栄衛相生図序『博愛心鑑』上巻 その⑨

痘疹医学において栄衛は人体の発生の造化に関わるものであり、また氣は痘毒を制する存在であります。それ故に繰り返し栄衛の関係を説いているのでしょう。前回の章で詳解された保元湯はこの栄衛を補するものです。それを踏まえて本章を読み進めていきましょう。


※『痘疹博愛心鑑』京都大学付属図書館より引用させていただきました。
※以下に書き下し文、次いで足立のコメントと原文を紹介。
※現代文に訳さないのは経文の本意を損なう可能性があるためです。口語訳は各自の世界観でお願いします。

書き下し文・栄衛相生の図の序

栄衛相生図の序

栄衛は氣血の徳也。氣血は痘毒の廬(ろ・いえ・いおり)也。痘毒は氣血の賊也。
栄衛の徳盛んなれば則ち廬舎は全し。栄衛の徳衰えれば則ち廬舎は剝す。

蓋し人身栄衛虧盈の理、氣血の盛衰に繋がる攸(ところ)は、則ち痘に満陥り。即ち盈虧感応の使然(しからしむる)也。豈に形躯の肥瘠、毒出の多寡の比する可きに在らんや。然れども痘に稀密の不均有るも、亦た氣血の週(めぐら)ざるに於いて出るのみ。又、形躯の宜と出るに宜しからざるの地に非ざるか。彼の其の氣血充溢すれば、則ち栄衛自然に長養して以て其の政を施す。痘毒は賊と為す、詎(なんぞ)敢えて其の廬を剝ぎ而して釁(きず・あやまち・とが)を為さんや。
苟しくも其の氣血が壊衰せば、固に滋養を加えざることを得ず。以て栄衛の情に順せば、栄衛は益を受けて内外を堅固にす。力は其の賊を戩(せん・ほろびる・つくす)して、而して余り有り。

下の図式を観るに、済会中より来たるに非ずんば、詎(なんぞ)得るべけんや。
夫れ人身の元氣は太極の理を得て、而して命するに栄衛の行運、造化の功を以てする也。
保元湯も亦た太極の理を得、而して命するに氣味を以て栄衛不足を補益し、以て造化の功を成す也。
是れ皆な天地の生人を成就するの大道、中に存して理に見ること、亭毒の間に昭然たり。以て人の知識を待つ、深契玄黙するに非ずんば、又焉(いずくんぞ)得て而して其の機を彀(こうお)せんや。尚(なお)冀(こいねがわくば)医を善くする者は宝とせば、斯に道を得ると為す。

本章「栄衛相生図」までくると、さほど難しい内容ではなくなります。太極から両儀・陰陽が生じ、陰陽は人体においては氣血・栄衛となり、栄衛は衛氣・栄血とも言い換えることができる。

とくに本書では「血載毒」と表現されるように、痘毒は栄血に伏するように存在します。そして血を制御するのが氣であり、両者の交流・交会が痘疹病理および治癒において非常に重要な要素なります。
とはいえ、詳しくはこれまでの章で詳解されていますので、本章で再び論ずるまでもないでしょう。


※『痘疹博愛心鑑』京都大学付属図書館より引用させていただきました。

※以下に書き下し文、次いで足立のコメントと原文を紹介。
※現代文に訳さないのは経文の本意を損なう可能性があるためです。口語訳は各自の世界観でお願いします。

栄衛相生の図

医は栄衛の相生を明にし / 道は君臣の済会を闡(ひらく)

斯の図や、氣出でれば則ち栄血は脉中を行き、血入れば則ち衛氣は脉外を行く。氣順に血随い、百脉を運行すること、環の端の無きが如し。
此れ保元済会成功の妙也。

栄衛相生図

本項目は栄衛相生図の解説です。「これ保元済会、成功の妙なり」とあり、註文も至ってシンプルであります。シンプルであるからこそ妙といえるのでしょうか。栄衛相生図解に移りましょう。

保元済会図説 ≪ 栄衛相生図序 ≫ 栄衛相生図解

鍼道五経会 足立繁久

原文 『博愛心鑑』榮衛相生圖序

■原文 『博愛心鑑』 榮衛相生圖序

榮衛者氣血之徳也。氣血者痘毒之廬也。痘毒者氣血之賊也。榮衛徳盛、則廬舎全。榮衛徳衰、則廬舎剝。葢人身榮衛虧盈之理、攸繫氣血之盛衰、則痘有滿陷。即盈虧感應之使然也。豈在形軀肥瘠毒出多寡可比哉。然痘有稀密不均、亦出於氣血不週耳。又非形軀宐與不宐出之地歟。彼其氣血充溢、則榮衛自然長養以施其政。痘毒爲賊、詎敢剝其廬而爲釁耶。苟其氣血壊衰、固不得不加滋養以順榮衛之情。榮衛受益堅固内外。力戩其賊而有餘矣。觀下圖式、非濟會中來、詎可得也。夫人身元氣得太極之理、而命以榮衛行運造化之功也。保元湯亦得太極之理、而命以氣味補益榮衛不足、以成造化之功也。是皆天地成就生人之大道存乎中見于理昭然于亭毒之間。以待人之知識、非㴱契玄默。又焉得而彀其機矣。尚冀善毉者寶焉、斯爲得道。
榮衛相生圖

毉明榮衛之相生 / 道闡君臣之濟會

斯圖也、氣出則榮血行於脉中、血入則衛氣行于脉外。氣順血隨、運行百脉、如環無端。此保元濟會成功之妙也。

 

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