氣血交会不足図説『博愛心鑑』上巻 その⑥

本章「氣血交会不足図説」もまた前章と同じくシンプルな内容です。これまでの章の難解さはなんだったのか…?と思うくらいです。とはいえ気を抜かずに読んでいきましょう。


※『痘疹博愛心鑑』京都大学付属図書館より引用させていただきました。
※以下に書き下し文、次いで足立のコメントと原文を紹介。
※現代文に訳さないのは経文の本意を損なう可能性があるためです。口語訳は各自の世界観でお願いします。

書き下し文・氣血交会不足図説

氣血交会不足図説

陽始めて陰に会し、氣至り血附き、根窠は既に立ちて、而して中陥する者は元氣不足すれば則ち其の後来を続くこと能わざるに因り而して然るが為(ため)也。蓋し陰血には 氣に附くの功が有ると雖も、而して陽氣に制毒の力を無からしむれば、以て陥を致して満たず、生生の道を絶するなり。
且つ陥に五あり。
一に曰く黒陥。二に曰く血陥。三に曰く紫陥。四に曰く白陥。五に曰く灰陥。
黒陥とは、初出・少稀・後出に密を加ることを為す。陽が陰に会しての次。陽氣弱にして続くこと能わず。其の初出の血に氣の養い無し。故に枯萎して黒陥也。
血陥とは、血が氣より盛ん、氣弱して其の毒を拘領すること能わず。久しければ則ち変じて紫陥と為る也。
紫陥とは、氣愈(いよいよ)虚することを為して、血に氣無く、毒を蓄することの盛んにして負載して前せず。血も亦た之が為に離去する也。
白陥とは、氣不足するが為に其の血も亦た弱し。久しければ則ち変じて灰陥と為る也。
灰陥とは、氣血衰敗して栄せざる也。
此れ等の陥、一つに皆な氣の虧損の然らしむる。奇華を折るが如く少頃にして生氣既に絶すれば則ち憔悴して栄せず。噫、毒の縦(ほしいまま)にして、有生の正氣を狼戾肆虐(ろうれいしぎゃく)す。薬の霊慧神功に非ずんば、孰(だれ)が能く裨補せん。乾坤の大なる奈何。灰紫の二陥は、俱に自ら吉より凶に向かい、伝変して来たる、則ち治を施すに難し。於乎(ああ)毒設(もし)陥穽(かんせい)し、氣は危機を蹈(ふみすすめ)ば、又、造化人力の奪うべきに非ざる也。

元氣不足に起因する氣血交会不足、そして五陥

元氣不足に起因する氣血の交会不足により、痘毒を制御することができずに病毒は内攻し、結果として逆証に至る。痘疹(天然痘)にも様々な痘瘡の発現タイプがあります。その中でも逆証として指定されているのが「頂陥」「倒陥」なのです。
…と、このような概論的な病理が前章「氣血交会不足図」のあらましでした。

これをさらに各論的にみると、倒陥にもいくつかのタイプがあります。これを五つに分類したのが本文にある「黒陥」「血陥」「紫陥」「白陥」「灰陥」です。それぞれの詳しい特徴は本文にある通りです。

本章もいたってこれまでの章と打って変わって簡素な内容です。

氣血交会不足図 ≪ 氣血交会不足図説 ≫ 保元済会図

鍼道五経会 足立繁久

原文 『博愛心鑑』氣血交會不足圖説

■原文 『博愛心鑑』 氣血交會不足圖説

陽始會陰、氣至血附、根窠既立、而中陷者爲因元氣不足則不能續其後來而然也。葢陰血雖有附氣之功、而陽氣使無制毒之力、以致陷而不滿、生生之道絶矣。
且陷有五。
一曰黑陷。二曰血陷。三曰紫陷。四曰白陷。五曰灰陷。
黑陷者、爲初出少稀後出加密。陽會陰之次。陽氣弱不能續。其初出血無氣養。故枯萎而黑陷也。
血陷者、血盛於氣、氣弱不能拘領其毒。久則變而爲紫陷也。
紫陷者、爲氣愈虚、血無氣蓄毒之盛負載不前。血亦爲之離去也。
白陷者、爲氣不足、其血亦弱。久則變而爲灰陷也。
灰陷者、氣血衰敗而不榮也。
此等之陷、一皆氣之虧損使然。如折奇蕐、少頃生氣既絶、則憔悴不榮矣。噫、毒縱狼戾肆虐有生之正氣、非藥之靈慧神功、孰能裨補。乾坤之大奈何。灰紫二陷、俱從自吉向凶、傳變而來、則難於施治矣。於乎毒設陷穽、氣蹈危機、而又非造化人力之可奪也。

 

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