台風・低気圧の影響を考える

鍼道五経会の足立です。
近年、台風の被害が深刻なものとなってきました。
(台風の甚大な被害に遭われた方々にお見舞い申し上げます。一日も早い復旧を祈っております)

低気圧の接近と気象病・天気痛

さて、台風や低気圧の接近によって振り回されるのが患者さんの症状です。

『気圧が低くなると体調が乱れるんです…』

臨床現場ではそんな患者さんの訴えを耳にすることは多いですね。

近年では気象病や天気痛といった用語も使われるようになり、いわゆる西洋医学でも治療対象となりつつあります。

この概念は東洋医学ではなじみのある考え方で、人体に影響を及ぼす外的要因を外邪や六淫と呼んでいました。
具体的には「風邪、寒邪、湿邪、暑邪、燥邪、火邪」の6種の外的要因によって、健康を損なう(=病気になる)という考え方があります。

低気圧や台風の接近によって、人体に対する影響力が増大するのは六淫のうちでは湿邪が代表的だといえます。

『体が重いだるい』
『気分も重い』
『節々が重く痛い』
『めまいがする』
『頭も重いし痛い…』

湿気・湿度の上昇と共に以上のような症状の悪化・体調不良がよくみられます。これらは言うまでもなく湿邪・外湿の影響によるものです。
しかし人体に悪影響を及ぼす要因が、湿邪の増大のみか?というとそうでもありません。

低気圧の仕組みを考えると分かりやすいかと思います。

台風の接近とともに変動する2つの要因


低気圧の接近とともに変動するのは、湿度と気圧です。

熱帯低気圧(台風)が接近する際の天気図(等圧線の図)が思い浮かべやすいでしょう。
熱帯低気圧はその中心部に上昇気流が存在します。

また温帯低気圧においては、前線面において上昇気流を生じます。
この上昇気流が空気と湿気を押し上げて雲をつくるのです。

簡単にまとめると、低気圧の接近によって“気圧は下がり”、“湿度は上がる”のです。
参考になるサイト(前線と天気

東洋医学風にいうと、天と地の間で気は昇り、湿が満ちてくる…といった表現になりましょうか。
(他にも風が吹き、生まれる雲によっては雷も生じることもあります。)

つまり低気圧・上昇気流により、気が上りやすくなるのです。

気が上ると、体質的に不安定な人は結果的に上実下虚の状態になります。そして現れる症状の変化は次のとおり。

『頭が痛い』
『めまいがする』
『気分が悪い』
『倦怠感(≒体が重い)』

…と、このように外湿の増大と同様の症状が現れてきます。

私たち臨床家は、低気圧の接近時には“気圧”と“湿度”の2つの可能性を考慮に入れないといけません。

当たり前のようにみえるかもしれませんが、往々にして「湿邪の影響」か「気圧の変動」のどちらかに思考(弁証・診断)が偏りやすいものです。
思い当たる方は今一度 注意するとよいでしょう。

そして「氣か?水か?」主たる病因・病邪が分かれば、あとは病理ストーリーをもとに調えるのみ!というのは言うまでもありませんね。

偏重しやすい理由として・・・

思考が偏ってしまう理由として、まず患者さん層の偏りがあるかと思います。

臨床治療を続けていると、得意とする症状、領域が自然と決まってきます。そうなると、自然と似たような症状=体質をもつ患者さんが集まってきます。
その結果、診断傾向が単調化してしまうケース。

つまり湿痰体質の患者さんばかり治療していると、湿度の影響には敏感にはなるが、気圧の影響を考慮しなくなる。斯く言う私がこのケースです。
その反対も然りです。

もう一つの理由は、治療家の質・タイプにあります。
気タイプの鍼灸師、水タイプの鍼灸師によって診断の傾向が左右されるかもしれませんね。
(詳しくはこちらの記事『あなたは衛気タイプ?営気タイプ?それとも…』

私はどちらかというと水に対する治療イメージを組み立てることが多く、また患者さん層も湿痰がらみの方々が多いので、
“気圧の変動”には注意して観察する必要があるとみています。

以上、台風前後の臨床治療を振り返っての徒然なるままに書いた記事でした。台風シーズンも終わる頃のアップで申し訳ありませんが、来シーズンにお役に立てれば幸いです。

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