小児薬方・その2『小児薬証直訣』より

小児薬方について

『小児薬証直訣』には小児薬方が実に豊富に詳細に収録されています。これらの薬方を学ぶと、銭乙先生が小児の生理・病理について深く理解し、小児薬方を考案されたことがよくわかります。これら小児の病を解く方意を学ぶことは、小児はりの向上にも直結します。小児薬方の一端を覗いてみましょう。


※画像は『類証注釈銭氏小児方訣』京都大学付属図書館より引用させていただきました。

※以下に書き下し文、次いで足立のコメントと原文を紹介。
※現代文に訳さないのは原文の本意を損なう可能性があるためです。口語訳は各自の世界観でお願いします。

『類証注釈銭氏小児方訣』 薬方

書き下し文・『類証注釈銭氏小児方訣』巻之五 薬方

十四、木瓜丸 治生下吐  臘粉
木瓜末 麝香 木香 檳榔(各一字)
右(上記)同じく研磨し末と為す、麺糊にて丸すること小黄米大に為す。毎服一二丸。甘草湯にて下すこと時無し。

十五、安神丸 邪熱、驚啼、心疳、面黄、頰赤、壮熱を治す。
麦門冬(心を去る、焙) 馬牙硝 白茯苓 乾山薬 寒水石 甘草(各半両) 朱砂(一両) 龍腦(一字)
右(上記)之を末にし、煉蜜にて雞頭大に丸と為す。毎服半丸、砂糖水にて化し下す、時候無し。

十六、甘桔散 涎熱、咽喉不利を治す
甘草(炒、二両) 桔梗(一両、米泔に浸す一宿、焙乾して用う)
右(上記)を末と為す、毎服二銭、水一琖、阿膠半片を入れ、炮過煎すること五分に至る、食後に温服す。

十七、瀉心湯 実熱に宜しく服すべし。
黄連(一両、鬚を去る)
右(上記)を末と為す、毎服一字から半銭一銭に至る、臨臥に温水調下す。

十八 生犀散
地骨皮(真者) 赤芍藥 柴胡 乾葛(各一両) 甘草(半両) 生犀(錯取末二銭)
右(上記)を粗末と為し、毎服一二銭、水一琖、煎ること七分に至る、温服食後。

十九、白餅子(又の名を玉餅子) 治腹中有癖、但だ乳を飲み嗽而して痰涎を吐す。
滑石 軽粉 半夏(湯浸し洗い片に切る) 南星(各一銭) 巴豆(二十四個、皮膜を去る、水煮水尽きることを度と為す、一作に水泄)
右(上記)を研磨し巴豆と匀しくす、後に衆薬に入る。糯米飯に入れ丸と為す。小緑豆大、程、餅子に作す。三歳以上は三五餅子、以下は一二餅子。葱白湯にて煎じ、臨臥に下す。

二十、利驚丸
天竺黄(二銭) 軽粉 青黛(各一銭) 黒牽牛末(半両、生)
右(上記)を研匀し、煉蜜に碗豆大の如く丸くす、一歳児は一丸、温めた薄荷水にて下す。食後に服する。

二十一 栝樓湯
栝樓根末(二銭) 白甘遂末(一銭)
右(上記)慢火上に於いて同じくし、炒りて黄に焦し、研匀、毎服一字。麝香薄荷湯にて煎ず、調下すること時無し。

二十二 五色丸
朱砂(研) 真珠末(各半両) 水銀(一分、一作二両) 雄黄(一両、一作三両) 鉛(三両、同水銀熬)
右(上記)を煉蜜にて麻子大に丸する、毎服三四丸、金銀薄荷湯にて煎じて下す。

二十三 調中丸 脾胃虚冷を治す。(即ち理中丸)
白朮 人参 甘草(炒、各半両) 乾姜(四銭。炮。一作一銭)
右(上記)を細末と為す。蜜丸すること緑豆大に加う。毎服三丸から五丸に至る。或いは十一二丸に至るまで加う。食前に温水にて下す。

二十四 塌氣丸 虚脹を治す。如(も)し腹大なる者には蘿萄子を加える。褐丸子と名づく。
胡椒(一両) 蝎尾(毒を去る)
右(上記)を末と為し、麪糊で丸すること、粟米大。毎服、五七丸から一二十丸に至る。陳米と飲下すること時無し。一方では木香一銭あり。又、一方では胡椒・蝎尾、各四十九箇。

二十五 木香丸 痩冷疳を治す。
木香 青黛 檳榔 肉荳蔲(各一分) 麝香(一銭半、別研) 続隨子(一両、油を去る) 蝦䗫(三両、焼きて性を存す)
右(上記)を末と為し、緑豆大に蜜丸とす。毎服三五丸から一二十丸に至る。薄荷湯にて食前に下す。

二十六 胡黄連丸 肥熱疳を治す。
胡黄連 黄連(各半両) 朱砂(一分、別に研す)
右(上記)を細末と為す。和匀して猪胆内に填入し、淡漿を用いて煮る。杖子を以て銚子上に於て、線を用いて之を釣る。底に著くこと勿れ。一炊を候(ま)ちて久しく取り出す。蘆薈・麝香各一分を研して入れ、飯と和し麻子大の如くに丸する。毎服五七丸、一二十丸。米飲にて食後に下す。(一作に「食前」。一方には蝦䗫半両焼かずを用う。)

二十七 蘭香散 鼻疳下赤爛を治す。
蘭香葉(菜名、二銭、灰に焼く) 銅青(半銭) 軽粉(二字)
右(上記)を末に為し、匀にせしむ、瘡の大小を看て乾して之に貼る。

二十八 白粉散 疳諸瘡を治す。
烏賊魚骨(末、三匕) 白芨末(二匕) 軽粉(一匕)
右(上記)を細末と為す、先に清漿水を用いて洗い拭い、乾して之を貼る、時無し。

二十九 消積丸 大便を治す。
丁香(九箇) 縮砂(十二箇) 巴豆(二箇、皮、心膜油を去る) 烏梅肉(三箇)
右(上記)を末と為し、麺糊にて黍米大の丸と為す。三歳以上は三五丸、以下は三二丸。温水にて下す。時無し。

三十 安虫散 虫動心痛を治す
柴胡粉(黄にまで炒める) 檳榔 川練子(核を去る)
鶴虱(各二両) 白礬(一分、鉄器内にて火熬す。令括秤(栝秤?)
右(上記)を末と為し、毎服一字。大なる者は半銭、温水にて飲み調下す。痛む時に宜しく服すべし。

三十一 紫霜丸 驚積を治す。
代赭石(二銭、研細水飛す。一本に一銭と作す) 杏仁(二十一箇、皮尖を去る) 巴豆(二十一箇、油、心皮膜を去る)
右(上記)を末と為す、飯にて加粟米大の如く丸する。毎服三五丸は十丸にまで至る。皂角と煎じ下す。時無し。

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小児薬方について

瀉心湯。瀉心湯の組成は黄連一味。仲景方剤の瀉心湯類とは異なります。

仲景方剤では瀉心湯といえば、半夏瀉心湯・大黄黄連瀉心湯・附子瀉心湯・甘草瀉心湯・生姜瀉心湯があります。これらの瀉心湯類は複数生薬による方剤構成になります。また基本的に「心下痞」に対する処方でもあります。

本章にある銭氏瀉心湯の主治は「実熱」とのみあり、この点は仲景瀉心湯と銭氏瀉心湯との違いが分かります。黄連単味の処方なので、ひと口に“実熱”とはいえ、その病位も自ずと明らかでしょう。

また使用上の注意・服用法についても注目です。黄連末を「温水にて調下」し、苦寒薬によって胃を損ねることを避ける意図が感じられます。また服用のタイミングについても注目です。

十七、瀉心湯 実熱に宜しく服すべし。
黄連(一両、鬚を去る)
右(上記)を末と為す、毎服一字から半銭一銭に至る、臨臥に温水調下す。

■原文 十七、瀉心湯 實熱冝服。
黄連(一兩去鬚)
右為末、毎服一字至半錢、臨臥温水調下。

服用のタイミングを「臨臥」つまり睡眠前に服用せよと指定しています。この服用時間にも銭乙先生の意図が感じられます。察するに「」の章にある一節がヒントになると思います。

心氣実するときは、則ち氣上下に行るも渋する、合臥するときは則ち氣は通ずるを得ず。故に喜ば仰臥すれば、則ち氣は上下に通ずるを得る也。瀉心湯(十七)之を主る。

■原文 
心氣實、則氣上下行澁、合臥則氣不得通、故喜仰臥、則氣得上下通也。瀉心湯十七主之。

上焦・心胸に熱邪が渋滞すると、氣の通行が妨げられます。とくに仰臥すると、この氣の不通は顕著となります。
この現象は、お子さんをみているとわかるのではないでしょうか。昭和のCM「ヴイックスヴェポラッブ」のイメージにも通ずると思います。

以上のように、小児の生理・病理をともに深く理解した処方構成であることが、本書・本章から読み取ることができます。

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原文 『類證注釋錢氏小兒方訣』藥方

■原文 『類證注釋錢氏小兒方訣』巻之五 藥方

十四 木瓜丸 治生下吐  臘粉
木瓜末 麝香 木香 檳榔(各一字)
右同研為末、麫糊為丸小黄米大、毎服一二丸。甘草湯下無時。

十五、安神圓 治邪熱驚啼、心疳面黄、頰赤、壯熱
麥門冬(去心焙) 馬牙硝 白茯苓 乾山藥 寒水石 甘草(各半兩) 朱砂(一兩) 龍腦(一字)
右末之、煉蜜為丸、雞頭大、毎服半丸、沙糖水化下、無時候。

十六、甘桔散 治涎熱、咽喉不利
甘草(炒二兩) 桔梗(一兩、米泔浸一宿、焙乾用)
右為末、毎服二錢、水一琖、入阿膠半片、炮過煎至五分、食後温服。

十七、瀉心湯 實熱冝服。
黄連(一兩去鬚)
右為末、毎服一字至半錢一錢、臨臥温水調下。

十八 生犀散
地骨皮(真者) 赤芍藥 柴胡 乾葛(各一兩) 甘草(半兩) 生犀(錯取末二錢)
右為麄末、毎服一二錢、水一琖、煎至七分、温服食後。

十九、白餅子(又名玉餅子) 治腹中有癖、但飲乳嗽而吐痰涎。
滑石 輕粉 半夏(湯浸洗切片) 南星(各一錢) 巴豆(二十四箇、去皮膜、水煑水盡為度、一作水泄)
右研匀巴豆、後入衆藥、以糯米飯為丸。小菉豆大、程作餅子。三歳已上三五餅子、已下一二餅子、煎葱白湯下臨臥。

二十、利驚圓
天竺黄(二錢) 輕粉 青黛(各一錢) 黒牽牛末(半兩生)
右研匀、煉蜜丸如碗豆大、一歳一丸、温薄荷水下。食後服。

二十一 括蔞湯
括蔞根末(二錢) 白甘遂末(一錢)
右同於慢火上、炒焦黄研匀、毎服一字、煎麝香薄荷湯、調下無時。

二十二 五色圓
朱砂(研) 真珠末(各半兩) 水銀(一分、一作二兩) 雄黄(一兩、一作三兩) 鉛(三兩、同水銀熬)
右煉蜜丸麻子大、毎服三四丸、煎金銀薄荷湯下、

二十三 調中圓 治脾胃虚冷。(即理中丸)
白朮 人參 甘草(炒各半兩) 乾姜(四錢炮、一作一錢)
右為細末、蜜丸加菉豆大、毎服三丸至五丸、或加至十一二丸、食前温水下。

二十四 塌氣圓 治虚脹。如腹大者、如蘿萄子、名褐丸子。
胡椒(一兩) 蝎尾(去毒)
右為末、麪糊丸、粟米大、毎服五七丸、至一二十丸。陳米飲下無時。一方有木香一錢。又一方胡椒蝎尾、各四十九箇。

二十五 木香圓 治痩冷疳
木香 青黛 檳榔 肉荳蔲(各一分)
麝香(一錢半、別研) 續隨子(一兩去油) 蝦䗫(三兩、焼存性)
右為末、蜜丸菉豆大、毎服三五丸、至一二十丸、薄荷湯下食前。

二十六 胡黄連圓 治肥熱疳
胡黄連 黄連(各半兩) 朱砂(一分別研)
右爲細末、和匀填入猪膽内、用淡漿煮。以杖子於銚子上、用線釣之、勿著底。候一炊久取出、研入蘆薈麝香各一分、飯和丸如麻子大。毎服五七丸、一二十丸。米飲下食後。(一作食前。一方用蝦䗫半兩不焼)

二十七 蘭香散 治鼻疳下赤爛。
蘭香葉(菜名、二錢焼灰) 銅青(半錢) 輕粉(二字)
右為末令匀、看瘡大小乾貼之。

二十八 白粉散 治疳諸瘡
烏賊魚骨(末三匕) 白芨末(二匕) 輕粉(一匕)
右為細末、先用清漿水洗拭、乾貼之無時。

二十九 消積圓 治大便
丁香(九箇) 縮砂(十二箇) 巴豆(二箇、去皮心膜油) 烏梅肉(三箇)
右為末、麫糊為丸黍米大、三歳已上三五丸、已下三二丸。温水下無時。

三十 安䖝散 治虫動心痛
柴胡粉(炒黄) 檳榔 川練子(去核)
鶴虱(各二兩) 白礬(一分、鉄器内火熬。令括秤(栝秤?)
右為末、毎服一字、大者半錢、温水飲調下、痛時冝服。

三十一 紫霜圓 治驚積
代赭石(二錢、研細水飛。一本作一錢) 杏仁(二十一箇、去皮尖) 巴豆(二十一箇、去油心皮膜)
右為末、飯丸加粟米大、毎服三五丸至十丸煎皂角下無時

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