奇経八脈詳解・その2

奇経を学ぶシリーズは『奇経八脈詳解』に

難経二十九難などにある奇経病症、しかし奇経については病症と流注の他にはあまりその情報が古典文献では公開されていない。
その診断基準がは触れられていない。では奇経脈診について触れられている『奇経八脈攷』(李時珍 著)について勉強しようではないか!ということで、しばらくは『奇経八脈攷』について、岡本一抱が詳解した『内経奇経八脈詳解』について紹介しようと思う。


※『内経奇経八脈詳解』京都大学付属図書館より引用させていただきました。
※以下に書き下し文を紹介。

内経奇経八脉詳解 巻之上

○八脉攷 時珍
奇経八脉は陰維(ゆい)なり、陽維なり。陰蹻なり、陽蹻なり。衝なり、任なり、督なり、帯なり。陽維は諸陽の会に於いて起こり ○陽維は諸陽経の会する所に起こる 外踝より衛分を上行す。陰維は諸陰の交に於いて起こり ○陰維は諸陰経の交る所に起こる 内踝より營分を上行す。一身の綱維と為す所以なり。
陽蹻は跟中に於いて起こり、外踝を循り身の左右に於いて上行す。陰蹻は跟中に於いて起こり、内踝を循り身の左右に於いて上行し、機関をして蹻捷ならしむ所以なり。 ○蹻も捷なり。機関は関節の機用を云う 督脉は会陰に於いて起こり、背を循りて身の後を行く。陽脉 ○諸陽の経 の総督と為す。故に陽脉の海という。任脉は会陰に於いて起こり、腹を循りて身の前を行く。陰脉 ○諸陰の経 の承任と為す。故に陰脉の海という。衝脉は会陰に於いて起こり、臍を挟みて行き上に直衝し諸脉 ○諸陰諸陽の脉 の衝要と為す。故に十二経の海という。

帯脉は則ち横に腰を囲みて状 束帯の如し。諸脉を総約する所以の者なり。
この故に陽維は一身の表を主り、陰維は一身の裏を主る。乾坤を以て言うなり。 ○乾坤が上下陰陽の義なり。陽維陰維を乾坤に配して言うなり 陽蹻は一身左右の陽を主り、陰蹻は一身左右の陰を主る。東西を以て言うなり。 ○陰陽蹻は左右に行きて東西に配して云う 督は身後の陽を、任衝は身前の陰を主る。南北を以て言うなり。 ○督と任衝とは腹背を夾むを以てこれを南北に配して云う 帯脉は横に諸脉を束ぬ。六合を以て言うなり。 ○上下四方を六合と云う。帯は周く諸脉を約す。故にこれを六合を配して云う この故ににして八脉を知るときは則り十二経十五絡の大旨を得たり。にして八脉を知るときは則ち虎龍昇降、玄牝幽微の竅妙を得たり。以上の細註、その首に圓(円)する者は皆愚(岡本一抱のこと)が憶註なり。

奇経とひと口に言っても…

奇経八脈とあるが、八脈それぞれに大きく個性・役割が異なる。奇経について学び、理解を深めないと診断や治療に応用できないのではないか?と思う所である。

奇経は一帯三柱二行二面ではないかと私は考えている。

奇経はその役割から溝渠と表現されるが、本章ではまた別の言葉で表わされている。「陽維陰維は乾坤、陽蹻陰蹻は東西、督任衝は南北、帯脈は束であり、以て六合とする」ということが書かれており、十二正経とは異なる人体観を提示している。

奇経を学ぶことで、奇経のみならず十二経十五絡の大旨を得る…とあり、システムとしての十二正経の矛盾や隙間を埋める存在としても奇経が機能しているということが伝わる文章である。

 

鍼道五経会 足立

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