鍼灸師の仕事は治療だけに非ず

「鍼灸師のお仕事って、治療だけじゃないんですよ」
先日、そんな話を学生さんにしました。

「えっ?鍼灸師の仕事は治療では?」と、素直なリアクション(ありがとう)。

もちろんその問いは正しいのですが、治療は鍼灸師にとって仕事のホンの一部です。(もちろん、経営とか事務仕事とかそういうこと別にしての話です。)

アスリートやプロ選手に譬えてみましょう。

サッカー、野球、テニス、ゴルフ、格闘技…などなどプロ競技がありますが、多くの選手の活躍をみていると、試合や大舞台が本番にみえます。しかし彼らの仕事はそれが全てではありません。
試合や勝負が始まるまでの日々の訓練こそが、プロ選手たちにとっての仕事だと思うのです。

鍼灸師にとっては、治療を行う臨床現場が試合に相当するでしょう。
では日々の訓練にあたるのは何か?

『現場が訓練じゃないの?』などのご意見もあるかもしれませんが、まさか何も準備無しのぶっつけ本番で治療はできません。

私が思いますに、常に訓練すべきは「医学観・治病観・病理観を構築し、それを常に刷新し続けること」です。

もちろん技術の向上もこの中に含みます。
ですが磨くべき技術とは「診察・診断・治療の一貫した流れに則した技術」です。このプロセスの基盤となるのが医学観・治病観・病理観なのです。

私は伝統鍼灸、いわゆる東洋医学をベースにした鍼灸を行いますので、日々 東医文献の記事更新を行うことで、自分の医学観を更新しているのです。
ただ古典を丸写ししているように見えるかもしれませんが、古典文献と現実の世界を往ったり来たりする作業には発見が多く、実益と道楽を兼ねた訓練法だと思います。

鍼道五経会 足立繁久

 

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