『保赤全書』原痘 第一

さて痘瘡医学シリーズで二冊目の紹介となるのはこの『保赤全書』です。この書は1585年、管橓という医家の著書になります。魏直の『博愛心鑑』(1525年)に比べると、その60年後の発刊となる書です。この『保赤全書』も従来の胎毒説を否定して新しい痘毒説を採用しています。数章をピックアップして紹介しましょう。


※『保赤全書』京都大学付属図書館より引用させていただきました。
※以下に書き下し文、次いで足立のコメントと原文を紹介。
※現代文に訳さないのは経文の本意を損なう可能性があるためです。口語訳は各自の世界観でお願いします。

書き下し文・原痘 第一

『保赤全書』原痘 第一

原痘 第一

易に曰く、天地絪緼して、萬物化醇す。男女搆精して、萬物化生す。男女交搆に、欲の行わること無く、火の動ぜざること無し。情を恣にし慾を肆にして、火毒を精血の間に遺し、歳火流行に、相い感じて動ずる。故に毒、時に乗じて発す。痘の稀稠あるが若きは、毒に浅深あるに由る。而して吉凶生死も、亦た此において判(わかる)。此れ不易の論たる也。
或は謂(いわゆる)、小児の初めて生るの時、口に胎血を舎(含)みて、咽(のみ)下して腎経に至りて、以て此の証を致すと云う。謬れり。

管橓の説はいかに?

まずは第一章の原痘の章です。易学から陰陽を説き、自然の理を挙げて、萬物、ひいては人の生に当てはめる論法は『博愛心鑑』と同様です。また『博愛心鑑』の説と同じで、男女交媾により火を生じ(ここでは火が動じ)、火毒となって精血の間に遺し、歳氣歳火の氣に触れることで痘瘡を発症する…というう痘瘡病理を管橓先生は提示しています。

痘瘡症状の軽重は、痘毒の過多というよりも、毒の位の浅深に由るとしているのも興味深いポイントです。

そして従来の胎毒説「口中悪液説」「命門伏蔵説」をひと言「謬れり」と否定しているのも、やはり魏直先生と同じ立場にあります。

序 ≪ 原痘 ≫ 氣血

鍼道五経会 足立繁久

原文 『保赤全書』原痘 第一

■原文 『保赤全書』原痘 第一

易曰、天地絪緼、萬物化醇、男女搆精、萬物化生。男女交搆、無欲不行、無火不動、恣情肆慾、而火毒遺於精血之間、歳火流行、相感而動。故毒乗時而發。若痘有稀稠、由毒有淺深、而吉凶生死、亦于此乎判焉。此爲不易之論也。
或謂、小兒初生之時、口舎胎血、咽下至於腎經、以致此証。謬矣。

おすすめ記事

  • Pocket
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントを残す




Menu

HOME

TOP