今回のテーマは採取!
鍼道五経会と金匱植物同好会の合同企画の薬草見学会も今回で3回目。
今回は今までの観察会とは趣向を変えて「採取」がメインでした。
採取ターゲットは「山茱萸(サンシュユ)」
写真:山茱萸の赤い実
山茱萸は収渋薬に分類され、肝腎を補益します。山茱萸が使用される代表的な方剤は地黄丸系…ですが、詳しくはコチラの過去記事『山茱萸のお勉強』へどうぞ。
さて、山茱萸がターゲット!とはいえ、それだけじゃないのが生薬探偵プロデュースの金匱植物同好会。いきなりメインから始まるのは無粋とばかりに、まずは前菜からスタートです。
最初のターゲットは何首烏
何首烏(かしゅう)とは、ツルドクダミの根っこの部分を生薬にしたもの。
何首烏の薬効は、肝腎を補い、精血を益し、烏髪(黒髪)を生発させる…と『中医臨床のための中薬学』(医歯薬出版社)にはありますね。
午後のメイン山茱萸と薬効が似ているのも、生薬探偵 濱口先生の計らいでしょうか?
何首烏の効能は他にも通便作用もあり、補瀉どちらにも働くようです。補にはたらかせるには修治がポイントとなるようで、真柳先生の説明では「何首烏は通便作用があるが、黒大豆の煎液で似ると通便作用が消えて強壮作用が生じる」(『漢方修治の妙』より)とあります。
写真:ツルドクダミ・何首烏の全草
このように根が塊状になっております。
現場ではイノシシの食事場だったらしく、ツルドクダミも根っこごと掘り起こされていました。
ツルドクダミ・何首烏の葉、写真中央の細いハート型の葉
写真:山薬(ヤマイモ)の葉、同じくハート型の葉。
外見上、よく似た葉っぱに山薬(やまのいも)、萆薢(ひかい・オニドコロ)、そして何首烏(ツルドクダミ)があります。(上の写真を参照のこと)
今回の見学会ではその似たもの3兄弟が観察でき、鑑別法も教えてもらえたのが大きな収穫でした。
というのも、何首烏の葉と、山薬(ヤマノイモ)と形状がよく似ているのです。
他にも牛膝(イノコズチ)も観察でき、『“日なた牛膝”と“日陰牛膝”の違い』についてもレクチャーいただきました。
この解説を聞くと都会でよく見るイノコズチも少しランクが上がりましたね(笑)
次なる場所は・・・岩窟!?
次の目的地は神社です。といっても目的は薬草ではなく岩窟修行。
大阪は交野市にある磐船神社にお参りにいきました。この磐船神社は岩窟めぐりで有名で、私も以前からお参りしたかった神社だったのです。
写真:磐船神社の巨石、車や人物と比較するとその巨大さがよくわかる。
写真:上の写真と同じ巨石。お堂を遥かに超える高さ。
ここから左手に進むと岩窟めぐりの入口に至る。
前日の雨模様にもかかわらず、参拝当日は陽の光がさしてきて良いコンディションになってくれたのはありがたかったですね。
岩窟めぐりの最中は撮影禁止。
※岩窟めぐりといっても、洞窟探検ではなく“あくまでもお参り”です。粛々と岩窟内をめぐりお参りさせていただきました。
写真:岩窟めぐりの後に岩窟修行修了証をいただきました。
昼食はスリランカ料理
生薬探偵の計らいはランチ時に昨年漬けた山茱萸酒をふるまっていただきました。
写真:濱口先生手作りのサンシュユ酒。
山茱萸をホワイトリカーに2年漬けた薬酒で上品な香りと甘さでした。
「まるで桂花陳酒みたい」という声もあがってました。
写真:ラッキーガーデンにて山羊と触れ合う
いざ!本命の山茱萸狩りへ!
まずは山茱萸の実によく似たハナミズキの赤い実を観察。実の色も大きさもほぼ同じ。さらに樹高も葉っぱも共通点が非常に多いハナミズキとサンシュユですが、その鑑別方法をレクチャーしていただきました。
写真:ハナミズキの赤い実
写真:サンシュユの実。初見では両者の違いは難しいかも…。素人目で大きく異なるのは花でしょうね。
類似品との見分け方を指導していただいたあとは、いざ!山茱萸スポットへレッツゴー!
生薬探偵がナビゲートしてくれた山茱萸ポイントはナント3か所!
・・・実は、山茱萸を採るのに夢中でほとんど写真を採れていません(苦笑)
数少ない写真から現場の模様を紹介します。
第1ポイントのようすはこんな感じ(下写真)このポイントは山茱萸の樹は多いけど、実の生りは渋かった…。収穫はカラスウリ。
カラスウリの生薬名は王瓜(おうか)※神農本草経では土瓜。
実には心肺を潤す効能があるようです。
比較的、里山でよく見かける植物です。この時期、写真のように赤や黄色に色づいた瓜が藪にぶら下がっているのを目にした人も多いでしょう。
カラスウリのタネは打ち出の小槌の形をしてこのタネを財布に入れておくとお金持ちになれるのだそうです。
せっかくなのでカラスウリの実(タネの周囲)を食べてみましたが…その感想は「苦い!」のひと言です。黄連解毒湯に近い苦さ…でしたね。
ちなみに、カラスウリとキカラスウリは別種で、キカラスウリの生薬名が栝楼(かろ)。実が栝楼実(かろじつ)、根部を栝楼根(かろこん)といいます。
昔は栝楼根を天花粉(ベビーパウダー)として使っていました。現在のベビーパウダーはタルク、生薬名では滑石(かっせき)を使っています。
写真:サンシュユの実を味見
せっかくなので、採りたてのサンシュユを味見…やっぱり酸っぱいですね。しかし、十分に熟した実は酸味がマイルドになっていました。
ということは、収渋という薬能としてみると熟しすぎない方がよいのか…とふと疑問に思うところ。
第2ポイントでの写真は一枚もありません…
なぜなら、大量にサンシュユの実が生っていたからです(^^)
もう全員で夢中になって山茱萸を収穫しておりました。
そして第3ポイントの写真はこんな感じ
サンシュユ採りに満足したのでしょう。ちょっと落ち着いた感じですね(笑)山茱萸を採りながらも、アケビ(木通)を見つける余裕も出てきました。
写真:良いサイズのアケビが5つ。
アケビは子どもの頃、よく木に登って採りましたね~。今回はどっぷりと童心にかえって楽しめました。
写真:みんなでアケビを食す。
アケビを食べるのは初めてという方もいて、良い経験になったのではと満足満足。
みんなが持つビニール袋の中には山茱萸の実がドッサリ。
そしてアケビを食した後は、定番のアケビのタネ飛ばし大会(下写真)
G藤先生は上手に葛の葉にのせていました。来年には芽吹いていることでしょう。
タネ飛ばし大会をもって、今回の植物見学会は終了~と相成りました。
実際にはこの後にみんなで打上げ。楽しく薬草&鍼灸談義をしました。次回のテーマは「食す」になりそうです。
家に帰ってからも遠足です
今回は「家に帰るまでが遠足です」の言葉は不正解。家に帰ってからも山茱萸を楽しみます。
写真:収穫できたサンシュユの実(photo by 金子先生)
写真:楽しいサンシュユ酒作り(photo by 金子先生)
ジンベースのサンシュユ酒のようですね。
写真:こちらのサンシュユ酒はすでに赤い色味が出ていますね(photo by 阿野先生)
写真:サンシュユ酒作り、なにやらデータを取っているよう…実験みたいで楽しそうです。(photo by 田村先生)
写真:サンシュユの枝を使ってヨーグルト作り(photo by 田村先生)
ブルガリアの一部地域では、西洋サンシュユ(Cornus mas)の枝に住む乳酸菌を使ってヨーグルトを作っていたようです。
(詳しくはこちらのサイト『樹木の枝に住む乳酸菌について 日本植物生理学会』)
田村先生の実験結果が楽しみですね。
以上のように、皆さんそれぞれ満足できる収穫と、そして遠足後も楽しんでいただけているようです。
これにて金匱植物同好会とのコラボ企画・鍼灸師の遠足『サンシュユ採り』の報告を終わります。