小児はりのキホン・胎毒…第3回【生老病死を学ぶ】

8月27日は「小児はりをキホンから学ぶ」の第3回でした。
【小児はり実技風景 子どもにお灸】

この回のテーマは胎毒(たいどく)。東洋医学の小児はりを実践する上で重要な体質です。前回の変蒸(へんじょう)と合わせて胎毒を考えると、治療方針や治療手段が大きく変わります。

子どもの病気の原因のほとんどは胎毒によるもの

戦国時代の名医、曲直瀬道三が次のような言葉を残しています。

「(子どもの病の原因の)大半は胎毒、小半は傷食、10にひとつ(1割)は外感風寒による。」

【原文】『遐齢小児方』より
夫れ孺子、襁褓の内に有り。内に六欲七情のおこることなく、外に大寒大風におかすことなし。
其の證をかんがうるに、大半胎毒、小半傷食にして、外感風寒の病は十にして一つのみ。
変蒸、痘疹、斑爛、驚悸、風癇、発搐、痰壅、赤瘤、白禿、解顱、重舌、木舌
皆な孕母の不謹胎毒の致す所にあらずや。
『遐齢小児方』名著出版 「近世漢方医学書集成」より引用

『遐齢小児方』では胎毒が多くの病気の原因になるとして、各病症を列記してくれています。


『遐齢小児方』曲直瀬道三 著『近世漢方医学書集成』名著出版より引用させていただきました。

現代の小児はりに来院する病名に翻訳すると…?

これらの病症を今風の病名に意訳すると、発熱、熱性けいれん、乳児性湿疹、突発性発疹、水疱瘡、アトピー性皮膚炎なども、この部類に入れることができるかと考えています。

もっと身近な症状としては「かんのむしがキツイ」「頻繁に発熱する」「なかなか寝付かず、夜泣きがひどい」といった症状にも関連してくるでしょう。

実際に私は、変蒸や胎毒について学んだ結果、小児はりの仕方・使う治療道具・主に選ぶ経穴(治療部位)がガラリと変わりました。

なぜ小児はりの仕方が変わるのか?

変蒸胎毒を理解すると、臨床で使う小児はりが変わります。

病理を理解することになるのですから、当然ですね。例えば、夜泣き・かんのむし・発熱・皮膚症状…といった諸症状は同様の病理で考えることができます。

 
写真は突発性発疹、水疱瘡の治療の写真。他にも手足口病やひきつけ(けいれん)の治療にも小児患者さんは訪れる。

特に発熱にフォーカスを当てて考えてみましょう。

「大半胎毒、小半傷食、十に一が外感風寒」という前提でみていくと、発熱(夜泣き・かんのむしもそれに近い)の原因のほとんどが胎毒が絡んでいる(もしくは毒を排除しようとする変蒸のような動き)とみます。つまりは発熱という言葉の通り、熱(≒毒)を発しようとしている体の動きがお子さんの身体に起こっているのです。

小児はりは、その動きを邪魔してはいけないですよね。発症中は(正気の何如をみて)その動きを助け、速やかに排出排毒を終息させるケアが必要です。

もう少し具体的な表現をすると“鎮める”や“治める”といった動きとは異なる治法になります。

そして、発症していないときの日常のケアは胎毒やその他の内因をどれだけ減らしていくか?がポイントとなります。これはそのまま“次の発症に備えたケア”になります。そのため、私はお子さんの腹部をよく治療に使います。

突発性発疹についても皆で考察。突発性発疹の病理も同じような機序だと考えられる。

胎毒の治療法を漢方から学ぶ

胎毒に対する処方に大黄黄連甘草湯があります。“まくり”という呼び名もあったようです。また、大黄黄連甘草湯に紅花を加える処方もあるようです。

いずれにせよ、胎毒を元として表出する症状を知り、胎毒に対する処方を知ることは、胎毒の本質を理解するヒントになります。

陽明腑の実を下す大黄に、主に上焦熱を清する黄芩、そして諸薬を和し毒を解する作用をもつ甘草が組み合さることで、胎毒はどのような邪なのか?ということが見えてきます。また紅花を加えるということは、加えて瘀血の要素も捨て置けないということも予測できます。これを小児はりに翻訳・応用することは当然可能です。

・・・と、このような勉強を行いました

次回のお知らせ

次の講座【小児はりをキホンから】の予定は、9月24日(日)10:30〜17:00に行います。

新規メンバー大歓迎中です。

子どもの病気を東洋医学で治したい方、小児はりを基本から学びたい方はぜひ一緒に勉強しましょう。

初参加の方は6,000円⇨4,000円に聴講生割引があります。

申込みはコチラのメールフォームからご連絡ください。※もし申込み後、3日以上経っても返信がない場合は、このブログにコメントを入れてください。

番外編 恒例の打ち上げ

今回は難波周辺で打ち上げ。盛り上がりどころは山手線ゲームでした。私は恥ずかしながら山手線ゲームは初めてだったのですが、お題を経穴名・生薬名・漢方薬名・歴代医家とすると大いに盛り上がりましたよ。

写真は山手線ゲームではありませんが…。

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