咳嗽『小児薬証直訣』より

子どもの咳症状について

本記事では『小児薬証直訣』の咳嗽の章について紹介しています。子どもの咳症状も、小児はりの臨床ではよくみられる症状のひとつです。東洋医学、とくに五行的なみかただと“肺の病”の一択になるかもしれませんが、実際にはそんな単純な病症ではありません。
とはいえ、本章では「咳嗽」について、比較的シンプルにまとめてくれています。それでは本文を読んでいきましょう。


※画像は『類証注釈銭氏小児方訣』京都大学付属図書館より引用させていただきました。

※以下に書き下し文、次いで足立のコメントと原文を紹介。
※現代文に訳さないのは経文の本意を損なう可能性があるためです。口語訳は各自の世界観でお願いします。

『類証注釈銭氏小児方訣』 咳嗽

書き下し文・『類証注釈銭氏小児方訣』 咳嗽 第二十

夫れ嗽とは、肺が微寒を感じるなり。

八九月の間、肺氣大いに旺ず。嗽を病む者、其の病は必ず実する、久病に非ず也。其の証、面赤く、痰盛ん、身熱する。当に葶藶丸(百十)を以て之を下すべし。若し久しき者は、下すべからず也。

十一月十二月に嗽する者は、乃ち傷風の咳也。
風は背の脊第三椎肺兪の穴より入る也(第三椎下、両旁各一寸半是)。当に麻黄湯(百十一)を以て之を汗すべし。
熱証、面赤、飲水、涎熱、咽喉不利する者有り。宜しく甘桔湯(十六)を兼ね之を治すべし。
若し五七日の間、其の証、身熱、痰盛、唾粘なる者、楄銀丸(六十四)を以て之を下す。
肺の盛んなる者有り、咳嗽而して喘す、面腫れ、水を飲まんと欲す、水を飲まざる者有り、其の身は即ち熱なり、瀉白散(六)を以て之を瀉す。
若し傷風咳嗽して五七日、熱証無く、而して但だ嗽する者も、亦た葶藶丸(百十)之を主る。後に化痰薬を用う。
肺の虚する者有り、咳而して哽氣、時時長出氣、喉中に声有り、此れ久病也。阿膠散(七)を以て之を補う。
痰の盛んなる者、先ず脾を実する、後に楄銀丸(六十四)を以て微しく之を下す。涎退きて即ち肺を補う。肺を補うは上法の如し(即ち阿膠散)。
嗽而して水、或いは青緑水を吐く者有り、百祥丸(三十九)を以て之を下す。
嗽而して痰涎乳食を吐く者有り、白餅子(十九)を以て之を下す。
嗽而して膿血を咯する者有り、乃ち肺熱なり。食後に甘桔湯(十六)を服す。
久嗽する者、肺は津液を亡う、阿膠散(七)之を補う。
咳而して痰実し、喘すること甚ならず而して面赤く、時に飲水する者、楄銀丸(六十四)にて之を下すべし。

治嗽の大法、盛んなれば即ち之を下し。久なれば即ち之を補う。更に虚実を量り、意を以て増損す。

小児はりと咳症状について

小児はりの臨床では、子どもの咳症状もよく遭遇する症状のひとつです。
「何日も続く咳症状」
「熱は下がったのに咳だけ続く」
「喉に痰が絡んで咳が出る」
「夜間や明け方に咳が多い」
…などなどのお母さんからの訴えはよくきく問診情報です。

本章では子どもの咳嗽について説明されています。

咳嗽について

「夫嗽者、肺感微寒。」とあり、まず咳嗽とは「肺藏が寒邪を微感した病態」であることを示しています。このように咳嗽を定義した後、季節によって異なる咳嗽病態を説いています。寒邪が主体となる病であるため、季節(天氣)の移ろいは当然重要なファクターとなるのは必然です。

秋季・肺金の季節における咳嗽

最初に示されるのが「八九月間、肺氣大旺。病嗽者、其病必実、非久病也。……当以葶藶丸下之。若久者、不可下也。」といった文です。

「八月九月(旧暦)」は肺氣が旺盛となる時候です。そのため寒邪に感ずるとはいえ、ひどく寒邪に損傷を受けることはありません。それ故に「傷寒」という表現を採らず、「肺感微寒」としているのでしょう。

寒邪の影響を受けるとはいえ、肺氣は大旺しているため、「嗽」は実証であると説きます。それ故に「非久病」ともいえるのです。
また治法についても明示されており、実証の「嗽」には葶藶丸で下すべしとあります。
葶藶丸の生薬構成は「甜葶藶、 黒牽牛、杏仁、漢防已、陳棗肉、淡生姜」になります。下すといえ、大黄・芒硝などは含まれていないため、その対象は痰(水)と考えるべきでしょう。

秋季以降の咳嗽

まず「十一月十二月嗽者、乃傷風咳也。」「風従背、脊第三椎肺兪穴入也。当以麻黄湯汗之。」とあります。風邪(寒風)が背部・肺兪穴(おそらくは風門穴も)から入り、肺臓に影響を及ぼし、咳嗽症状を引き起こします。この病態を麻黄湯によって発表するのでしょう。

なぜ冒頭では「微寒」であったのが、11月12月の冬季では風邪とあったのでしょうか?
そもそも冬は寒邪が旺盛となる季節です。これに風邪が加わることで人体に対する影響力(傷害性)が強くなります。加えて、秋季を過ぎた人氣では、肺氣大旺の季節は過ぎており、肺(皮毛)は秋季に比べ、外邪が侵入しやすくなるのです。
さらに、セオリーでは寒冷邪は人体の下部から侵入するのですが、風邪に乗ることで人体上部からも侵入できます。故に背部(風門・肺兪)から侵入するのです。

以上の経緯を考えると、「十一月十二月嗽者、乃傷風咳也。風従背……」という文章の背景が理解できるのです。

この他にも、痰が絡む咳・咳き込んで嘔吐するケース・長引く咳……など、様々な咳症状の治法が示されています。

小児はりを実践する者として、熟知しておくべき情報といえるでしょう。

傷寒瘡疹同異瘡疹候吐瀉腎祛失音 ≪ 咳嗽 ≫ 黄疸相似 ≫ 諸疳

鍼道五経会 足立繁久

原文 『類證注釋錢氏小兒方訣』欬嗽

■原文 『類證注釋錢氏小兒方訣』欬嗽 第二十

夫嗽者、肺感微寒。八九月間、肺氣大旺。病嗽者、其病必實、非久病也。其證面赤、痰盛、身熱。當以葶藶丸下之百十。若久者、不可下也。十一月十二月嗽者、乃傷風咳也。風從背脊第三椎肺兪穴入也(第三椎下兩旁各一寸半是)。當以麻黄湯汗之百十一。有熱證面赤飲水、涎熱咽喉不利者、宜兼甘桔湯治之十六。若五七日間、其證身熱痰盛唾粘者、以楄銀丸下之六十四。有肺盛者、欬嗽而喘、面腫欲飲水、有不飲水者、其身即熱、以瀉白散瀉之六。若傷風咳嗽五七日、無熱證、而但嗽者、亦葶藶丸主之百十。後用化痰藥。有肺虚者、咳而哽氣時時長出氣、喉中有聲、此久病也。以阿膠散補之七。痰盛者、先實脾、後以楄銀丸六十四。微下之。涎退即補肺、補肺如上法(即阿膠散)、有嗽而吐水、或青緑水者、以百祥丸下之三十九。有嗽而吐痰涎乳食者、以白餅子下之十九。有嗽而咯膿血、乃肺熱、食後服甘桔湯十六。久嗽者、肺亡津液、阿膠散補之七。咳而痰實、不甚喘而面赤、時飲水者、可楄銀丸下之六十四。治嗽大法、盛即下之。久即補之、更量虚實、以意増損。。

 

 

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