『脈経』の弁尺寸陰陽栄衛度数を紹介

これまでのあらすじ

第一章は脈象24種、第二章は平旦から天地と人を繋ぐ脈、第三章は陰陽に区分することで脈を三界する内容でした。
今回の弁尺寸陰陽栄衛度数 第四は生理学に関するとても重要なお話です。


※『脉経』京都大学付属図書館より画像引用させていただきました
※下記の黄色枠部分が『奇経八脈攷』の書き下し文、記事末青枠内に原文を引用しています。

書き下し文・尺寸 陰陽栄衛の度数を弁ず 第四

夫れ十二経に皆な動脈有り。独り寸口を取り以て五藏六腑、死生吉凶の候を決する者は、何の謂いぞ也。
然り、寸口は脈の大会、手太陰の動脈也。
人、一呼に脈行三寸、一吸に脈行三寸。呼吸定息、脈行六寸。
人、一日一夜に凡そ一万三千五百息、脈行五十度、身に於いて周する。漏水の下ること百刻。
栄衛の陽を行ること二十五度、陰を行ること二十五度、一周天の時と為す也。
故に五十度にして復た手太陰に於いて会す。
太陰は寸口也。即ち五臓六腑の終始する所。故に法を寸口に取る。

脈に尺寸有るは何の謂いぞ也?
然り、尺寸は脈の大会要なり。
関より尺に至る、これ尺内、陰の治むる所なり。
関より魚際に至る、これ寸口の内、陽の治むる所なり。
故に寸を分かちて尺と為し、尺を分かちて寸と為す。
故に陰は尺内一寸を得て、陽は尺内九分を得る。尺寸終始一寸九分、故に尺寸と曰う也。

脈に太過あり不及あり、陰陽相承あり、覆あり、溢あり、関あり、格あり、何の謂いぞ也。
然り、関の前は陽の動也。脈は当に九分に見(あらわ)れて而して浮なるべし。
過ぎる者は法に太過と曰い、減ずる者は法に不及と曰う。
遂に魚際を上るを溢と為し、外関内格と為す。此れ陰乗の脈也。

関の後は、陰の動也。脈は当に一寸に見われ而して沈なるべし。
過ぎる者は法に太過と曰い、減ずる者は法に不及と曰う。
遂に尺に入るを覆と為し、内関外格と為す。此れ陽これに乗ずるなり。
故に覆溢と曰う、これ真藏の脈也。人、病まずして自ずから死する。

『難経』一難・二難・三難の脈診観

記載内容をみると『難経』の一難二難三難の文章がそのまま採用されています。

本章の前段は「弁尺寸陰陽栄衛度数」という名の通り脈と「栄衛」との関係を述べています。栄気と衛気の流行について簡素にまとめられています。簡素ではありますが、息数と脈度と氣行との関係についての法則が記されています。鍼灸師ならば読まずんばあるべからず…です。詳しくは一難の記事を皮切りに、平人気象論や五十営篇、営衛生会篇を読んでいくと腑に落ちるかと思います。

本章中段の内容は前章と共通しており脈を尺寸・陰陽に分類する話です。詳しくは前章「分別三関境界脈候所主」および二難の記事を参考にしてください。
二難の記事で紹介した「関上は陰陽氣交の位」という岡本氏の言葉は、前章の「関上を以て界を為す(以関為界)」という言葉に通ずるものがあります。

後段の内容も難経の三難を参考にしていただければと思います。但し真藏脈について一点補足があります。

関格・真藏脈について考え直す

『難経』三難の文には真藏脈という言葉が登場しています。しかしこれは『素問』玉機真蔵論にある無胃氣を示す真藏脈とは定義が異なるのではないか?と三難の記事にて書きました。

しかし、関格(外関内格および内関外格)を見直すと、この状態は関上が陰陽(尺寸)の制御・調停を行うことが不可能な状態に陥っているといえます。となると、関格の脈も無胃氣としての要素を持っているかもしれない。真藏脈と称しても問題ないのかもしれない…と、改めて考え直している現代であります。

鍼道五経会 足立繁久

分別三関境界脉候所主 第三 ≪ 弁尺寸陰陽栄衛度数 第四 ≫ 平脉視人大小長短男女逆順法 第五

■原文・辨尺寸陰陽栄衛度数 第四

夫十二経皆有動脉。獨取寸口以決五藏六腑、死生吉凶之候者、何謂也。
然、寸口者、脉之大會、手太陰之動脉也。
人一呼脉行三寸、一吸脉行三寸。呼吸定息、脉行六寸。
人一日一夜、凡一萬三千五百息、脉行五十度、周於身。漏水下百刻、
栄衛行陽二十五度、行陰二十五度、為一周天時也。
故五十度而復會於手太陰。太陰者寸口也。即五臓六腑之所終始。故取法於寸口。

脉有尺寸何謂也。
然、尺寸者脉之大會要也。
従関至尺、是尺内陰之所治也。
従関至魚際、是寸口内陽之所治也。
故分寸為尺、分尺為寸。
故陰得尺内一寸、陽得尺内九分。
尺寸終始一寸九分、故曰尺寸也。

脉有太過有不及、有陰陽相承、有覆、有溢、有関、有格、何謂也。
然、関之前者陽之動也。脉當見九分而浮。過者法曰太過、減者法曰不及。
遂上魚為溢、為外関内格。此陰乗之脉也。
関之後者、陰之動也。脉當見一寸而沈。過者法曰太過、減者法曰不及。
遂入尺為覆、為内関外格。此陽乗之。
故曰覆溢、是眞藏之脉也。人不病自死。

 

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