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小児診法における望診
『小児薬証直訣』には小児診法に関する情報がいくつか記されています。とくに小児科では望診が重視されていたようです。その理由は本書『小児薬証直訣』の序文に記されている通り、脈診や問診だけに信を置くには心許ないものがあります。
そのため、望診という診法にも力を注ぐのです。

※画像は『類証注釈銭氏小児方訣』京都大学付属図書館より引用させていただきました。
※以下に書き下し文、次いで足立のコメントと原文を紹介。
※現代文に訳さないのは経文の本意を損なう可能性があるためです。口語訳は各自の世界観でお願いします。
『類証注釈銭氏小児方訣』 面上証
書き下し文・『類証注釈銭氏小児方訣』 面上証 第四
左顋は肝と為し、右顋を肺と為す。額上を心と為し、鼻は脾と為す、頰を腎と為す。
赤は熱也。
証に随いて之を治せ。(頰の音は●(子夾)、頤下也。此れ則ち面上に五行の定位が具る、以て五臓に属す。臓観証に随う。)
小児望診(面部望診)について
第四章の面上証はその名の通り、顔面部の色をみる氣色診です。その望診部位は五方(五行)をもとに五臓を配しています。
東方に肝木、西方に肺金、南方に心火、中央を脾土、北方に腎水の配置は、多くの鍼灸師が知るとおり。
本文には「頰を腎」としていますが、註には、頰とは「頤下」すなわち顎(顔面の下部)としています。
個人的な意見ですが、小児はりの臨床経験から、脾胃の情報と腎の情報がそれぞれ、鼻尖周囲・口唇周りによく見られると思います。
原文 『類證注釋錢氏小兒方訣』面上證
■原文 『類證注釋錢氏小兒方訣』面上證 第四
左顋為肝、右顋為肺、額上為心、鼻為脾、頰為腎。赤者熱也、隨證治之。(頰音●(子夾)頤下也。此則面上具五行定位、以属五臓、隨藏觀證。)
『眼内証』に続きます。
『類証注釈銭氏小児方訣』 眼内証
書き下し文・『類証注釈銭氏小児方訣』 眼内証 第四
目内の赤き者は心熱、導赤散(八)之を主る。
淡紅なる者は心虚熱、生犀散(十八)之を主る。
青き者は肝熱、瀉青丸(四)之を主る。
浅く淡き者は之を補う、地黄丸(五)之を主る。
黄なる者は脾熱、瀉黄散(十)之を主る。
精光の無き者は腎虚、地黄丸(五)之を主る。
白にして混ずる者は肺熱、瀉白散(六)之を主る。
小児望診(目部望診)について
小児の特性もあって、子どものコンディションは氣色をはじめ外に表われやすいです。面部も望診ポイントでしたが、眼もその一つです。
本文「目内」とは白目の部分を指します。下地の色が白なので、色の変化を見つけやすいのでしょう。
最も分かりやすいのは赤色、いわゆる充血した目をイメージすると良いでしょう。赤は火に属する色ですので、五臓でいう心・病邪でいうと熱を示します。
故に「目内赤者心熱」というのはシンプルで分かりやすいですね。
そして“色の濃淡”で病邪の虚実を診わけているようです。それが確認できるのが「淡紅者心虚熱」という言葉ですね。
しかし、実は小児の目部望診で最もよくみられる色は「青」です。肝木の氣の勢いが木の部位たる眼(目は肝の竅)にも現れるのですね。
肝氣が強い症状(かんのむし・夜泣き……などなど)は肝実の色として、青色が強めに見られます。また健康なお子さんも、適度に木氣が働いているため、うっすらと澄んだ青色がみられます。
それとは反対に「浅淡者補之」とあるように、肝木の力が弱いお子さんもいます。この場合、もちろん補うのですが、その補う先は肝ではなく腎であることも注目です。
もちろん、難経六十九難の教えに従い「虚者補其母」の通りに「肝虚に対し補腎」を選択しているとも考えられますが、他の虚証に対する処方を考えれば、そのような単純な治療方針ではないことが分かります。
それ故に肝木の働きが子どもの体質のおいて、特別な存在であることが察せられるのです。
本章にはいくつかの方剤が記されています。各方剤の方意を解しながら読むと、本章の面白さもさらに増すことでしょう。
序 ≪ 小児脈法 ≪ 五臓所主 ≪ 五臓病証 ≪ 面上証・目内証 ≫ 五臓虚実冷熱 ≫≫≫ 小児薬方
鍼道五経会 足立繁久
原文 『類證注釋錢氏小兒方訣』目内證
■原文 『類證注釋錢氏小兒方訣』目内證 第五
目内赤者心熱、導赤散八主之。淡紅者心虚熱、生犀散十八主之。青者肝熱、瀉青丸四主之。淺淡者補之、地黄丸五主之。黄者脾熱、瀉黄散十主之。無精光者腎虚、地黄丸五主之。白而混者肺熱、瀉白散六主之。
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