脈診を通してみる臓腑観
本章「左右手配臓腑部位」はその名の通り“左右の脈における寸関尺の臓腑配当”といった内容になります。当会でいう「脈の五要素」の中の脈位にあたります。
脈診における臓腑配当は、鍼灸師だけでなく漢方医もよく使う脈診法ではないでしょうか。
写真:鍼灸脈診と漢方脈診の臓腑配当比較
また、臓腑の部位配当としながらも、脈が出る所(脉所出)という表現がされている点も興味深いですね。
まずは本文を読んでみましょう。以下に訳文というか書き下し文を付記します。
左右手配臓腑部位(訳文系書き下し文)
左右の手に臓腑の部位が配されるの事左手の寸口は、心と小腸の脈が出る所。
左手の関上は、肝と膽の脈の出づる所。
左手の尺中は、腎と膀胱の脈が出る所。(命門と腎の脈は通ず)右手の寸口は、肺と大腸の脈が出る所。
右手の関上は、脾と胃の脈が出づる所。
右手の尺中は、命門と三焦の脈が出る所。(命門は心包絡手心主)
本章における「左右の寸口、関上の臓腑配当」はよく知られている脈診配当だといえるでしょう。
尺中の配当に、左に腎・膀胱、右に命門と三焦とされているのも珍しいものではないですが、賛否両論はあるかと思います。
また補註に「命門と腎の脈は相通ずる」は、難経三十九難を受けてことでしょうか。
三十九難には「…左為腎、右為命門。命門者謂精神之所舎也。男子以藏精、女子以繋胞。其氣與腎通。…」とあります。
両書(『難経』と『診家枢要』)の違いとして“脈”と“気”との違いはありますが大意は変わらないと思われます。
もう一つの補註に「命門は心包絡心主」とあります。これに違和感を感じる人もいるかもしれません。
しかし、廣岡蘇仙先生(『難経鉄鑑』の著者)の言葉を借りれば「位が異なるだけで実体は同じ」ともいえます。私の生命観はこの考えに順じています。
ともあれ、右尺脈に命門三焦を配当することは、李東垣の医学観(陰火説)にも共通する要素とも言えるのではないでしょうか?元代の医家、滑伯仁が脈を通じてどのような臓腑観を持っていたのか?がうかがい知れる章ともいえるでしょう。『内外傷辨惑論』巻中 飲食勞倦論を中心に勉強する必要がありそうです。
カルシファーはお城にとっての相火?
カルシファーは作中に登場する火の精霊?火の悪魔?
彼の力(火力)でハウルのお城が動いている描写がありましたが、この視点でみるとカルシファーはお城にとっての相火にあたるわけですね。
『では君火は誰に相当するのか?』なんて考えるのも面白そうですね。
鍼道五経会 足立繁久
以下に原文白文を付記します。
【原文】左右手配藏府部位
左手寸口、心小腸脉所出。
左関、肝膽脉所出。
左尺、腎膀胱脉所出。(命門與腎脉通)
右手寸口、肺大腸脉所出。
右関、脾胃脉所出。
右尺、命門(心包絡手心主)、三焦脉所出。