鍼道五経会の足立です。
この冬は「隠れインフルエンザ」なる言葉を初めて目にしました。
インフルエンザの異常行動について東洋医学的に解釈すると…?をテーマに今回の記事を進めていきます。
目次
インフルエンザの異常行動とタミフル
一時期からインフルエンザに罹患した子どもに異常行動が見られる…としてニュースになりました。
(2005年にタミフルを服用したお子さんが転落死した事故がニュースになったとある)
異常行動の例として、ベランダなどの高い所から飛び降りる。突然走り出す・歩き回るなどの異常徘徊が挙げられます。他にも、うわ言を言う、目の焦点があっていない、意識があるのかわかりにくい…なども看病にあたる保護者を不安にさせる異常行動に当たるかもしれません。
インフルエンザ異常行動が報告された当初、タミフル服用後のお子さんがに起こった事故として、一時期はタミフルの使用を控える動きもありました。
しかし、タミフルを服用していない子どもにも異常行動(二階のベランダから飛び降り、庭を徘徊…など)が見られたというケースも確認され、現在はいわゆる抗インフルエンザ薬を服用しなくても異常行動は起こり得るとして注意喚起されています。
東洋医学ではすでに異常行動を指摘していた!?
さて東洋医学では「インフルエンザで見られる異常行動」をどのように見ているでしょうか?
『素問』陽明脈解篇では、陽明が熱が強いと以下の症状が見られるとされています 。
「病(熱病)が甚だしいと、衣服を脱ぎ捨て走り出す。高いところに登って歌う…」や「うわ言を言う」などの異常行動を起こす可能性を指摘しています。
また、手足・四肢が普段以上の力を発揮するため、想像以上の高いところに登ることもあるともあります。
現代の高い所は致命的!
ただし、東洋医学で指摘していた当時の高い所と比べると、現代日本の高い所は比較にならないほど高度です。マンションや団地になると、まさしく生死に関わるほどです。
『素問』にある異常行動と現代のインフルエンザ異常行動を類似の現象と仮定してみると、タミフルやリレンザを服用しなくても、異常行動は起こるという考えも正しいことだといえます。
厚生労働省の見解では、抗インフルエンザ薬と異常行動の因果関係は不明としているが、抗インフルエンザ薬を服用しなくても異常行動が起こった事例もあるとのこと。(→小児・未成年者がインフルエンザにかかった時は、異常行動にご注意下さい)
熱病の異常行動をもう少し考察…
陽明にこもった熱が心(脳の置き換えるとイメージしやすい)に波及することで、正常な精神活動を一時的に失ってしまう…といった病理がひとつ考えられます。
ここで考えるべきは以下の2点です。
1、なぜ陽明の熱が心(脳)という重要な部位に影響を及ぼすのか?
2、小児によく見られる理由はなぜか?
ひとつの考えとして、陽明は多気多血であるため、陽明に熱がこもることは他の熱(太陽や少陽)に比べて、内部に影響を及ぼしやすい。また陽明の腑は五臓(神)に近く、やはり精神に影響を及ぼす可能性が高いといえるのです。
また、小児・子どもに異常行動が見られやすいという点は、小児科を勉強するとよくわかります。
東洋医学の小児科からみても、また普通に子どもの生活をみていても、陽明・胃の腑に熱がこもりやすい状態にあります。この辺りのことは【生老病死を学ぶ】の『小児はりのキホン』でも度々話すことですね。
インフルエンザの異常行動を予防するには…
このように東洋医学からみると、インフルエンザの異常行動は決してタミフル・リレンザといった抗インフルエンザ薬だけが悪いわけではなく、元々の熱がこもる体質と、その熱を処理しない対処・治療が問題だといえるのでは?と考えています。
となると、インフルエンザの異常行動を防ぐ方法は陽明の熱を減らすことです。とはいえ、現代日本の子どもたちは陽明湿熱がかなり増量している点に注意が必要です。
胃腑の湿熱をとる手段はさまざまな方法があります。次の世代を担う人の体を(ひいては精神を)健全にすることができるのがまさに鍼灸師の仕事だと思います。大それたことを書いているな~とも思いますが、とても大切なことでもあります。
ということで、子どもの健康・治療にに興味がある人は「小児はりのキホン」で一緒に勉強しましょう!