結脈とは『診家枢要』より

対となるこれまでの脈状 22種

“脈がとぶ”シリーズ、促脈に続いて結脈の項です。結脈は促脈と対になる脈です。
長脈と短脈の項で書きましたが、脈の陰陽類成を振り返るとここまでの全ての脈状がそれぞれ対となる流れです。脈の陰陽類成と題しているので当然の流れなのでしょうが。
浮沈・遅数・虚実・洪微・弦緩・滑濇・長短・大小・緊弱・動伏と、それぞれ対となる基準や病理は異なりますが、滑伯仁の意図が大いに感じられる流れです。

さて結脈です。

脈の陰陽類成 結

結脈とは、陰脈の極み也。
脈の来たること緩、時に一止して復た来たる者を結と曰う。

陰独り盛んにして陽を相い入れること能わざる也。
癥結と為し、七情の鬱する所と為す。

浮結は寒邪滞経と為し、沈結は積氣在内を為す。
又は氣と為し、血と為し、飲と為し、食と為し、痰と為す。

蓋し先ず気寒して脈緩なるを以って、而して五の者、或いは一つでもその間に於いて留滞すること有れときは則ち因りて結と為す。
故に張長沙(長沙の張仲景)が謂う、結脈促脈は皆病脈である、と。

※有;据慎徳堂本補

促脈の対となる結脈の本質を考える

促脈の対となるので、当然「陰脈の極み」の位置づけです。ベースが緩脈で時に一止します。
促脈のベースが数脈ですので、対となる結脈のベースは緩脈なのです。
『なんで数脈の対は緩脈なの?遅脈じゃないの?』と思う方は緩脈の項をもう一度ご覧ください。

そして結脈における“一止”という言葉の意味も促脈とはまた異なります。
結脈が示す証「陰が盛んで陽を受け入れず」から考察すると分かりやすいでしょう。

ベースに陰盛があるため、促脈に比べて症状は慢性的で緩徐であるものが多い印象を受けます。
結脈の証や病症を説明するものに「寒邪滞経」や「積気在内」という言葉、“結”や“欝”といった文字も使われています。
このような欝して結ぼれるという病態(留滞)と脈の一止との関係は『切脈一葦』で紹介した病毒痞塞(『切脈一葦』下巻「邪正一源」その2に詳しい)が参考になります。

ジブリ絵から結脈をイメージしよう!

『崖の上のポニョ』より


※スタジオジブリの作品静止画より使用させていただきました。

海のゴミや網がポニョや魚の自由な往来を阻害する。前記事『促脈説』(宇津木昆台 著)の言葉を借りると「往来の遅渋」に関わるのが陰邪すなわち有形実の障害です。陰邪が主となる病態であるため、脈の性状やそれが表わす病態も全く異なります。
一止にみえて全く異なる!と歴代の医家たちが主張したかったこともこの点にもあるのではないでしょうか。

鍼道五経会 足立繁久

以下に原文を付記しておきます。

■原文 脉陰陽類成 結

結、陰脉之極也。脉来緩、時一止復来者、曰結。
陰獨盛而陽不能相入也。
為癥結、為七情所鬱。
浮結為寒邪滞経、沈結為積氣在内。
又為氣、為血、為飲、為食、為痰。
蓋先以氣寒脉緩、而五者或有(※)一留滞于其間、則因而為結。
故張長沙謂結促皆病脉。

※有;据慎徳堂本補

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