に煮食へは労損諸疾を療し、髪を烏し、骨を固ふす。色赤きをあかなまこといふ。凍瘡に摺り付てよし。
○このわた延喜主計式に能登貢す。今諸国出すといへとも、参州柵の島を上とす。尾州これに次ぎ、武州杦田ははなはたおとれり。

『魚鑑』に記載されるナマコ情報でも、ナマコの良い所がみられます。

「胸膈を開き、小水を利」する効能は、水を逐う性質を持っているようです。この性質もまた酒の肴に佳しです。しかし「ふぐの毒を伏す」というのは(『日養食鑑』にもみられましたが)、ちょっと眉唾な情報ですね。実際に検証しようとも思わないことですが…。もし検証できそうなことといえば、「凍瘡(しもやけ)ナマコが効くのか?」という実験くらいでしょうか。しもやけにナマコをどうやって使うのだろうか…。

「いりこ、くしこ、からこ、きんこは元氣を補い、五臓六府を滋し、三焦の熱を去り、又、あひると共に煮食えば労損諸疾を療し、髪を烏し、骨を固くす。」という情報は、“海参”としての効能なのでしょう。

干しナマコ(いりこ)が海参の効能を持つという意見が『魚鑑』で確認できたことに安堵しました。しかし干海鼠…蒸して(或いは茹でて)乾燥させること一ヶ月…。自分で作るには手間がかかりそうですね。

鍼道五経会 足立繁久

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