第2回 金匱植物同好会に行ってきました 山頂〜復路編

第2回 金匱植物同好会はその内容が盛りだくさん過ぎのため、前編と後編に分けました。
(前篇の往路編はコチラ

さて、後編は山頂手前の薬草レポートから始まります。

頭の中が薬草の宝石箱や~

たくさんの薬草の専門知識からマメ知識まで…
濱口先生の説明を心地よく浴びながら、知識欲が満たされていく思いでした。

まさに彦摩呂状態…

頭の中に断片的に残る記憶を掘り起こして以下に記しておきます。

イタドリ・虎杖

イタドリはスイバ(この辺りではスカンポ)ともいい、皆さんもおなじみの植物。
私も子どもの頃よく道端のスカンポを折り取っては齧っていたものです。

そのスカンポ(イタドリ)もやはり薬草。生薬名を虎杖(こじょう)といいます。

濱口先生曰く「『古方節義』の抵当湯の項では、虻虫(アブ)を虎杖に代えてはなはだ効あり…と書かれてありますよ。」との情報。

帰って古方節義を開くとこの通り↓

上写真は『古方節義』抵当湯の注釈。
ページ4行目に「(抵当湯)方中の虻虫を虎杖に易(か)え用いて甚だ効あり…」とある。
濱口先生が文言を全く違えずに説明されたことにも甚だ驚いた。

ヤマウルシ・山漆


濱口先生曰く「かぶれることで有名なウルシですがウルシは生薬としても服用できます。」

子どもの頃にウルシかぶれで酷い目にあった私は未だにウルシに近づくことを躊躇してしまいます。

ちなみに漆は即身成仏になる際に服用すると皮膚部分がきれいに?残るのだとか…。

生薬としては漆の樹液を乾燥させ、乾漆とし、袪瘀破癥や消積殺虫の効能があり、また煎薬としては用いず、散薬や丸剤として用いる…と『臨床中医のための中薬学』にはあります。

サルトリイバラ・山帰来

サルトリイバラは登山口から頻繁に見られましたが、山頂のものほどイイ感じでトゲトゲしくサルトリイバラ(猿取茨)感が出てました。

また山帰来の実も生っていて濱口先生曰く「不味い梨のような味ですよ」とのこと。
実際に食べてみましたが『食感は良い…が、味は不味い梨の方が美味しい』というのが私の感想です。
写真のように未成熟の果実を食べたこともあるのでしょうね。

「山帰来の由来は、かつて梅毒の治療には水銀剤が使われていました。そのため水銀中毒になる人も出てくるわけです。その中毒症状の治療に山帰来が使われていました。」
「また、病気になって“山”に棄てられた人が山帰来を服して病が治り、村に“帰”って“来”られた。なので山帰来…という逸話もあります。」と、濱口先生談。

このように詳細に解説しながら質問には丁寧に答えつつ、そして先頭に立って山を登っていく濱口先生のエネルギーには舌を巻きます。

ヌルデ・白膠木→五倍子

「ウルシと似ていますが、茎部に翼を持つのがヌルデです」
「ヌルデに虫瘤(むしこぶ)ができたのが五倍子です」
「そのタンニン成分をお歯黒にも使われていました。」

五倍子の効能は斂肺降火、渋腸止瀉、渋精縮尿、斂汗生津、固渋止血…などがあるとのこと『臨床中医のための中薬学』

また五倍子については『本草綱目』にて次のような記載があります。

五倍子
…斂肺降火、化痰飲、止咳嗽、消渇、盗汗、嘔吐、失血、久痢、黄病、心腹痛、小児夜啼。烏須髪。治眼赤湿爛。消腫毒、喉痹。斂潰瘡、金瘡、収脱肛、子腸墜下。(時珍)

と、以上のような病症群が記されてあり、上記の『臨床中医のための中薬学』の効能をイメージしやすいかと思います

シシウド・香独活

名前の通り、香りがします。
シシウドはセリ科の植物なので、やはりそれらしい香りがします。

生薬としての独活はこの根部を使用します。
また独活にはセリ科のシシウドの他に、ウコギ科のウドの根も用いるとか。ややこしい…。

ちなみに、私見ながら独活や羌活の効能は鍼灸治療にかなり近いと思う。

タケニグサ・博落回

『妙に存在ある草だな〜』というのが第一印象。
ずっと気になっていた野草なので、名前が分かってスッキリ。

アマドコロ・萎蕤(いずい)


山頂にはアマドコロが多く生えていました。
萎蕤はまたの名を玉竹といい、滋陰の効を持ちます。

中腹にはナルコユリ(黄精)が、山頂にはアマドコロ(萎蕤)…と、住み分けられておりなかなか興味深いです。

傷寒論 厥陰病編にある麻黄升麻湯に使用される生薬です。
麻黄升麻湯は、麻黄・升麻・当帰・知母・黄芩・萎蕤・芍薬・天門冬・桂枝・茯苓・甘草・石膏・白朮・乾姜

以上、14種の生薬から成る方剤で、この多くの生薬から成る組成から張仲景方というにはちょっと微妙な趣きのある方剤であるとの意見もあります。

「ドラクエのやくそう」をゲットせよ!

さて薬草見学会の2日前にこんなメールが生薬探偵から届きました。

「観察会ではなんとドラクエにも登場する「やくそう」が観察できそうです」

ドラクエのやくそう?

『なんのこと…???』と思う人もいるでしょう。
ここでドラクエのやくそうについて解説を…。

「ドラクエのやくそう」の定義

・手軽に手に入る
・使用すると体力が回復する
・安価で入手可能
・一般人でも使用可能

詳しくは「ドラクエに出てくる「やくそう」は現実だとどう使うのか専門家に聞く」を熟読してください

以上の条件を満たすのがヒキオコシ(延命草)であると。上記のサイトでは結論付けています。

そして「ドラクエのやくそう」判定を受けた薬草がコレ!

ヒキオコシ・延命草

紫蘇の葉にも似て、どこにでも生えている感がある姿はまさに「やくそう」の条件を満たします。

そしてその葉を味見してみると…『に、苦いっ!!!』

『この苦味がHPを回復させるのだろうか…』
『しかし、この苦味は胃には良さそうだ…』

そんな疑問や想いはさて置いてまだまだ薬草探しは続く…。

激レア薬草を探せ!

生薬探偵の言によると、山頂付近のあるエリアには大阪府下では激レアとも言える稀少な薬草が二種類みられるとのこと。

その薬草を見つけるのが、今回最後のミッション。

ヒントはそれぞれの薬草に一つずつ。

「ヒトデ型(星型)の花」

「ゴマの香りがする葉っぱ」

このヒントを頼りに山頂付近をみんなで捜索しました。

けっこうな斜面(下写真)も捜索範囲…でもこれが楽しい(笑)

捜索すること30分(体感時間)

最初に星型の花を見つけたのは阿野先生でした。
見つけたご褒美に“広末涼子ちゃんの写真集”を進呈されると言われてたけど、どうなったのだろう…

フナバラソウ・白薇


星型の花の薬草はフナバラソウ、生薬名を白薇(はくび・びゃくび)といいます。
白薇は『金匱要略』に登場する生薬です。

『金匱要略』婦人産後病

婦人乳中虚、煩乱、嘔逆、安中益気、竹皮大丸主之。
竹皮大丸方 生竹茹、石膏、桂枝、甘草、白薇

とあり、『臨床中医のための中薬学』では、清熱涼血、退虚熱、利水通淋、清肺泄熱の効能を挙げています。

そして、次なる獲物
「ゴマの香りがする葉っぱ」はコレ!!

ゴマノハグサ・玄参

ゴマノハグサ、本当にゴマの香りがします!
とくに葉っぱを触った直後の指が…強烈に美味しそうな匂いなのです。

ヒキオコシの健胃効果と玄参の美味なる香りのW効果で、この時のHPは確実に上がっていたと思われます(笑)

さて、話は薬草に戻って…
玄参も滋陰薬に属する生薬です。

「玄参・生地黄は滋腎に働くが、生地黄は甘潤で滋養の力が玄参より強く、玄参は苦鹹降泄し降火の力が強い。生地黄は陰血不足に適し、玄参は陰虚火旺に適する…」(『臨床中医のための中薬学』より)

ちなみに、五参という分類が『本草綱目』の丹参の項にあります。

丹参【釋名】
…時珍曰、五参五色配五臓。故人参入脾、曰黄参。沙参入肺、曰白参。玄参入腎、曰黒参。牡蒙入肝、曰紫参。丹参入心、曰赤参。其苦参則右腎命門之薬也。…

今回は人参(黄参)、玄参(黒参)をゲット!

そして第1回の金匱薬草同好会で、沙参(白参)を確認しましたので、あとは青(紫参)と赤(丹参)の二つでゴニンジャー・コンプリート!です。

番外編・薬草見学会で見かけた生き物たち

薬草ではありませんが、普段お目にかかれない生き物たちも観察することができましたので、ここに紹介させていただきます。


ヤマトシリアゲ
この虫はナント「2億5000万年前のベルム期から生息していたシリアゲムシ目に属する昆虫とのこと」(昆虫図鑑より)


擬態の名人で有名なナナフシ…の子ども

メタリックボディのイケメンなカミキリムシ。名称不明


ニホンアカガエル

夕暮れ時の下山の際にかわいい鳴き声を聞かせてくれました。

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