まぐろの食物本草情報

4月の講座【生老病死を学ぶ】の打ち上げではマグロをいただきました。良いマグロ(青森産の本マグロ)が手に入ったからです。

ゴケイメシにマグロ三昧

写真:ホンマグロのカマ、入りました!

写真:お肉を取り出してもズッシリ重量級!

写真:マグロ三昧の宴


写真:マグロ頰肉にショウガ(多)、ニンニク(少)、白ワインで焼き、最後にあらびき胡椒を効かせて焼き上げました。

日本人も大好きなマグロ。今や中国人もマグロの旨さに気づいてしまった!?といわれるマグロですが、江戸時代の頃、マグロは下魚との扱い受け、または「シビ(当時のマグロの呼び名)」との名から、縁起の悪い魚として扱われていたとの話もあります。

さて、そんなマグロの食物本草情報をみてみましょう。出典資料は『日養食鑑』(石川元混 著 1819年)と『魚鑑』(武井周作 著 1831年)です。
残念ながら『閲甫食物本草』(名古屋玄医 1669年序)にはマグロ情報は見つかりませんでした。

まぐろ(鮪)の食物本草情報

まずは『日養食鑑』(石川元混 著 1819年)からの鮪(まぐろ)情報です。

『日養食鑑』に記される鮪(まぐろ)の効能

まぐろ 金鎗魚

甘温、小毒あり。
然れども、虚を補い、人をして肥健ならしめ、筋骨を強くす。
多食すれば疥癬瘡癤を生じ、下血痔漏を発す。
○めぢか まぐろの小なる者なり。
甘平 毒なし。多く食べからず。

■原文
まぐろ 金鎗魚
甘温、小毒あり。然れども、虚を補ひ、人をして肥健ならしめ、筋骨を強くす。多食すれば疥癬瘡癤を生じ、下血痔漏を發す。
○めぢか まぐろの小なる者なり。
甘平 毒なし。多く食べからず。

しび 鮪
甘温、小毒あり。
虚を補い、人をして肥(こえ)健(すこやか)にせしむ
此の魚は味厚く、氣盛んなり。多食すれば瘡疥・悪腫を発す。

■原文
志び 鮪
甘温、小毒あり。
虚を補ひ人をして肥健せしむ
此魚ハ味厚く氣盛なり多食すれバ瘡疥悪腫を發す。

マグロの食物本草に関する情報としては「補虚、令肥健、強筋骨」と記されています。補氣血の能が強いため「多食すれば、生疥癬瘡癤、発下血痔漏」とのこともまた頷ける情報といえます。

またマグロのまたの名を「しび」と言いますが、「しび」の情報も載せておきます。
ちなみに、江戸時代は「しび」は“死日”に聞こえる縁起の悪い魚として敬遠されていた…そんな話もよく聞きますね。

次に『魚鑑』(武井周作 著 1831年)をみましょう。

『魚鑑』におけるまぐろ情報

まぐろ

京師に“はつ”の身、漢名しれず。清俗に黒鰻魚という。“しび”と一類別種。その数多し。
“しび”とよぶもの、『万葉集』に、鮪の字を用ゆ。
大なるもの、七八尺より一丈許にいたる。黒灰色、黄点あり。肉赤く、血点あり。味いよからず。肥前五島に多し。関東もあり、まぐろと称ぶるもの、青黒色、鱗やや細に、大なるは八九尺許。
又、小にして一尺内外なるを“めぢか”という。
鰭のはし黄色、肉淡赤きを“きはだ”とよぶ。秋のはじめを上とす。
又、ひれ短く肉色おなじきを“めばち”とよぶ。ひれ長きをびんながとよぶ。
肉色すこし薄く、又“かしとうし”あり。鼻骨檝に触るる時は貫くゆえにいう。
みな冬より、春にいたるまでを時とす。

[氣味]甘温小毒あり。
[主治]人を肥し、健ならしめ。虚を補う、多く食えば、疥癬を発す。

■原文
京師にはつの身、漢名しれす。清俗黒鰻魚といふ。しびと一類別種。その数多し。しびとよふもの、万葉集に、鮪の字を用ゆ。・大なるもの、七八尺より一丈許にいたる。黒灰色、黄点あり。肉赤く、血点あり。味ひよからず。肥前五島に多し。関東もあり、まぐろと称ふるもの、青黒色、鱗やや細に、大なるは八九尺許。又小にして一尺内外なるをめしかといふ。鰭のはし黄色、肉淡赤きをきはだとよぶ。秋のはしめを上とす。又、ひれ短く肉色おなしきをめばちとよぶ。ひれ長きをびんながとよふ。
肉色すこし薄く、又かしとうしあり。鼻骨檝に觸る〱时は貫くゆへにいふ。
みな冬より、春にいたるまでを時とす。

[氣味]甘温小毒あり。
[主治]人を肥し、健ならしめ。虚を補ふ、多く食へば、疥癬を發す。

『魚鑑』に記載されるマグロ情報は『日養食鑑』と大差ありません。

当時、獲られていたマグロの情報がわかる記録が魚好きにとっては興味深い情報です。

「めぢか(めじか)」とは、マグロの若魚。関西でいうヨコワのことですね。
「きはだ」とはキハダマグロのこと。
「めばち」はメバチマグロ。
「びんなが」はビンナガマグロ(ビンチョウマグロ)のこと。
いずれも今も市場にも流通しているマグロたちです。

面白いのは「かしとうし(かしとおし)」です。漢字に直すと「檝通し」でしょう。おそらくはカジキのことではないでしょうか。

ということで、江戸時代のマグロ情報でした。当時の人からすると、遠洋に船を出し海外のマグロが流通したり、マグロ養殖技術まで確立されることになろうとは予想もしなかったことでしょう。

鍼道五経会 足立繁久

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