「子どもの腎虚について考える」生老病死を学ぶ・第14回

鍼道五経会の足立です。

先日の28日・第4日曜日は講座「生老病死を学ぶ」の定例開催日でした。

今回は初めて参加される方が2名!
いつもとは違う活気に包まれての講座となりました。

午前の実技は脈診講座

午前の実技は初めての方もいますので、脈診基礎実技を行いました。

来月の伝統鍼灸学会でも発表しますので、その準備も兼ねての脈診講習です。


写真:実際に手をとり脈のとらえ方を説明する

上級者にはマル秘情報を・・・

初参加メンバーを含めた初級者には、脈診の基本をレクチャー。

上級者にはより高度な技ともいえる脈のとり方・出し方を伝えました。

これは繊細な指先の動きと医学の知識が必要ですので、
理解の及ばない人が真似をすると、
患者さんの体調が悪くなったり、
脈の正しい情報が消えてしまったりします。

学術ともに理解しようとする姿勢が必要です。

午後の座学は「子どもの腎虚を考える」がテーマ

伝統医学の小児科も今回で14回目となりました。そろそろフィナーレです。

今回は「子どもの腎虚についての再考」がテーマです。

一般的に子どもって「弱い存在・未完成な存在・守るべき存在」としてのイメージが強いようです。

現代の育児論をみると「怒っちゃダメ・冷やしちゃダメ・栄養不足にさせちゃダメ…」とかなり過保護な印象を受けるのは私だけでしょうか…。
過保護という言葉ももはや死語なのでしょうね。

しかし、実際に子どもの体質はどうなのか?

本当に弱い存在なのか?

このようなテーマを皆さんで考えてもらいました。

「ただ症状を治すだけ」では東洋医学を実践する鍼灸師とは言えません。

この視点でみると、小児はりを実践するには子どもの生理学・病理学・治療学だけでなく
現代の育児に対して自分なりの考えを持たないといけないと思うのですね。

ということで、伝統医学に記されている高名な医家の育児論を3つ紹介しました。

あの名医が提唱する育児論!

一人目の名医はこの方、張従正 先生です。

張従正 先生は金元四大家のひとりとして有名な方です。

その治療スタイルから攻下派(こうげは)として知られています。
考案された方剤で有名なものに防風通聖散があります。

さて、そんな張従正 先生が提唱された育児論は・・・
「過愛小児反害小児説」(子どもを過度に愛しすぎると返って子どもを害してしまうよ説)です。


写真:『儒門事親』巻一 過愛小児反害小児説(人民衛生出版社)より引用させていただきました。

2人目の名医は朱丹渓 先生.

朱丹渓 先生もまた金元四大家のひとり。
その治療スタイルから滋陰派(じいんは)として知られています。
先の張従正が攻めるタイプなら、朱丹渓は守るタイプ…のようなネーミングです。

(とはいえ、張従正も攻下一辺倒ではなく、補法についても随分研究されているようですが)

さて、そんな朱丹渓先生が提唱する育児論は滋幼論(子どもを慈しみなさいの論)。

写真:『格致余論』滋幼論(丹渓医集・人民衛生出版社)より引用させていただきました。

さて、3人目の名医は日本人です。

日本人の高名な名医といえば、曲直瀬道三です。

曲直瀬道三は戦国時代にいきた名医で、
数多くの戦国武将・大名を治療したことでも有名です。

また、彼は李朱医学(李東垣・朱丹渓の医学)を主に修めたと言われています。
その点では前述の張従正・朱丹渓の育児論と近しいスタンスかもしれませんが、
中世日本のドクターからみた育児論を見てみましょう。

その名も「護養之法」(子どもを護り養うの法)です。

写真:『仮齢小児方』(近世医学書集成 名著出版)より引用させていただきました。

さて、張従正、朱丹渓、曲直瀬道三の育児論をざっと見比べてみましたが、

「過度に大事にしすぎるな(過保護にするな)」
「子どもを慈しみなさい」
「子どもを護り養うのだ」

と、三者三様の表現ではありますが、基本的に言っていることは同じです。

このことから「子どもの体質は本来こうなのだ!」ということが見えてきます。

我われ治療する立場にある者は、親御さんとは少し違った視点に立って、
診断と治療と健康アドバイスをする必要があります。

小児はり師となるには、子ども心と母心と、そして冷静な判断を下す分析力が必要です。

子どもの体質がバージョンアップする瞬間!?

そしてメインテーマである「子どもの腎虚を考える」。

「本当に腎虚と呼べる小児科の症状って何があるのだろうか?」

まずはここから考えてもらいました。

お子さんは総じて腎虚を体質的に持っていますが、症状の主原因として腎虚が関わっていることって意外と少ないものです。

それはなぜか?講義ではその理由を解説しました。

また腎虚が大きくかかわる症状に夜尿症があるとの意見があがりました。

夜尿症の治療には先生によって「夜尿症は治療しなくても治る」といった意見があります。

その理由はなぜか?腎虚というキーワードを切り口に、夜尿症歴10年以上の私が解説しました。

結論として、人間には何度か体質が切り替わるステージがあります。
このことを考えると、小児はりってそう簡単なものではないのです。
しかし、それだからこそ面白い!という分野でもあります。

その魅力を少しは伝わったのではないかな…?と手応えの感じる一日でした。

次月・予告!

次回の講座「生老病死を学ぶ」は
11月18日・第3日曜日に開催します!

毎月第4日曜日の開催なのですが、11月は日本伝統鍼灸学会のため日程変更となりました。

時間はいつもと同じ10:30~17:00

会場は足立鍼灸治療院です。アクセスはコチラです。

もちろん新規メンバー大歓迎です。

持ち物は白衣・スリッパ・筆記用具

次回のテーマは「小児のチック症状の病理と治療」の予定です。

 

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