こんにちは!鍼道五経会の足立です。
遅くなりましたが7月23日の小児はり基礎「生老病死を学ぶ」講座のようすをアップします。
小児はり基礎では東洋医学の小児科をキホンから学びます。人が生まれ、育ち、老いて、死ぬ…この4つの過程のすべてに病気は関わってきます。それぞれの4過程を理解しなければ、たとえ同じ病名であっても(例えば、子どものカゼとお年寄りのカゼの治法は同じではない)鍼灸では治療できないからです。
なぜ東洋医学の小児科なのか?
鍼灸では“小児はり”という手法はありますが、中国医学の小児科を学ぶ人は少ないといえるでしょう。
欲を言うと、小児科だけでなく妊娠期の生理学・病理学も知っておかなければいけません。なぜなら妊娠期の状態が、お子さんの一時期の体質にも強く影響するからです。(これは遺伝とはまた違う概念です)
小児科特有の病気には次のようなものがありますが、これも中医学の小児科でも説明がつくものです。
・乳児性湿疹
・突発性発疹
・カゼ
・発熱
・はしか
・おたふくかぜ
・水疱瘡(みずぼうそう)
・熱性けいれん
・夜尿症
・チック症
小児はり疾患でよく知られている“夜泣き”や“かんのむし”
もちろん、これも中医学小児科の守備範囲にあります。
※左2枚は水疱瘡に対する小児はり治療、右2枚の腹部写真は突発性発疹
これら疾患の治療を東洋医学で行うには、当然ですが東洋医学の生理学・病理学を学ばないといけません。「西洋医学の病理では、東洋医学での治療ができない」これは言うまでもないことですよね。あえて例えるなら「野球のルールでサッカーをしようというようなもの」といったところでしょうか。
ですので、私たち鍼灸師は東洋医学の基本を学び直さないといけません。なにしろ鍼灸学校では、東洋医学ではなく国家試験取得のための勉強を主に習ったのですから…。
小児科の診察
小児はりの診法でも脈診や腹診が重宝します。望診も重視しますが、実践では「腹診>脈診>望診」の順番で使いやすいと思います。
今回の講座では、うちの子(8歳男子)をモデルに、腹診、脈診、背候診の実技を行いました。
まずは私が実際の臨床のようす(雰囲気やスピード)を実演し、その後に参加メンバーがそれぞれ腹診・脈診を行うという流れで実技を行いました。
小児脈診の実技。
注意するポイントは…子どもの寸口は大人とサイズが異なる・脈を診れる時間が少ない…などです。これらを考慮に入れて実技を行いました。
小児腹診の注意ポイントも、子どものお腹のサイズは大人と違う点、診れる時間が少ないこと。それと“こそばがられない(こしょばがられない)触り方”にも注意して実技を行いましたね。
子どもの背候診も腹診と同じ。
脈診、腹診、背候診、どれをとっても“サイズ”・“スピード”・“力加減”の調整が重要です。お子さんはジッと診察を受けるのが苦手(なことが多い)ですから、スピーディにリズミカルにが大事。
そして最後に一つ “空気・雰囲気作りも重要”です。お子さんは大人以上に“気をよみます”から。
実際にお灸(温灸)をして、脈の変化も診ました。
もちろん、小児はりの前後でも脈を確認しましたが、お灸・鍼ともに脈はしっかりと変化します(当たり前ですね)。
その変化をどう判断して次の治療に活かすか?を実際に体感してもらいました。
驚いたのは参加2回目のメンバーが、治療の前後での脈の変化をしっかりと捉えていたことでした。
講義は“鍼灸師が知っておくべき子どもの体質”について
今回の座学は変蒸についてです。
変蒸(へんじょう)という言葉は見慣れない言葉かもしれませんが、中医学の小児科では必ずと言って良いほど“変蒸”について解説があります。
小児はりを実践する者であれば変蒸の理解は基本といえるでしょう。小児はりの適応疾患にどれくらい密接にかかわるのか?と言われると明確な指標は出せませんが、「小児の根本的な体質を理解する」という点で重要なキーワードです。
「体質を治す」という看板を掲げる鍼灸師(小児はり師)にとって、変蒸はまず最初に知っておくべき体質といえるでしょう。
変蒸とは、簡単にいうと“子どもの生後直後から10ヶ月間で発育過程においてみられるお子さんの変化”と言えます。この期間と変化の内容を陰陽五行で分類しているのですが、なかなか興味深い内容でもあるのです。
さらに妊娠期間中の胎児の発育とも関連しているとも考えられるところが非常に勉強になるのです。詳しくは、「妊娠期の東洋医学」の講座でもまた紹介したいと思います。
打上げはオリオンビール
打上げは南海沿線沿いの沖縄料理屋さんにて。
オリオンビール生に全員が酔いしれた打ち上げとなりました。打上げでは鍼灸のこと、次のイベントのこと、他愛もない笑い話などなど…。とにかく仲間で楽しい時間を過ごしました。
こってりと勉強することも必要ですが、こういう楽しいひと時も必要不可欠ですね。